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» 2005年09月16日 12時00分 公開

事例で学ぶビジネスモデリング(4):企業の健康を診断する「業務分析」〜IT技術者のための戦略・業務分析入門〜 (1/3)

[大川敏彦(シニアコンサルタント),ウルシステムズ]

企業における健康志向

 皆さんは、深夜のテレビCMを見て思わず健康器具を購入してしまったとか、効果が出るかどうか分からないサプリメントに何万円も費やしてしまった経験はないだろうか。実は、企業においてシステムを構築する場合にも、これと同じようなことが往々にして起きている。競合他社がERPを導入したので自社も導入を検討するとか、コンサル会社から成功事例を聞いて、CRMパッケージの導入を決断するといった話を聞くと、個人が健康器具やサプリメントを購入する話に似ていると思うことがある。本当にその企業の健康状態に合った健康法の導入が行われているといえるのだろうか(図1)。

ALT 図1 企業の健康状態に合った健康法の導入が行われているか

企業と個人の違い?企業は多くの視点・価値観の集合である?

健康法を導入する場合、個人ならば自分の考えで何を導入するかを決めればよい。しかし、企業の場合は、利害関係者が多いため、状況はより複雑になる。例えば、あるアパレル関連の製造小売業で、次期システム再構築に際して、関係者にインタビューを行ったときのことだ。

社長 弊社は、お客さまが第一だ。お客さまに喜んでいただけるには品質が第一だ。従って、製品にはお金をかけてもいいが、システムにはあまりお金をかけたくない。

経理担当者 月度の決算処理の負荷を軽減したい。店舗の売り上げ集計や仕入実績管理の精度を上げるような仕組みにしてほしい。

事業部長 事業部の売り上げを去年より5%伸ばしたい。そのためには欠品だけは避けなくてはならない。需要予測がぴたっと当たるシステムがいい。

販売担当者 とにかく毎日忙しくてたまらん。新しいシステムを作るなら、売り上げ集計や、店舗のレイアウト作成を自動で行えるようにしてほしい。

 このように、さまざまな立場の方からさまざまな視点での意見・要求が挙がってきた。システム化を検討するに当たって、われわれはこのようなさまざまな要件から、この企業の現状に合った、より投資対効果が高いものを選択していかなくてはならないのである(図2)。

ALT 図2 より投資対効果が高い要件を選択していかなくてはならない

業務分析で論理的・客観的に企業の「あるべき業務の姿」を描く

 さて、このようにさまざまな視点・価値観の集合体である企業において、その企業に合った正しい健康法を見つけるにはどうすればよいのだろうか。それはパッケージ導入や、システムの要件定義を行う前に、現状の業務の姿・問題点を明らかにし、問題点について対応策を考え、現状の問題点が解決された「あるべき業務の姿」を描くことだ。われわれはこの作業を「業務分析」と呼んでいる。

 業務分析の進め方としては、大きく4段階ある。まず、(1)現状業務分析を行い、現状の業務の状況を把握する。個人に当てはめると、これは健康診断などを行い、健康状態をチェックする作業に当たる。次に(2)問題点分析で、現状の業務の問題点を明確にする。健康状態が悪い部分を明確にする作業に当たる。次に(3)施策立案で、先ほどの問題点の解決策を立案する。これは、どういった健康法を採用するかを決定する作業だ。そして最後に(4)新業務設計を行い、問題点の解決策を組み入れた新しい業務の設計を行う(図3)。

ALT 図3 問題点の解決策を組み入れた新しい業務の設計を

 以降では、4段階の作業について、もう少し詳しく見てみよう。

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