〜第3回 効果的なHTMLメールの使い方〜ユーザーはHTMLメールを受け取れるのか? 最新!e-mailマーケティング事情

 2000年11月に弊社ビッグフットジャパンがHTMLメールを約30万通配信してから多くの企業の担当者から問い合わせを受けるようになりました。その中から幾つかの代表的な質問を取り上げながら、HTMLメールの注意点と効果的な使い方をご紹介したいと思います。

» 2001年02月20日 12時00分 公開
[武田一也,BFJCコンサルティング代表]

<今回の内容>


・ユーザーのメールソフトは?


・ユーザーの接続環境は?


・視覚的に有効なHTMLメールとは?


・HTMLメールコンテンツ作成の注意点


・HTMLメールを送信する際の注意点


・HTMLメールの今後の普及



ユーザーのメールソフトは?

 ビッグフットジャパンが配信しているメールの多くはHTML形式とテキスト形式が混在したファイルです(ハイブリッド形式のファイルと呼んでいます)。企業の担当者が一番気にするのは、「ユーザーがHTMLメールを受け取れる環境にあるのか」ということです。この問題は2つの事柄を含んでいます。

 1つは「ユーザーが使用しているメールソフトはHTML形式のメールを認識できるか」ということ。そしてもう1つは「接続している環境がHTML形式のメールを受け取るのに適しているかどうか」ということだと思います。

 まず、ユーザーが使用しているメールソフトについてですが、2000年11月にビッグフットジャパンが実施したアンケート(表1)によると、約83%のユーザーはHTMLメールを受け取れるという結果が出ています。

 しかしながらPostPetだけが問題になります。このアンケートの中でPostPetは3%を占めています。PostPetは現状のバージョンではHTMLメールのMulti Partを認識せずにテキスト形式でしか表示できません。そのためHTMLのタグが表示されてしまいます。この点についてはソニーさんに早くなんとかしてほしいものですね。

メールソフト アンケート調査
(2000年11月10日〜13日 実施)
回答者数:2万1617人
1
MS Outlook Express
54%
2
MS Outlook
12%
3
Becky
6%
4
Netscape Messanger
6%
5
Eudora Pro
4%
6
Post Pet
3%
 
7
AL Mail
3%
 
8
Hot Mail
1%
9
Nifty Manager
1%
 
10
Other/不明
10%
 
*HTMLメール受信可能
表1 ビッグフットジャパン調査(2000年11月実施)


ユーザーの接続環境は?

 ユーザーの接続環境については、2000年12月の旧郵政省(現総務省)調査によると、CATV網を使っての常時接続は約47万人で、ダイヤルアップ接続は1530万人です。この数値からも個人ユーザーの多くはダイヤルアップ接続でインターネットを利用していることが分かります。

 ダイヤルアップ接続ユーザーの中には「メールをダウンロードし終わったら接続を完了する」という設定にしている人がいらっしゃるようです。弊社が送信しているHTMLメールでは、この設定が問題になることがあります。

 弊社で取り扱うHTMLメールには画像は一切張り付けていません。それは送信するHTMLメールのサイズを最小にするためです。ユーザーがいったん接続を完了してからHTMLメールを開封すると、メールソフトはHTMLソースの中にある画像のリンク先(多くの場合はクライアント企業のWebサーバ)を探しにいくので、ユーザーの意図に関係なく、インターネットへの再接続を要求してきます。

 すなわち、自動的にリダイヤルをしてしまいます。この現象の回避方法についての問い合わせがあることは想定されるので、あらかじめ「お知らせページ」や「ヘルプ」を設けておく必要があります。

視覚的に有効なHTMLメールとは?

 テキスト形式のメールが主流の現在では、HTMLメールであるというだけで視覚的には大変有効です。「見やすい」「簡潔である」「理解しやすい」という点でテキスト形式よりも優れているといえるでしょう。

 そうはいっても、視覚に訴えるためには幾つかのポイントがあります。ノウハウとしては、スーパーのチラシや通信販売のカタログを参考にすればいいかもしれません。あとは、正直いって、いろいろなHTMLメールを見て「見やすい」「簡潔である」「理解しやすい」メールはどんなものかを見比べることが早道でしょうね。

 HTMLメールのデザインがWebページと似ているからといって、Webと同じ内容を単にメールで送信したのでは、ユーザーにはあまり魅力的ではありません。Webページとの一番の違いは「完結させない」ことです。

 すなわち、HTMLメールをクリックさせるためにはメールだけの情報でユーザーを満足させないことが重要です。下記のWSJ.comのパーソナライズされたニュース・メールでは記事の要約しか読めないようになっていて、Webページに置かれた記事の詳細を読むためには、リンク先をクリックしなければならないという仕掛けになっています(実際は有料会員向けのログイン画面があり、会員でない場合は入会を促しています)。

 参考までに私が好きなWSJ.comとAmazon.comからのHTMLメールをご覧ください。

HTMLメールコンテンツ作成の注意点

 HTMLメールが画像付き(正確にはHTMLソースの中に記述されているWebサーバなどに保管されている画像ファイルを参照しているのですが)にできるからといって、やたら画像を張り付けるのも問題です。

 いままでの経験から4〜8個の商品画像をセットするのが、最もユーザーうけするようです。多すぎると画像をダウンロードする時間が気になるし、少なすぎるとせっかくのHTMLメールの表現を生かしきれません。ただし、メールニュースのような配信頻度が高いものや情報提供が主体のものはすっきりと見せた方がいいと思われます(ただし、これは個人的な好みですが)。

 これからは、こういったメールを独自で作成できる「HTMLメール・クリエイター」という職種が出てきてもおかしくないと思います。その担当範囲は「記事原稿作成」「画像入手」「デザイン・レイアウト」などということになるでしょうか。

参考(弊社クライアント事例)
ソフマップが2000年11月30日に配信したメール

HTMLメールを送信する際の注意点

 HTMLメールはテキスト形式のメールよりも視覚的なインパクトが強いので、いきおいクリエイティブなセンスを要求されます。例えば、Webページのイメージとの一貫性や使用するロゴの表記などの統一は最低限チェックしましょう。

 多くの場合、メールの内容だけで完結せずにWebへの誘導が目的になるでしょう。その場合はWebのどのページにリンクを張るのかを十分に検討する必要があります。商品の写真をクリックしただけでいきなり購入画面に進むというのはちょっとやりすぎかもしれません。商品の詳細説明画面や関連商品と対象商品が比較されている画面にリンクを張る方がユーザーにとって親切であることはいうまでもありませんね。

 意外な盲点としては、HTMLソースに記述された画像ファイルの格納場所にも注意を払う必要があります。多くの場合はWebで表示されている画像をそのままHTMLメールでも表示させます。ということは、ECが行われているのと同じWebサーバ上に格納されている画像であるということです。

 実は、HTMLメールは開封された瞬間、一斉にHTMLソースが「画像を取り込みにいけ!」と指示します。そうなると、通常のWebへのアクセスと比較して数十倍以上のトラフィックが発生することになります。よほど大規模なトラフィックを事前に想定していないとサーバの負荷は相当なものになります(画像が下りてこないとか、最悪サーバがダウンする)。

 想像してみてください! 20万通送信したHTMLメールが30分間に1万通くらい開封された場合を。そうなると、メール以外でECサイトを訪問したユーザーもその影響を受ける可能性があります。

このような問題を解決するためには、HTMLメール用の画像ファイルをECサイトとは別のサーバに格納しておくことをお勧めします。目安としては配信数が5万通以上の場合で、画像へのリンク数が10個を超える場合には、別サーバへの画像ファイルの格納を検討した方がいいと思います。

HTMLメールの今後の普及

 米国のBigfoot Interactive社の推計では 2000年の3月時点で企業からのメールでHTML形式による配信は全体の約30%になるだろうということでした。その半年後の9月に私が米国へ行ったときには、その数値は約60%になっていました。

 では、振り返って日本ではどうかというと、ビッグフットジャパンの推計では1999年末時点で5%未満、2000年末時点で8〜10%と推計しています。

 2000年においては、NECの121ware.comのニュース・メールがHTML形式になりました。インテルのニュース・メールもHTML形式を選択できるようになっています。私個人の希望的な観測をこめていうと、2001年のうちにはHTML形式による企業からのメールは全体の30%を超えるところまでいくのではないか、と思っています。

著者プロフィール

武田 一也(たけだ かずや)

明治大学卒業。トステム株式会社にて営業およびマーケティングを担当。1997年8月アメリカ国際経営大学院にてMIM(国際経営学修士)取得。1997年9月よりプライス・ウォーター・ハウス・クーパース・コンサルタント(現PwCcコンサルティング)に入社、CRMチームリーダーとなる。流通業、製造業を担当。2000年10月ビッグフットジャパンにてCEO/代表取締役。2002年2月よりBFJCコンサルティング代表となる


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