企業合併でシステムが止まらない方法教えます!システム部門Q&A(6)(4/4 ページ)

» 2005年08月09日 12時00分 公開
[木暮 仁,@IT]
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ユーザーをうまく使え!

 合併システム構築では時間が勝負です。納期を短縮するにはさまざまな方法がありますが、最も効果があるのは、開発するべき情報システムの規模を小さくすることです。

 規模を小さくするには「新会社発足初日までに必要な機能だけに絞り、月末、期末に必要な機能は逐次開発すればよい」という時間的な逐次開発も1つの考え方ですが、これは適切ではありません。システム稼働後には思わぬトラブルが発生するし、その後の状況変化も多いので、逐次開発する余裕がないのです。しかも、このようなアプローチでは、パッチ当て的なシステムになってしまい、「良いシステム」にすることができません。

 「IT部門は本管だけ、蛇口は利用部門で」という考え方が効果的です。これは、「情報検索系システムを前提とした基幹業務系システム」といってもよいでしょう。IT部門は、請求書とか財務諸表など社外提出用あるいは会計用の帳票だけを作成すればよい。データはデータベースとして保管しておけばよい。利用部門が必要とする各種情報は、情報検索系システムとしてEUCで行えばよい。その情報検索系システムも利用部門にさせればよいというのです。これの詳細については「第14回 データウェアハウス中心アプローチで問題解決しよう」を参照してください。

 EUCのキーマンたちをうまく活用すれば、さらに革新的な効果が得られます。合併システムの開発以前に、それまでの両社のEUC用のファイル群を全面的に見直して、AB共通のデータウェアハウスを設計することができます。先にIT部門が用語や概念の統一を図るといいましたが、実際にはこのキーマンたちとの共同作業で行い、統一基準を先取りしてデータウェアハウスに取り入れるのです。このような先行作業により、本格的に合併システムを作成する段階では、本管工事の目標となるデータベースの見本ができ、ある程度のマスタファイルすら作られていますので、合併システムの構築が非常に簡素化されます。

 この効果は、単に合併システムを期間内に完成するのに効果があるだけでなく、それを通して利用部門の新システムに関する理解も高まり、既システム愛着症からの脱皮ができます。

 いずれにせよ、「バベルの塔の解決」と「ユーザーをうまく使う」が両輪となっていることに留意してください。

  IT部門よ、団結せよ!

 合併システムでの開発では、時間を有効に使うことが必要です。それには、

・従来のシステムに固執する圧力を跳ね返すこと

・両社の用語・概念の統一をせよ

・情報検索系システムを普及させよ

 などが効果的なことをお話ししました。これらは、単に合併システムを成功させるだけでなく、新体制での業務を円滑に行うにも効果があります。

 しかし、これらを円滑に行うには、両社IT部門の相互信頼が不可欠です。それには合併が話題になる以前から、IT部門同士が仲良くなっていることが必要です。業界内でのIT研修会などの理由を設けて、飲み仲間やゴルフ仲間になっておくことが成功につながります。

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筆者プロフィール

木暮 仁(こぐれ ひとし)

東京生まれ。東京工業大学卒業。コスモ石油、コスモコンピュータセンター、東京経営短期大学教授を経て、現在フリー。情報関連資格は技術士(情報工学)、中小企業診断士、ITコーディネータ、システム監査、ISMS審査員補など。経営と情報の関係につき、経営側・提供側・利用側からタテマエとホンネの双方からの検討に興味を持ち、執筆、講演、大学非常勤講師などをしている。著書は「教科書 情報と社会」「情報システム部門再入門」(ともに日科技連出版社)など多数。http://www.kogures.com/hitoshi/にて、大学での授業テキストや講演の内容などを公開している


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