今日、Webサイト/Webテクノロジのビジネス活用を語るうえで欠かすことのできないタームに、「Web 2.0」がある。Web 2.0は、あちこちでさまざまな定義が語られているが、その本質は「人が情報に信用・信頼を感じるメカニズムを提供するもの」といったところではないだろうか。
中国の故事(『韓非子』)に、「三人、市に虎をなす」というものがある。
昔、魏の国王がいました。あるとき、家臣が王に次のような質問をしました。
「もしも、誰かが“街に虎が出た”といったら信じますか?」
「信じないな」
「では、もう1人誰かが“街に虎が出た”といったときはどうでしょう」
「いるかもしれないと思うだろう」
「それでは、さらにもう1人が“街に虎が出た”といったらどうなさいますか?」
「そうであると信じるだろう」
これは、単独の情報ではその信ぴょう性は十分に判断できないが、複数の情報があれば相互に信頼度を補い合うことを示した故事だ。
Web 2.0を代表する技術であるブログやSNSなどによって形成されるCGMは、「人が情報に信用・信頼を感じるメカニズム」をWebで提供するものである。
CGMなどのWeb 2.0インターフェイス機能は、世界中のCMSベンダのほとんどは、遅かれ早かれ、実装してくるであろう(そもそもブログは簡易CMSだといえる)。
それに対するユーザー側の取り組みは企業の体質や考え方によって、いち早く実装を試みる会社と他社の動向をにらみ、機が熟した段階で実施する会社、あるいはB to Eでまず試みてからB to BやB to Cへ展開してノウハウを吸収する会社など、まちまちかもしれない。とはいえ、商品やサービスを提供している限り、それら商品やサービスに関する情報をきちんと発信・開示することは、会社として欠かすことのできない機能だ。であるならば、その情報伝達の過程に「人が情報に信用・信頼を感じるメカニズム」を何らかの形でビルトインする方がベターである。
他方、Web 2.0型メディアの隆盛は、企業に「悪い情報の流布」に対する備えを要請する。口コミとマスコミの相乗効果で「人が情報に信用・信頼を感じるメカニズム」が悪い方向に過剰に働いた場合、予想以上の影響が出ることも考えられる。企業内部の情報・コンテンツの管理だけではなく、各種メディアの動静を取り込む仕組みさえ、将来は必要になるかもしれない。
Webサイトをビジネスに活用するために必要な機能は、「PDCAに裏付けられたマーケティング機能」「ベストプラクティス・ビジネスモデルの実装支援ツールとしてのテンプレート」「信用や評判を生み出すWeb 2.0インターフェイス」である。そして、その中核にあるのが基礎としてのPIM機能──CMSなのだ。
マーケティング機能/テンプレート/Web 2.0インターフェイスがばらばらに提供されているとしたら、例えばWeb 2.0によってせっかく一定の信頼や評判が生成されているのに、タイムリーなOne to One活動やレリコメンデーションが行えないといったことになリ、大きな機会損失となる。ERPというコンセプトが企業内のすべての経営資源を一元管理・最適化して、各業務の連携を図ることでビジネスを効率化するのを目指すように、CMSによってWeb上の活動がシームレスに連携し、顧客や取引先などの変化に柔軟かつ適切に対応できることが重要なのである。
デジタルアセット研究会
事務局 FatWire株式会社2003年から2005年度までの2年間、CMSをビジネスに活用するための各種技術や事例などをユーザー、SIer、デザイナー、印刷会社など20名程度の有志が毎月研究会を行っていた。この連載は、デジタルアセット研究会で話し合われてきた内容を基に構成したものである
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