〜ECサイトのパーソナライズ化とサービスレベルの向上で   One-to-Oneマーケティングを実現!〜【特集】One-to-Oneマーケティングツール(2/5 ページ)

» 2000年12月19日 12時00分 公開
[吉田育代,@IT]

2. パーソナライゼーション最新事情〜ビジネスルール手法

 前章で、パーソナライゼーションの手法には大きく3つあると書いた。ここでは特に、「ビジネスルールベース」と「協調フィルタリング」の2つについて、最新事情をレポートしていこう。

■パーソナライゼーション市場を開拓したBroadVisionパーソナライゼーション市場を開拓したBroadVision

 ビジネスルールベースによるパーソナライゼーションを行う製品に、米BroadVision社のBroadVision

One-To-One Enterpriseがある。顧客の行動履歴を収集し、あらかじめ設定したルールにあてはめて、マッチしたコンテンツをリアルタイムに提供する。同社はこの分野のフロンティアで、そもそもOne-To-Oneマーケティングの実践に最も貢献したのも同社。フロンティアだけあって知名度も高く、米国ではすでにトップシェアを誇るという。小売業向けのRetail

Commerce、BtoB向けBusiness Commerce、金融業向けFinancial、ナレッジマネジメントや企業内外ポータル向けInfoExchangeの各種ECサイトアプリケーションがそろっており、また現場のマネージャがテクニカルな知識なしにルールの作成・変更を行えるツールであるCommand

Center、短期間にサイトの構築を行うためのツールDesign Centerなど、サイトの開発・運営を支援する製品群も用意されている。

顧客のプロファイルや行動特性を収集し、サイト運営者によりあらかじめ設定されたルールに照らし合わせて、パーソナライズされた情報を表示するのがルールベース手法の特徴だ

 日本では5年前から伊藤忠テクノサイエンスが代理店を務めている。代表的な導入事例に、リクルートのキーマンズネットがある。伊藤忠テクノサイエンス株式会社 CRM営業推進部 CRM推進グループ グループリーダー 岩田泰典氏は、BroadVision One-To-One Enterpriseを「企業が経済活動を行なう上で、マーケティングやセールスにおける仮想検証を日々行っていくことは重要。そういったことをWeb上で実践しようと考えている企業にとって最適なツール」と語る。

伊藤忠テクノサイエンス CRM営業推進部 営業第4グループ グループリーダー 稲益清之氏(左)、同CRM営業推進部 CRM推進グループ グループリーダー 岩田泰典氏(右)

 日本ではBtoC向けのECサイトがまだそれほど多く立ち上がっていないことから、同社はターゲットをBtoB市場にフォーカスしようとしていた。日本全国にチャネルや販売代理店を擁する企業では、そうしたビジネスパートナーに向けた個別マーケティングを展開したいと考えるところが多く、導入意欲も高いらしい。販売を始めた5年前には、営業をかけてもOne-To-Oneマーケティングという言葉自体がなかなか理解されなかったというが、ここ1年は動きが活発になってきた。今年の10月には米BroadVision社の日本法人も正式に発足し、日本での展開も第2段階に入りそうだ(日本ブロードビジョン社長へのインタビュー記事を参照する)。

■急速にシェアを伸ばすATGのDynamo急速にシェアを伸ばすATGのDynamo

理経 企画開発本部 ECソリューション販売推進室 室長 西沢敏彦氏

 もう1つ、BroadVision One-To-One Enterpriseと同じカテゴリに入る製品を挙げよう。米Art Technology Group社(以下、ATG)のDynamoがそれだ。この製品の特徴は、プログラムのすべてがJavaで書かれていること。J2EEに準拠しており、ほかにもXMLパーサを搭載するなど、先進のテクノロジが駆使された技術志向の製品になっている。販売代理店である理経 企画開発本部 西沢敏彦氏は、「同社は現在Dynamoで急成長しており、米国では1年前には24億円だった売り上げが今年は155億円以上に、180名だった従業員が700名に増えている。オブジェクト指向が進んでおり、ページデザイン、コンポーネントの作成・管理、DB設計が独立して行えるため、GM、チャールズ・シュワブなど、大規模なECサイトで採用されている」と語る。

 一般に、こうしたOne-To-OneマーケティングツールはWebアプリケーションの形をとるが、Dynamoは詳細な行動履歴分析のため、Webサーバのレイヤからトータルで提供する。日本ではこの10月から出荷された新製品Dynamo

5のプラットフォームは全部で4つ。WebサーバであるApplication Server、ビジネスルールベースによるパーソナライゼーションを行うPersonalization

Server、イベントベースによるパーソナライゼーションを行うScenario Server、ECサイト構築を支援するCommerce Server。

Dynamo5の新機能「Scenario Server」。チャート表示された分かりやすいインターフェイスで、簡単にシナリオを組み立てることが可能だ(上の画面をクリックすると拡大表示します)

 この中で特徴的なのはDynamo5から加わったというScenario Serverだ。これは“イベントベース”でのパーソナライゼーションを行う機能を持つ。ルールベースとイベントベースはどこが違うかというと、後者は時間という要素と非常にセグメントされたユーザーの行動に対して対処することができる。例えばScenario

Serverでは、「ユーザーが会員登録後、1カ月間サイトにアクセスしなかったら訪問促進メールを送る」といったシナリオを組んで実行することが可能だ。また、「特定の商品を複数買うと決断したユーザーに、その関連製品を特別価格で提供する」といったこともできる。実際、そのシナリオを組む場面をデモンストレーションで見たが、あらかじめ用意されたひな型に従って、ユーザーが「何を」「どうしたら」「どうするのか」という内容をボックスから選択しながら作成していくというものだ。特別なプログラミングは必要なく、組んだシナリオは本番サイトにすぐに反映可能であるため、現場のマーケティングマネージャーがその日のサイトの売れ行きを見てシナリオを作成するといったことも可能だ。その意味では、食品や日用品などといった衝動買い傾向の強い商品にも適用しやすい。

 日本では、大手証券会社やGE横河メディカルシステムなどがDynamoを利用してサイト運営を行っている。

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