連載
» 2007年06月12日 12時00分 公開

捜査の技術10カ条を振り返る―捜査技術を実践しよう!ビジネス刑事の捜査技術(16)(1/2 ページ)

本連載では、これまで元警察勤務の筆者が捜査技術をビジネスに生かすための10カ条をそれぞれ解説してきた。今回は、最終回としてこれまでの10カ条を振り返り、そのポイントや実践する際の注意点を説明する。

[杉浦司,杉浦システムコンサルティング,Inc]

捜査の技術を再考する―最初は大胆に、最後は緻密(ちみつ)に

 さて、この連載も今回で最終回を迎えることとなった。

 筆者が警察組織に勤務していた経験を生かし、「捜査技術という考え方をビジネスに持ち込みたい」と考えたのがこの連載の動機だったのだが、執筆を進めていくうちに自分自身で気が付いたことは、ビジネスの世界で成功している人たちは皆、意識するしないにかかわらず、捜査の技術を駆使していることが結構あるということだ。

 営業成績の良いセールスマンや、プロジェクトをいつも成功させるプロジェクトマネージャ、顧客評価がいつも高いデザイナーやエンジニアなど、職種、業種に関係なく“プロフェッショナル”と呼べる人たちに共通していることは、その仕事ぶりに計画性があることと、失敗を生かして成長し続けていることだ。ここで着目すべきことは、彼らは目標をしっかりと持っており、その目標のための実現プランを立てて、目標を達成できるまでそのプランを修正し続けているという点だ。

 捜査技術の視点からいうと、目標達成のための計画というものを、アバウトでもいいから持つことが大変重要なことなのである。綿密なプランを初回限りで策定し、後はただ実行するのみという人と比べると、最初は夢みたいなプランを描いているだけの人であっても、実行後の結果を反省してプランを修正していける人が、最期にその目標を勝ち取っていける。

「最初は大胆に、最後は緻密(ちみつ)に」

 捜査の技術を総括すると、こういうことになるのかもしれない。

捜査の技術10カ条を振り返る

 前回までご紹介してきた捜査の技術の第1条から第10条について、まずは前半部分の第1条から第5条までを振り返ってみることにしよう。

1. ターゲット定義こそ肝心

 不合理な思い込みに縛られ、大事な前提条件を見落としたままで、捜し物が首尾よく見つかることを期待する方がおかしい。捜査の技術の第1条は、「ターゲット定義こそ肝心である」だ。短気な人はすぐに探しに出ようとするが、行動の前にまずは作戦会議を開くことが重要だ。

 探したいものは何なのかについて、しっかりとした定義ができる前に歩き回っても、徒労に終わるだけである。捜し物が何かについてあいまいさが残っていないか、人によってイメージするものが違っていないか、偏った思い込みに縛られていないか、などについて事前に確認しておくことが必要なのである。

2. 感情移入ができない人に捜査はできない

 捜査がうまい人は、相手の立場で物事を考えることができる人でもある。捜し出したいものが人でなく物であっても、その物の気持ちになって考えてみることが必要だ。

 そして、ターゲットとする顧客が求めている価値を徹底的に分析することによって、顧客を獲得するソリューションセリングは、ビジネス刑事の捜査技術の典型的な例であるともお伝えした。

3. 手に入れられる手掛かりには労力を惜しまない

 ターゲットを定義し、そのニーズを知るためには、手掛かりを探し回ることが必要である。しかし、せっかく、顧客がシグナルを発信しているにもかかわらず、気付こうとしない人も多い。

 手掛かりは探し回らなくても、すでにアンケートや営業日報などに残されている場合もある。資料収集という地味な作業は、捜査の技術上、大変重要な役割を担っている。

4. 仮説と廃棄の繰り返しが真実へと接近させる

 仮説の設定と廃棄の繰り返しが真実へと接近させる。何の考えもなしにやみくもに探し回っても成果は期待できない。うまく探し出すためには、手当たり次第、探し回るのではなく、あり得る選択候補を洗い出して、可能性の高いものから当たっていくことが必要である。

 可能性が高いと思うものを正解として置いてみて、周りの状況と適合するか検証し、満足できなければ次に可能性の高いと思うものを試してみるという、仮説の設定と廃棄の繰り返しが真実へと接近させていくことになる。

5. 足元を固める情報収集活動がターゲット像を絞り込ませる

 地道に足元を固める情報収集活動によって蓄積されたデータからパターン分析することによって、ターゲット像を絞り込むことができる。

 捜査官であっても天気予報官であっても、捜査や予報のためには、継続的な観測収集こそ重要な活動と考えている点では同じである。平和な日常における日記や測定があるからこそ、異常や特異性に気が付くことができるのである。

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