システム構築を業者に発注したら、それで担当者の仕事は終わり……ではない。プロジェクト期間中、適宜、スケジュールと品質を管理する必要がある。難しいプロジェクト管理技法とは一味違う、“進ちょく管理”のポイントとは?
さて、業者にシステム構築を請負契約で発注した場合、原則的には納期までにシステムを納品してもらえばよい。ところが、実際のシステム構築プロジェクトではスケジュール遅れとなることが少なくない。たとえ、契約で取り決めペナルティを取ったとしても、システムの実用開始が遅れて損失を被ることに変わりはない。請負契約だからと業者に任せきりにせず、適宜、進ちょくを把握して問題があれば早め早めに対処するようにすべきである。
人間誰しも悪い知らせは聞きたくないものだ。また、悪い知らせを持ってきた人間に当たったりする。しかし、それでは問題が発生しているのに、真の状況が隠され、「問題ありません。なんとかします」という報告ばかりを受けることになる。これでは、リスクを早期に発見し、対策を講じることなどできない。
とかく悪い知らせというのは、届きにくいものだ。担当者も、ギリギリまでなんとかしようともがき、最後の最後になって、実は……と切り出してくることが多い。まじめで努力家ほど、この傾向にあるので余計に厄介だ。悪い知らせを早めに出して助けを請えば、結構、助け舟が出たりするものだが、まじめ・きまじめさが邪魔をするのか、なかなか切り出してこない。また、業者としては、早くから遅れそうだと手を挙げて、余計な“せんさく”や“ちゃちゃ”を入れられたくないという思いもあろう。
このような状況を打破し、風通しを良くするには「発注者側が、気を使わなければならない!」のである。なんで発注者(顧客)が気を使わなければならないのかと思われる方も多かろうが、システム構築というのは、すべからく「人」である。人はメンタルな面に左右されやすい。プロジェクトをスムーズに進めたいのであれば、業者側のプロジェクトリーダーにその気になってもらわなければならない。「俺は客だ!」とふんぞり返ったところで、仕事は進まない。業者も含めた、チームビルディングを考えたい。
業者側のリーダーが打ち解けて何でも相談してくるようになれば、悪い知らせを先(早め)に聞くこともできる。例えば、要求事項を満足するために技術的に困難な課題が出ているケースもある。そのような場合、利用者と調整し要求事項を緩やかなものに変えることで、課題が解決できることもある。また、要員不足となっている場合も、状況を早めにつかめば、顧客として相手の上司に要員の増強を要請することもできる。
いずれにしても、納期間際に「遅れます!」と突然いわれて、あたふたしても始まらない。悪い知らせに耳を澄まし、早め早めに対策を業者とともに考えることで、納期遅れによるムダな時間・コストを防止するようにしたい。
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システムの出来具合と進ちょく状況を、適宜、業者から報告を受けるのは、リスク管理の面から当然である。また、悪い知らせを早め早めに聞き出して、先回りして対策を打つことも重要である。
しかし、これらはいずれも間接的な情報である。やはり、重要なポイントでは、自らの目で確かめることが必要だ。織田信長は、間接的な情報だけに頼った情勢判断では「いま、そこにある危機」に対する勘が働かず、手遅れになることを恐れたため、三現主義(現場、現物、現実)を徹底していたといわれている。また、トヨタの強さの一端にも、徹底した三現主義があるといわれている。
システム構築は、成功率が30%程度といわれるほどリスクの高い仕事である。これを、他人任せ、業者任せにして、間接的にしか関与しないようでは成功はおぼつかない。建築においても欠陥住宅を防止するために、竣工までに3回は現地において第三者の専門家とともに自分の目で、建築検査を行うように推奨されている。システム構築における検査に当たるのが、レビューである。レビューなしで、システム構築を行うのは、羅針盤なしで、荒海に乗り出すようなものであり、難破するのは必至である。
レビューをマイルストーンにおいて実施することで、品質と進ちょく状況の両方をチェックすることができる。例えば、品質上の問題が発見された場合、その重大度、影響度によって、今後の進ちょくが、どの程度遅れる可能性があるかを事前に予見することができる。一般に、進ちょく状況は、計画に対して、実績がどれくらい進んだか、どれくらい遅れたかの過去形の報告しかされず「この先、どれくらい遅れそうか」ということは報告されない傾向にある。そして、実際に品質上の問題などの解決に手間取り、遅れが表面化してから報告される。このような場合でも、レビューによって品質上の問題を事前に把握することができれば、遅れる前に適切な技術者を手当てするなどの対策を打つことができる。
レビューに数多く参加することで、リスクをかぎ分ける勘が鍛えられ、内容にかかわらず「ヤバイ」状態にあるか、ないかを知ることができるようになる。また、建築における第三者としての建築士や、医療におけるセカンド・オピニオンとしての医師と同様に、第三者の専門家として、システムアナリストやシステム監査技術者、あるいは別の業者のサポートを受ける手もある。
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