そもそもストレージって何だか分かりますか?情報資産管理とバックアップポリシー(3)(2/2 ページ)

» 2005年11月22日 12時00分 公開
[藤巻 敬久,日本ヒューレット・パッカード]
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テープライブラリのストレージ技術

1:ライブラリとオートローダの違い? 

 各製造ベンダの見解にもよりますが、一般的に1ドライブのみ(増設不可)搭載したものをオートローダ、複数のドライブを搭載したものをテープライブラリと定義します。

2:テープライブラリの基本構造

 基本的にテープライブラリは複数のテープドライブ、チェンジャーメカニズムとメカニズムを制御するコントローラで構成されています。最近ではディスクシステムの管理技術を使いドライブとチェンジャーメカニズムを管理、運用するためのコントローラ(マネジメントカード)を搭載した製品も出てきています。

 テープライブラリに搭載されるテープ・ドライブはより大容量、ハイパフォーマンスのドライブを搭載し、複数のサーバのバックアップをより効率的に運用することで付加価値を高めています。また、先に紹介したマネジメントカードによって、ライブラリの冗長性を高める機能であるファイバインターフェイス、ライブラリの管理が遠隔で実行できる点が、オートローダとの大きな違いとなります。最近では限られた投資を最大限に生かすために、データ量の増加に合わせて20?30スロットの最小のライブラリ構成を複数のモジュールを積み重ね、最大100巻程度まで増設できる製品が増えています。

3:チェンジャーメカニズム 

 バックアップ装置のチェンジャーメカニズムは確実にテープを交換することに主眼が置かれており、メカの動きは機敏ではありません。チェンジャーはメディアを扱うピッカーメカニズム、ピッカー駆動メカニズム、メディアスロットで構成されています。最近の大型ライブラリでは振動などに強い一体型シャーシが主流となっており、1筐体でのスペース容量が大きくなるような工夫がされています。また、増え続けるデータ容量に備えスロット増設は複数の筐体を接続し筐体間でメディアの搬送ができるよう工夫されています。

ALT チェンジャーメカニズムの一例

4:ライブラリの制御、管理

 ライブラリ内部は、R422またはI2Cでコミュニケーションが取られており、ライブラリコントローラによって各コンポーネントの状況がフィードバックされています。万が一、チェンジャーメカニズムやドライブなどに障害が起きた場合には、タイムリーに管理コンソールにアラームなどで障害を知らせることが可能になっています。

 また、エンタープライズ向けテープライブラリでは、ライブラリの制御だけではなく、ライブラリのさまざまな運用管理ができるような管理機能を持っています。管理機能はイーサーネット経由でライブラリと通信してSAN環境への接続・構成を実行し、ライブラリ本体のモニタリング、ファームウェアの更新などが簡単にできる機能を持っています。また、管理ソフトウェアとの連携により、異なるテープフォーマットの混在、ライブラリのパーティショニングも可能にしています。このような機能により、資産を有効に利用することができるうえに、将来への拡張性も加味したハードウェアの作り込みがされています。

5:VTLの出現 

 現在のコンピュータシステムは24時間・365日休まず稼働しています。このような環境では、バックアップを取る時間や、さらに障害が起きたときの復旧時間も短縮しなければなりません。そこで注目を集めてきているのが「Virtual Tape Library(VTL)」です。VTLはディスクシステムを仮想的にテープライブラリとして運用し、バックアップやリストアの高速化を実現するバックアップシステムです。

 現在、バックアップをとるという理由でサービスを停止することは難しいという状況になっており、VTLを導入することでシステムの可用性を落とすことなく、バックアップ・リストアの高速化を実現し、システムの停止や復旧を最小限にすることが可能となります。

 ただし、気を付けなければいけないこととして、あくまでVTLはバックアップやリストアのパフォーマンスを向上させるための製品であり、最終的な災害対策にはテープのバックアップによるバックアップ媒体の遠隔管理が重要だということです。

ALT VTLによるシステム構成例

 次回は、階層型のデータ管理をソフトウェアで実現する方法などを中心に、紹介していきます。

著者紹介

▼著者名 藤巻 敬久(ふじまき ひろひさ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 ストレージワークス製品本部ビジネス開発部リーダ

1982年横河ヒューレット・パッカード入社?計測器、コンピュータ製品の品質管理に従事

1991年?オプティカル、テープ、ILM製品の製品マーケティング担当として従事

2005年7月?ビジネス開発部リーダとしてストレージビジネス開拓、拡大に悪戦苦闘中


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