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» 2005年01月06日 12時00分 公開

ペルソナとシナリオを用いたソフトウェア開発──実践編(後編)ユーザビリティ研究会より(2)(2/2 ページ)

[生井俊,@IT]
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シナリオ作成のポイント

Q:「ペルソナには成長がある」とのことですが、世の中にバージョン2から使い始める人もいます。どう対応すれば良いのでしょうか。

 DataSpiderのケースでは、2つの意味での成長を考えました。1つ目は、バージョン1を使った人がバージョン2で成長していく「バージョン間をまたいだ成長」です。2つ目は、「まったく知らない人が接する中にある成長」です。

 弊社では、基本的にバージョン1を知らない人向けのシナリオを書いています。つまり、1を知らない人が2は複雑過ぎて使えないということを避けるために、ペルソナ/シナリオ法を導入したわけです。また、DataSpiderについてどのぐらい知っているかは非常に重要なファクターなので、「DataSpiderに関しては事前のトレーニングを受講した程度で、特にデータ連携ツール全般やDataSpiderについては詳しく知らない」というような内容を、ペルソナできちんと定義しています。このペルソナによって、バージョン1を知らない人にとっての敷居が高くなってしまうことが、回避されます。

Q:日記形式で書いていくということですが、日記の世界のタイムラインと現実のタイムラインは、対応しているのでしょうか。

 完全に対応を考えています。弊社の場合、DataSpiderを使ってお客さんが仕様書の検討から運用までどれぐらいかかるかが、案件規模ごとに見えています。その規模に合わせ、実際に1日でこのぐらいやるだろうという単位と合わせています。しかし、今日が11月18日だからといって、今日書くシナリオが11月18日である必要はまったくありません。

Q:詳細設計以前のフェイズでこれを使うというお話でしたが、ある意味、非常にリッチな要件定義書というイメージでよろしいでしょうか。

 おっしゃるとおりです。ペルソナもある意味、要件定義書の1つですし、デザインガイドラインも、シナリオも画面設計もそうです。つまり、すべてが要件定義書なのです。

 いままでの要件定義書のフォーマットややり方では、どうしても抜け落ちてしまっていたポイントがあるように思います。ペルソナ/シナリオ法は、実際に使う人がどういう人で、どういうステップで、というところを補完していくような考え方だと思うので、従来の考え方と対立するものではありません。むしろ従来のやり方をサポートしていくものです。

スピードを上げるために

Q:DataSpiderのケースでは、ぺルソナやシナリオを作成していくイテレーションにどのくらい時間がかかりましたか?

 ここは数カ月単位でかかりました。DataSpiderの場合はとにかく画面が多いので、それに時間がかかりました。実際に3人投入して2.5カ月ぐらいですから、単純に掛け算すると2.5×3=7.5人月です。ただ、DataSpiderはかなりの規模のソフトウェアなので、それでこのくらい掛かっているというのもあると思います。

 また、このペルソナ/シナリオ法を使うことで一番がドラスティックに影響を受けるのは、機能要件自体が変わってしまうことです。それはいいことでもあるのですが、この機能とこの機能は実現されているべきだといっていたのが、ペルソナやシナリオを通じて実際のユーザーのニーズを細かに見ていったら、実はこの機能を意識させること自体が間違いで、それは別の形で見せるべきだとなると機能要件自体がひっくり返ってしまいます。それに伴ってほかの部分も変わってくるわけですから、操作要件が機能要件自体をひっくり返してしまうというのは、結構インパクトがあるポイントです。それだけでもペルソナ/シナリオ法を1回でもやってみる価値があると思います。

Q:インテレーションのスピードを上げる工夫はありますか。

 弊社の場合は、シナリオを詳細に書くことで工夫しました。画面設計で手戻りが発生するとかなり時間がかかってしまうので、画面設計の手戻りをどれだけ減らせるかがポイントだと思います。デザインガイドラインやシナリオを詳細に設計しておくことでこのリスクはある程度抑えられると思います。

Q:アイデアとして新しい機能が出てきたときに、シナリオや画面設計に反映させていく必要がありますか?

 後で出てきた機能だからといってシナリオや画面設計と独立に機能を付け加えていってしまうと、ペルソナにとって本当に使いやすいのかを確認せずに機能を追加するようなケースが出てきてしまいますから、シナリオや画面設計は必ず通した方が良いと思います。DataSpiderの場合にも、新機能を追加する際には必ずシナリオや画面設計に反映させなければならないとデザインガイドラインにはっきり書いてあります。

profile

生井 俊(いくい しゅん)

1975年生まれ、東京都出身。同志社大学留学、早稲田大学第一文学部卒業。株式会社リコーを経て、現在、ライター兼高校教師として活動中。著書に『インターネット・マーケティング・ハンドブック』(同友館、共著)『万有縁力』(プレジデント社、共著)。


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