需要・生産台数から機動的な資材調達を行うSCMコンサルティングの現場から(6)(1/2 ページ)

調達コスト削減や部品在庫適正化は、製造業の大きなテーマだ。今回は、需要に応じて部品の調達数量を調整するツールについて考えてみよう。

» 2004年07月24日 12時00分 公開
[南野洋一,@IT]

 ここ数年製造業では、購入する資材関係のコストダウンが注目されています。もちろん、以前からも推し進めていたのですが、最近特にその傾向が目立っています。

 これが顕著に表れた事例が、日産自動車の「日産リバイバルプラン」でしょう。カルロス・ゴーン社長は、計画をやり遂げて大きな利益を会社にもたらしました。また、松下電器産業では、グループ全体における調達を個々に行うのではなく、1つの購買部門に集中させることにより、調達費用の削減を行っています。また併せて購買部品そのものの集約も進めています。

 今回は、生産を行ううえでの制約の1つである資材(部品)について考えていきます。

SCMの方向性

 SCMといっても、いろいろなものが想定できますが、以下では図1のようなものをベースにお話ししていきます。

ALT 図1 基本的なSCMシステム

1-需要予測(上記図の〈販売計画〉)

需要予測を行い生産すべき“量”を定める??すなわち市場に受け入れられる量を計算する。


2-在庫補充計画(制約なし製造計画) (上記図の〈大日程・中日程生産計画〉)

現在の在庫量を踏まえて、どの拠点にどのくらい、製品を納入するか定める。また、そのときにどのくらい生産を行えばよいか検討を行う。ただし、工場側の制約は加味しない。


3-制約あり製造計画(上記図の〈大日程・中日程生産計画〉)

工場の制約(製造キャパシティ)などの状況を加味し、生産計画を平準化する(前倒し生産や後ろ倒し生産を検討する)。



 製造業ではこれまで、“製品”に注目して物事を考えてきました。それが“市場”をよく見て需要予測を行い、その数値に基づいて生産計画を立て製品を生産するという方向に変わってきました。これによって、不良在庫の増加や製品欠品による販売機会の損失などを減らしていこうというわけです。

 サプライチェーンの考え方で製造工程を構築していく場合、1つ1つのプロセスやモジュールがきちんとできていなければ、つながっていきません。例えば、“需要予測”の精度が悪ければ、その後のステップでいくら精度を上げても、結局は、在庫過多や欠品が発生してしまいます。

 製品ライフサイクルが長い製品の場合は、こうしたシステムなしでも生産調整は可能でした。完成品在庫や部品在庫が少々積み上がっても、やがて売れることが想定できるので、在庫がはけたら生産を再開すればよいからです。

 しかし、いまや技術は日進月歩の勢いで進化し、消費者ニーズも多様化して移ろいやすくなっています。多くのメーカーでは製品ライフサイクルの長い製品──ロングセラーを開発しようという努力もなされているでしょうが、なかなか簡単ではありません。

 製品ライフサイクルのある製品は、生産終了をどこで決断するかが大きな課題になります。これを解決するために、“需要予測”とは別のアプローチがあります。つまり、どの時点で販売終了するかを需要予測データから検討するのではなく、初めから○○台限定生産というように、市場に出す前から生産量を決定してしまうやり方です。

“期間”と“台数”を踏まえたSCM

 これと似た考え方に、乗用車のモデルチェンジがあります。乗用車の各ブランドは、4年サイクルでモデルチェンジが実行されています(最近は、多少違うサイクルのものもあるようですが)。例えば、今年モデルチェンジされたクルマは2008年まで生産・販売されて、次のモデルチェンジを迎えます(その間、2年目くらいにマイナー・モデルチェンジがあります)。これは、“期間”を初めから定めた方法といえます。

 今回、見ていくのはこの“期間”とともに“台数”までを事前に定めて市場に出そうというものです。

 例えば、「パソコン」や「携帯電話」などがそれに該当するでしょう。

 パソコンの場合、新製品紹介のページに「夏モデル」や「冬モデル」といった記載をよく目にします。ちなみに「春モデル」は3月ごろに販売される製品で新入学・新社会人が対象です。「夏モデル」は6月ごろに販売が開始され、夏のボーナスで購買してもらうことを想定しています。「冬モデル」……これはもうお分かりですね。冬のボーナスやクリスマス商戦向けの製品です。

 このように多くの場合年間3回も新製品が出てくるのです。例えば5月のゴールデンウイークのころに「春モデル」を購入しにいってもすでに販売されていないかもしれません。この時点でメーカーは「夏モデル」に主眼を置いており、「春モデル」はあったとしても流通在庫しかないからです。

 このような製品を、ロングライフの製品と同様な考えで“SCM”を行っていては、うまく仕事が回っていきません。そこで考えられたのが、“期間”と“台数”に基づいて行われるSCMなのです。

 この場合の制約条件は“資材”です。資材の調達は、購買部門が部品メーカーに発注して工場に届くまで「供給のリードタイム」がかかります。

 例えば販売部門から需要傾向が落ち気味だという報告がきたとします。しかし、その時点ではその需要に合わせたロットのための資材(部品)はすでに発注済みです。さて、需要(予測)の変化に応じて、最終製品の数量をどうすればいいのか、発注済およびこれから発注する資材をどう調整すべきかを考えなければなりません。そのためのツールとなる表やグラフを考えていきましょう。

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