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» 2007年02月01日 12時00分 公開

目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(3):高過ぎる“部署の壁”と好きなのにすれ違う2人(第3話) (2/4)

[三木裕美子(シスアド達人倶楽部),@IT]

やはり、困ったときには“豊若”

 恵比寿のいつものバーで、坂口はビールを飲みながら豊若を待っていた。店内のモニターにぼんやり目をやりつつも、心の中ではプロジェクトの今後に思いをはせている。サンドラフトサポート時代の自信はすっかり揺らいでいた。

豊若 「よう、待たせたね」

坂口 「豊若さん、お久しぶりです!!」

 ビールを、とバーテンダーに告げた豊若はスツールに腰をかけた。Chromeの香りが漂う。

豊若 「どうだ、本社は?」

坂口 「えぇ……、まぁ……。まだ始まったばかりですが、何とかやっています」

豊若 「やせたな。大分苦労してるんじゃないか?」

坂口 「えっ!?」

 意外な豊若からの指摘にショックを受けた坂口は、口を開くとプロジェクトのキックオフの話、ヒアリングを行おうとしているものの、部署間で協力をしようという雰囲気がないこと、現場がバラバラでこれからプロジェクトとしてまとめられるのか不安であることなど、気が付くとせきを切ったように話していた。

坂口 「私がいままでいた会社は規模もさほど大きくなくて、組織の壁ってあまり意識せずに仕事をしてきました。でも本社は違うんです。みんな自分の部署のことばかり考えている気がするんです」

豊若 「確かにヒアリングは現状調査の段階では大切なことだな。でも、部長や主任にコンタクトするのはあくまで最初の頭出しにすぎない。実際にシステムを使うのは現場のメンバーだろ? 君も営業やっていたころ、どんな気持ちでお客さんのところに足を運んでたか思い出してみろ。現場の思いを形にしてあげるのもシスアドの役割じゃないかな」

 豊若と別れた坂口は、豊若の口にした「現場」という言葉に強く引かれる自分に気がついていた。

坂口 「(現場かぁ……。そうだな。現場主義が一番だ。また、一から始めてみるか!)」

 強い決意とともに、あらためて豊若へのあこがれを強くする坂口だった。

役員たちの腹黒い思惑とは……

 そのころサンドラフトビール本社の20F会議室では、経営企画部長兼IT企画推進室長の名間瀬がCIO兼IT企画部長の佐藤と向かい合って、来期の事業計画について話し合っていた。

名間瀬 「以上が来期の計画になります」

佐藤 「分かった。ありがとう」

名間瀬 「それともう1つ……。例の再構築プロジェクトの件ですが……。いまの時点ではどのくらいの規模になるか分からないため、予算計上が非常に難しい状況です」

佐藤 「あぁ、そのことなら気にしなくていい。西田さんの了解を取り付けてある」

名間瀬 「え、副社長のですか!?」

佐藤 「ただし、リリースは1年後だ。これは厳守してもらう」

名間瀬 「えぇ! 1年後ですか。それはいくらなんでも無理ですよ」

佐藤 「君も知ってのとおり、われわれの業界はいま転換期に来ている。昨年5月に施行された酒税法の改正で、いわゆる第3のビールといわれている『その他の醸造酒』の税率が上がってしまった。つまり従来の発泡酒との区別が値段的に付けにくい状況になっている。そのためにはビールも含めて品質を上げるとともに、配送や在庫コストを含めたトータルな生産コストの削減が必須になってきているんだ。その点、今回のプロジェクトが成功すれば大幅な効果をもたらすと思っている」

 佐藤は続ける。

佐藤 「それに……。現社長は来期で引退といううわさがある。西田さんとしては多少投資をしてでも、実績が欲しいところだろう」

名間瀬 「1年後のリリースは……。後継ポスト争いのためでもある、ということですか……」

佐藤 「いや、君は知らなくていいことだよ」

 佐藤はそういうと、名間瀬に背を向け、外の夕日を眺めた。その背中には声を掛けられないオーラが漂っていた。

 そんな佐藤の背中に、名間瀬は今回のプロジェクトの裏にある何かに巻き込まれている自分に寒気を感じていた。

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