需要・生産台数から機動的な資材調達を行うSCMコンサルティングの現場から(6)(2/2 ページ)

» 2004年07月24日 12時00分 公開
[南野洋一,@IT]
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需要予測から、生産時期・量を決定

 ここでは、パソコン製造を例にとって解説していきます。

 キーボードは変わることが少ない部品です。しかし、CPUやメモリはキーボードと同じように考えてもよいのでしょうか? 答えは否です。シーズンモデルごとに(ここでは、春モデルや夏モデルのことを“シーズンモデル”と呼ぶことにします)変わることが多い部品なのです。

 需要の状況を踏まえて、部品も余剰が発生しないように購買発注しなければなりません。多くの余剰が発生すれば利益が出ませんし、あまりに直前のキャンセル依頼は部品メーカーとの間の信用にかかわってきます。そこをどのようにコントロールしていくのかが課題です。

 そのために行うタスクは、“需要の意思入れ”です。計算ではじき出された需要予測数値に、部品の在庫状況を照らし合わせて、「いつまでに」「いくつ」生産を行うかを人間系で決定していくのです。それらを決定していくのに必要なレポートはどのようなものでしょうか。

 ここで資材(部品)のすべてについてではなく、「キーパーツ」に絞って考えていきます。この方が焦点を絞りやすいからです。ここでは、キーパーツは以下の5つです。

  • LCD
  • CPU
  • HDD
  • メモリ
  • DVDドライブ

 もちろん、これは私の考えなので、これ以外の部品を追加することがあっても構いません。例えば、キーボードやOSなどもあるでしょう。今回、これらは各国の言語仕様による違いもあるので、キーパーツには加えませんでした。

資材の供給状況を示すグラフ

 こうした状況で、購買担当者には次のようなレポートが提供されていればいいでしょう。

ALT 図2 部品の発注状況(数) モデル別・工場(生産拠点)別に、ペギングされているキーパーツ余剰の観点から生産サイクルタイムを変更する適正な数量・タイミングを推測することが目的(大まかな量と金額が表示できればよい)

 このレポートの前提はペギングされている部品を表示することになります。ペギングとはその部品がどの製品(生産オーダー)に対応するのかを示すことをいいます。このグラフの縦軸は“量”を基準にしていますが、同じグラフで、“金額”を縦軸にしたグラフも併せて用意すべきと考えます。

 このグラフの利用方法は、次のようなものが想定できます。

  1. モデル名称と工場名称をキー項目にして入力・検索する(工場名の部分には〈ALL〉でも構わない)
  2. 該当モデルにペギングされたキーパーツの調達状況がグラフ表示される。日付は、購買発注日に供給リードタイムを足した日数で表示される

 図2の例では、製品生産のサイクルタイムは7月6日週までで、これは生産台数6000台を前提にしたものです。そして5つのキーパーツは、予定どおり7月6日週までに調達されることが分かります。また、CPUは6月22日週にすでに調達が完了することになっています。

生産台数の変更を受けて

 さて、ここで販売部門から「状況が芳しくなく、当初予定した6000台は売れそうもない。5000台程度であろう」との予測が入りました。上記の部品調達状況を合わせて考えると、生産台数と発注はどのくらいにすればよいでしょうか。

  1. 6月22日週には、CPUが当初予定に対して100%になってしまう
  2. 6月15日週には、LCDが新予測の5000個に達する

 この状況をかんがみ、購買担当者は発注および内示の取り消し作業を行います。併せてプランナーは、余剰パーツをほかのモデルに展開ができないかなどの検討を行う──といった対策を取ることができるでしょう。

 読者の中には、余った部品は次のモデルに生かせばよいのではないかとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。それに該当する場合も、もちろんあります。

 しかしパソコン業界など技術革新が速い世界では、次のモデルには使われない部品が多くあります。そのため、使わない部品はデッドストックになる可能性が高く、できるだけ早く製品としてさばいてしまったり、キャンセルした方が良いことが少なくありません。

 また図2からは、生産台数が5000台であるなら、6月29日週に5つのキーパーツはすでにそろっていることも分かるでしょう。このように生産台数と調達予定を前提に、生産計画を立て直していくことになります。


 次回は、さらに細かく生産台数を検討・調整するために活用する表やグラフをご紹介していきます。

profile

南野 洋一(みなみの よういち)

ITコンサルタント。前職で1993年から社内システムをノーツやオラクル、SAPを用いて構築を行う。 当時はバブル経済が崩壊した時期で人員削減が行われる中、BPRを主眼においた仕組み構築に取り組んだ。 その後、システムコンサル系の企業に移り、製造業中心にSCM導入に従事。社内改革業務に取り組んでいる。ときには人材不足気味な中堅企業の情報システム部門の雇われマネージャを務めている


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