「e-文書法」で夢のペーパーレスオフィスが実現?トレンド解説(12)(1/3 ページ)

これまで紙による保存が義務付けられていた文書の電子保存を認める「e-文書法」が、2005年4月1日に施行される。e-文書法は企業のビジネスをどう変えるのか

» 2005年02月26日 12時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 これまで紙による保存が義務付けられていた文書の電子保存を認める「e-文書法」が、2005年4月1日に施行される。同じ日に施行される「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)と比べると注目度はいまいちだが、すでにドキュメント関係のベンダがe-文書法対応をうたう製品やサービスを発表するなど、動きは始まっている。e-文書法は企業のビジネスをどう変えるのか。

 e-文書法の正式名称は「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」。前者は、関係する計251本の法律を個別に法改正することなく電子保存を可能にする通則法で、後者は通則法では完全に対応できない規定の整備を行う整備法となる。

オリジナルが電子の文書の保存は従来からOK

 民間で扱う文書のうち、作成から処理まで一貫してコンピュータで作成され、オリジナルが電子ドキュメントである文書の電子保存は、1998年に施行された電子帳簿保存法で従来より可能だった。今回のe-文書法の施行によって、帳簿書類や領収書、注文書など紙で保存されている文書をスキャニングによって電子化して保存することや、取引先から受け取った手書きの文書を電子化して保存することが認められるようになる。

e-文書法の施行後、オリジナルが紙の文書の電子保存が可能になる
オリジナル
保存形式
現状
e-文書法施行後
電子データ
×
マイクロフィルム
電子
電子データ
コンピュータ出力
マイクロフィルム

 新たに電子保存が認められるのは、これまで紙での保存が義務付けられていた税務関係帳簿書類(契約書、領収書、見積書、納品書、受注文書)、医療関係書類(カルテ、処方せん)、会社関係書類(定款、株主総会議事録、営業報告書など)など。税務関係帳簿書類のうち、決算書類や帳簿、定型的約款がない契約書、3万円以上の領収書はこれまでどおり紙での保存が義務付けられる。

  e-文書法が策定される背景には、紙で文書を保存することによる企業のコスト増大がある。日本経団連の2004年3月1日の報告書「税務書類の電子保存に関する報告書」によると、紙の文書の保存コストは経済界全体で年間に約3000億円と企業にとっては大きな負担になっている。紙の文書がビジネスプロセスの一部に残ることで、手作業によるコンピュータへの再入力など非効率な作業が発生するという心配もある。

 リコーの販売事業本部 ソリューションマーケティングセンター ソリューション企画室 室長 兼 e-文書法推進室 室長の平岡昭夫氏は、紙文書が電子化できないことで「書面の交付から保存・閲覧までのトータルな電子化ができず、経営活動や業務運営効率化の阻害要因となっている」と指摘する。e-文書法は民間企業が長く待ち望んできた法律といえるだろう。ちなみに行政機関の文書の電子化は2003年の「行政手続オンライン化法」で、ほぼ可能となっている。

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