“製造業のIT”がうまくいかない理由改革現場発!製造業のためのIT戦略論(1)(3/3 ページ)

» 2004年04月27日 12時00分 公開
[安村亜紀 (ネクステック),@IT]
前のページへ 1|2|3       

ミクロ経営革命を実現するには

 では、ミクロ経営革命を実現するソリューションとは何だろうか? それがPLMなのだ。これも3文字ワードではあるが、マイナスイメージを持たずに聞いていただきたい。

 PLMと銘打ったソリューションの範囲は、CADCAMCAE、図面やCAD情報を管理するためのPDMツール、ERP/SCMなどがカバーする生産や物流から派生したPLM風ソリューション、CRMが管理する顧客情報やSFA(Sales Force Automation)などなど、さまざまなソリューションに及ぶ。果たしてどれが正解なのだろうか? 各社それぞれの立場もあるので、どれが正しくてどれが間違いであるとはいわないでおく。

 ここでは、ネクステック、およびネクステックのユーザーが言うところのPLMとは何を指すのか定義する。また、実際、筆者が関与している多くのPLMプロジェクトや商談では、格好いいツールや画面の議論よリ前に、製品情報を表すデータ(図面や品番、製造に関する製品仕様のデータ)を組織横断型かつグローバルに準備することや、そもそもの仕事の仕方や考え方を再考するべきといった、もっと根本的な大問題が立ちはだかることも留意したきたい。製造業が本当に実現したいのは、戦略的スペックマネジメントであることだ。つまり、正しいPLMとは、組織横断型のスペックマネジメントである。経営視点でいえば、「SSM」(Strategic Spec Management)ともいえるだろう。

製造業がさらされている環境と課題―デフレ経済下による市場の変化

 加えて、ここで製造業が置かれている市場の変化の基本を押さえておきたい。ほとんどの製造業において、製品ライフサイクルの短縮、リピートオーダーの減少、ロットサイズの縮小が起きている。つまり、「製品と工程が細かくどんどん変わる」という問題を解かなければ、利益確保を実現するモノ作りが成り立たないという局面に立たされている。

ALT 図3 市場の変化

 かつては、「量産効果と業績が問題を解決する」というインフレ型モデル(設備投資を行い、長期で量産をすることでボリューム効果が出て利益が上がるなどのモデル)だったが、すでに質的なマネジメント=製品の構成管理へと転換している。SCMのような量や数の管理では不十分だということがお分かりいただけるかと思う。

 事実、かつてコスト低減・量産効果を狙った中国進出企業が日本に生産拠点を戻す事例も多く見られる。SCMやERPに代わる管理手法を業界が求めてきたのも事実であるが、量より質の管理を要求される時代に入り、PLMが現れた。その背景に何があるのか?

3文字ワードといってすぐにITの議論をしてはならない。まず自社を取り巻く市場環境を再確認し、本稿で解説してきた自社の本質的課題を十分理解してほしい。

 次回はPLMソリューションの概略と、製造業特有のシステム・アーキテクチャとの関わりについて説明する。

著者紹介

安村 亜紀(やすむら あき)

ネクステック株式会社 マーケティング部 マネージャ。某大手テレビ番組制作プロダクション、米国ソフトウェアベンダのマーケティング部門を経て現職に。現在、製造業を専門に業務改革支援コンサルティング、データモデリング、システム開発導入をワンストップで手掛けるプロフェッショナルファーム・ネクステックにてマーケティング活動全般を担当する。ワインマニアでもありワインのアドバイザリー活動や寄稿も行う。ご意見、ご感想、問い合わせのメールは、yasumura@nextechcorp.comまで


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ