やる気のない日本人上司に失望しました現地からお届け!中国オフショア最新事情(9)(2/3 ページ)

» 2007年09月12日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]

やる気のない上司に失望したら、無駄な努力をせず転職すべきか

 このケースでは、日本滞在1年目の中国人と日本人の上司が対立しています。どの会社でも起こるよくある人事への不満といえばそれまでですが、対立の根底には日本と中国の文化的相違が見え隠れしています。

 相談内容を一見すると、一方的に日本人上司が悪く、相談者の中国人はかわいそう、といった構造にも読み取れます。ところが一概にそうとも限りません。会社の規律を重んじ、あいまいさを許容して間接的なコミュニケーションを好む日本人と、自分の可能性を信じて率直さと直接的なコミュニケーションを好む中国人の性質の差が、対立を生んだ原因かもしれないのです。

 まずは、筆者が主宰するオフショア開発メールマガジン読者のご意見に耳を傾けてみましょう。

質問:日本企業で働く中国人です。日中の懸け橋となるべく一生懸命ですが、最近はやる気のない日本人上司に失望しました。



 前出の相談について、筆者が主宰するオフショア開発フォーラムでも議論を交わしました。ここでは、代表的なご意見をいくつか紹介します。

【助言1】上司に再アタックせよ(中国人)

 私も過去に同じような経験がありましたので共感します。私なら次の方法で問題解決の糸口を探ります。

 第1に、まず上司に再度相談を持ち掛けます。会社のやり方の問題や自分の心配などを説明して、納得してもらいます。ポイントは「納得」であり、「説得」ではありません。他社の失敗例を挙げて、このやり方の危険な側面を理解してもらいます。上司を厳しく問いただしても煙たがられるのがオチです。この際のコミュニケーション方法には十分に注意する必要があります。

 第2に自分の仕事の担当範囲をきっちりこなすこと。上司を納得させるには、自分の仕事で成果を出すことです。いまの仕事で実績を残せば、周囲が次第に自分のやり方を認めてくれます。そうすれば上司だって、いままでのマズいやり方に気が付いて、改善する意欲がわいてくるかもしれません。

 第3は自分の出番がいつ回ってきてもいいように、技術力をピカピカに磨いておくことです。相談者の会社では、中国展開が失敗する可能性が高いと思います。本当に会社を愛しているなら、失敗した後に備えて常に準備しておきましょう。そして、もし自分に出番が回ってきたら、そこで思う存分に実力を発揮しましょう。それでも駄目なら、最終手段に移ります。第4の「転職」です。

【助言2】修身斉家治国平天下(日本人)

 前出の【助言1】を受けての発言です。【助言1】の方のアドバイスは、中国式の考えだろうと思います。しかし、私は4番目は一応保留しておいて、3番目から着手して対応していけばよいと思います。

 つまり、3番目ができれば2番目へ進み、さらにうまくいけば、1番目へ行くことをお勧めしたいと思います。「修身斉家治国平天下」の実践ではないでしょうか。

ALT 上海中心街には、高級ブランドショップが並び賑わっている

 本題に戻すと、まずあなの会社の中国展開の真意を究明する必要があるでしょう。トップは大志を抱いているかもしれませんが、下の実行層に至ると歪曲(わいきょく)されてしまうケースが多く見受けられます。それなら、トップにまで進言してみたらいかがでしょうか?

 「失敗しても転職するまでだ」ときちんと覚悟しておけば、社長直訴もできると思います。

 日本企業の社風はやはり、中国企業とは違った光景だと思います。平社員である立場では会社の雰囲気を一変させるなんて、到底非現実的だと分かってください。つまり、現実と直面しながら、できる範囲で自分なりの地道な努力をしてみませんか。よくいわれている話ですが、現実を変更できる力を持てるまでは現実に順応するしかないと思われます。

【助言3】個人の頑張りだけでは限界あり(日本人)

 私も同じような経験をしたことがありますので、それを基に書きたいと思います。まずトップがいくらやる気に満ちていても、現場責任者や経営層が真剣に考えていない場合、いくらやっても無駄に終わることが多いです。

 またトップに直接伝えたとしても、その周りの人々が保守派ばかりだと意見をつぶされてしまいます。考え方を変えるという案もありますが、残念ながら人の考え方というのは早々変わるものではないと実感しております。

 また、オンサイト開発は個人の頑張りでもなんとかなりますが、オフショア開発は会社全体として、やれなければ到底うまくいきません。私も最初は個人でなんとかしてやろうという気概がありましたが、最終的には自分の無力さを感じるだけでした。

 よって個人的な意見として現状を変えるには、現実として以下どちらかの選択肢しかないのではないかと思っています。

・責任者交代(オフショア開発推進を考えており、社内外に強く発言できる人が望ましい)

・自分が転職する

 ただし、いきなり転職はあり得ませんので、まずは現状に慣れながら自分がやれる範囲で作業をすることでしょうか。そして転職を見据えながら実力を身に付けることが大事だと思います。実力が身に付けば、社内でも意見が通ることが多くなるでしょうし、その間に状況が変わっているかもしれません(責任者交代など)。それでもダメなら転職でよいと思います。

 話を読む限りでは、典型的なオフショア推進失敗例に見えるので、いまのままでいけばオフショア撤退もあり得るかもしれません。

 その場合、相談者の方がオフショアにこだわるのであれば転職は必然でしょうし、そのためにも事前に転職を一考しておくのは悪くないと思います。

 最後に相談者の方は現場が新人ばかりであることを心配されていますが、トップ、経営層、そして現場責任者の考え方がしっかりしていれば、新人だけでもそう失敗することはありません。

 私は現在小さな会社で作業をしており、周りは未経験者ばかりですが、会社全体がオフショア推進に前向きであるため、以前よりものすごく作業がやりやすい環境だと実感しております。ですから周りが未経験者だということは心配することはないと思います。

【助言4】経営幹部に直訴せよ(日本人)

上策=経営幹部に直訴する

 どうせやるなら、日本文化・日本社会に思い切り踏み込んでみるべきです。

中策=上司に再アタックする

 これによって、上司が目覚めてくれたら、恐らく最大級の信頼関係が築けるだろうし、ひょっとすれば上司もそうした忠告を「1人寂しく期待している」可能性もあるでしょう。

下策=社内で協力者を見つけて草の根運動する

 社内の雰囲気を悪くするし、日本人が嫌がる分派主義として批判されるだけで、本人へのマイナスしか残らないでしょう。つまり、うまくいく可能性が高くないと思います。

検討外=無駄な努力はしない、転職する

【助言5】夜のカラオケ、特に問題なし(中国人)

 私の周りも、夜のカラオケが目的で中国に出張します。しかし、昼の仕事の励みになり、気分転換にもなるのならよいのではないでしょうか? 最初は、夜の楽しみのために出張を計画しているとしても、次の開発につながれば、あなたが活躍する機会も多くなるのではないでしょうか。

 経験の浅い日本人が現地駐在することも、個人的にはそんなに違和感を覚えません。確かに行間を読むとへ理屈っぽい理由ですが、そもそも会社の権限であり、たとえ中国人の私たちが感じることができなくても、Aさんは何かの優れる才能(性格とか?)を持っているかもしれません。


 今回掲載した意見は、オフショア開発フォーラムで議論したうちの3分の1程度です。ほかにも、オフショア無気力組への対処法について、膨大なご意見が寄せられました。この場を借りて、あらためてお礼を申し上げます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ