ITプロジェクトを見える化するThe Rational Edge(3/4 ページ)

» 2006年03月01日 12時00分 公開
[Anirban Dutta,IBM ITポートフォリオ管理プロフェッショナル]

PPMプロセスに適切なソフトウェアを選ぶ

 PPMのインプリメンテーションを成功させるためには、会社が自社のビジネスと技術ニーズを理解する必要があることは周知の事実だ。また、成功につながる基準やパフォーマンスベンチマークなどの各種関連測定基準を含む最優良事例や強力なプロセスガイドラインに従う必要もある。これらのニーズやガイドラインが決まったら、後はソフトウェアがPPMソリューションのインプリメンテーションで欠くことのできない役割を演じることになる。

 ITのポートフォリオを手動で管理することもできなくはないが、そのために複数のプロジェクト、プログラム、資産、およびリソースの管理、そして各種レポートの生成、スケジュールの予測、財務の管理などが必要になる組織にとっては非現実的かもしれない。各種作業を低コスト、短時間、および効率的で行うためには、自動化の必要があるのだ。優れたPPMソフトウェアは、その自動化を実現する。

 企業が、自社のITポートフォリオ管理戦略の自動化に役立つPPMソリューションを適切に評価できないことは多々ある。ITポートフォリオ管理のメリットを最大限に有効活用するには、組織がPPMソフトウェアベンダ市場の評価方法を知っておく必要がある。

 企業は、自社の技術、機能、あるいはビジネスのニーズをほとんど理解しないままポートフォリオ管理用ソフトウェアの購入を試みるかもしれない。PPMソリューションの適切なツール(セット)を入手するのと、モデル主導開発、コンフィギュレーション管理、あるいはテスト用にデザインされた標準IT開発ツールを入手するのとでは大きな違いがある。これらのソフトウェア開発ライフサイクルは、それぞれが特定のユーザーのニーズに対応するツールによって自動化されているため、PPMソリューションは、ほかのリソース管理やプロジェクト管理に関する特定のニーズや同社の収益に直接関係する間接的なニーズに対応する必要がある。このような間接的ニーズの例としては、ITを複数の事業部門(LOB)とその戦略目標に合わせるメカニズム作成や、提案されて予算も付いたプロジェクトの真の事業価値を理解するための測定基準作成などがある。

 かなり単純なIT開発ツールの調達に慣れてきた企業は、突然未知の世界に来たようで戸惑うかもしれない。このような移行に多くの幹部は苦しんだが、移行のリスクを低減させる方法はある。例えば、顧客とPPMベンダの両方が組織内のさまざまな役割の重要性や、ソフトウェアソリューションに関するやりとりの方法を理解することは極めて重要だ。筆者は、幹部らがPPMベンダになるところに何を期待すべきか理解するのに役立つフレームワークを示していく。こうすれば、PPMインプリメンテーションを成功させるための心構えが整うだろう。

市販のPPMツール

 業界では、PPM分野に関する話題には事欠かない。企業には常に、新しい情報や、最優良ベンダとその理由に関するアナリストのレポートなどが流れてくる。PPM市場は、ベンダの新規参入、大手ITベンダによる小規模ベンダの買収、強化を繰り返すPPMツールにより常に変化している。誇大宣伝の裏を読めば、PPMベンダが実際には以下の2つのカテゴリーに明確に分けられることが判明する。

1)PPMスペシャリスト

 当初から参入しているところ、もしくはこの市場の草分けで、ポートフォリオ管理ソリューション専門に活動しているところ。これらのPPMソリューションの中には、プロジェクトやポートフォリオを異なるレベルでトラッキングするものなど、高度な機能を提供するものもある。これらの企業の価値は、専門であるこの分野に関する専門知識にこそある。競争の激化に伴い、これらのニッチプレーヤの一部は、常に規模の大きいソリューションプロバイダの買収対象にされている。

2)エンタープライズ・ソリューションプロバイダ

 PPM分野でも、開発ツール市場で大きな存在感を示す大規模ITベンダに関心が集まりつつある。ニッチPPMベンダを買収し、それを自社のツールビジネスに組み込むというのが、これらの企業が通常行っている方法だ。これら大規模ベンダの価値は、ITソフトウェアの開発支援を必要とする顧客が1カ所ですべてをそろえられることにある。成長し続ける市場であるため、大規模なカスタマイズを行わなくても開発ツールと従来のPPMツールとの間にトレーサビリティが実現すると考えることは妥当だろう。例えば、将来的には従来の開発ツールとPPMツールの間でルック&フィールが標準化されることも想定される。筆者は、顧客が必要なツールを選んだり、パッケージ全体を入手できるなど、各種ツールを好きに選べるようにしているベンダからシェル方式のアプローチがあると思っている。

PPMツールベンダのサービス

 PPMツールはスタンドアロンの開発ツールとは異なる。通常は、一定のカスタマイズが必要で、ニーズに合ったインストールや設定が必要となる。ツールから技術的および機能的に何が必要なのかを知っておかねばならず、そのソフトウェアソリューションの適性と、それがビジネスプロセスをどのように支援するのかを明確に理解する必要がある。PPMは、組織のすべて、あるいは大半のチームが関与するため、ソフトウェアの導入時には相当量のコミュニケーション、コラボレーション、そして(よくある事例だが)妥協が発生する。

 適切なサポートの提供に必要な幅広い専門知識、成熟度、時間、意欲、そして人的資源を持ったベンダと協力することは極めて重要だ。

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