ITプロジェクトを見える化するThe Rational Edge(2/4 ページ)

» 2006年03月01日 12時00分 公開
[Anirban Dutta,IBM ITポートフォリオ管理プロフェッショナル]

プロジェクトポートフォリオ管理(PPM):その真実

 話を先へと進める前に、素人でも分かる言葉を使ってPPMの上位レベルの概要を解説したい。

 WebでPPMについて調べると、ポートフォリオ管理が提供する価値について、「ビジネスに合わせたIT」「ITの最適化」「IT統治」「コンプライアンス」と説明する格好のよい言葉を必ず目にする。最近ITポートフォリオ管理の会議に出席したことがあれば、組織の「知識プロセスアウトソーシング(KPO)」および「業務プロセスアウトソーシング(BPO)」遂行にPPMがもたらすメリットの大きさについて聞き、当惑したかもしれない。早い話が、こういった異なる技術や格好のよい説明は、これらを理解するのを混乱させるだけなのだ。

 事実上、Enterprise Project-portfolio Management(本稿では以下PPMで省略)は人材、リソース、そしてプロジェクトを事業目標に合わせることにすぎない。PPMは効率的なプロジェクトの選択と優先順位付けから始まり、会社に継続的に価値を提供することを究極の目標とする。PPMは、慎重に選択したプロジェクトによって人的資源や知識などの企業資本投資を慎重にコントロールすることで、組織によるビジネス戦略の実践を可能にする。

 筆者は、日常的な話し言葉を使ってPPMを説明してみたい。本稿を読むことでPPMをもっと簡潔に説明できるようになっていただければと思う。

PPMに対するニーズ

 ここ10年でITの知名度が劇的に高まったのは、ビジネスに対してITの説得力が高まったことと無関係ではない。念のため付け加えると、金融などの各種ビジネスデータの妥当性、生命科学、航空宇宙、防衛といったリスクの高いビジネスのミッションクリティカルなプロセスのサポートなど、そこには多数の例がある。ITの新しいアカウンタビリティーには、ビジネスの核となる分野も含まれる。企業のマネジャーは常に、コンプライアンスコストは抑えつつ、新しい製品、サービス、システム、およびプロセスの投入による売り上げ拡大をITに求めている。

 新しいアカウンタビリティーの目標達成がITに要求されるコア要件を以下にいくつか示す。

  • 精度:ITは、より正確な予測と成果達成を支援しなくてはならない
  • 柔軟性:ITの支出、リソース、優先事項は、ビジネスニーズの変化に迅速かつ効率的に合わせる必要がある
  • コンプライアンス:ITは、米国企業改革法、米国愛国者法(Patriot Act)、あるいは連邦規制基準(CFR)21章など、監督機関の要件に準拠したプロセスをサポートする必要がある
  • ビジネス主導の構想:ITの投資は、事業価値の創造を立証できるものである必要がある
  • 業務リーダーシップ:ITデータは、資金を割り当てる業務プロジェクトの判断でマネジャーをサポートする必要がある

PPMの進化

 これらの要件を効果的かつ効率的に満たすため、IT部門は社内プロセスを構築し、数値化できる結果を出す必要がある。筆者の定義するPPM活動は、以下のコアコンピテンスにより構成される。

  • ビジネスに最大限寄与する適切なプロジェクトを選ぶ能力
  • 期限および予算内で、企業全体レベルで結果を出すプロジェクト、ポートフォリオ、リソースなどを管理する能力
  • 結果の向上を目指して社内プロセスを継続的に改善しようとする姿勢
  • ITコストが数値化できる結果とリンクし、そこから正当化されることを証明できる能力

 ビジネスおよび技術上の最大限の成果を実現するため、現場であるITから、企業のマネジャーまで、PPMソリューションにはさまざまな人がかかわってくる。PPMは、ROIに関してもIT部門内のさまざまなレベルで幅広い価値を提供することができる。下記の図にその一部を示す。

ALT 図 PPMソリューションは、このピラミッド図にある各組織層の欄に説明のあるメリットを提供する(クリックすると拡大)

 素人でも分かる言葉を使ってPPMを定義すると、PPMは、ITプロジェクトによる価値の創造を、ビジネス戦略や目標に合わせたまま向上させ、促進し、低コスト化するIT統治ツールであるといえる。

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