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» 2008年01月25日 12時00分 公開

実践! UMLビジネスモデリング(8):ビジネスモデルは優れた組織あってのもの (1/2)

いくら優れたビジネスモデルが定義できても、会社組織がそれに適応できなければビジネスモデリングの効果は望めない。ビジネスモデルと同じく、組織も見える化と洗練が必要な場合がある。

[内田功志,システムビューロ]

組織がビジネスの成長を妨げていないか?

 前回までに、To beなビジネスモデルからビジネスにとって有効なシステムを導き出し、さらにそれを運用した結果を評価する方法を解説してきました。実際はこれで終わりでなく、評価した結果を基にビジネスモデルやシステムをさらに洗練し、実装・運用し、その結果を評価する……、というPDCAサイクルを回し続けることによって、ビジネスを成長させていくのです。

 こうしてビジネスが成長し、その規模が拡大してくると、それに伴い会社の組織も肥大化・複雑化してきます。すると、組織の非効率性がビジネスの成長を妨げる場面も出てきます。それを避けるためには、組織の状態や振る舞いを分析し、現状(As is)の組織をあるべき姿(To be)の組織へと洗練させていくことが求められます。

 今回は、これまでと同じく洋菓子店をケーススタディに、このように組織を洗練させていくためのビジネスモデリング手法を解説していきたいと思います。

組織を見える化する

 老夫婦2人で始めた小さな洋菓子店も、ビジネスモデルとシステムの洗練・実行・評価を繰り返し実践することで、5年後にはそれなりの規模の会社に成長しました。支店の数も12店舗にまで増え、それに伴い本社の規模も大きくなりました。しかし、このビジネス規模の拡大が新たな問題を生み始めています。

 その問題とは、会社組織がバラバラで統制が取れなくなってきたということです。開店後しばらくは気の合った者同士のあうんの呼吸で何とかなっていたのですが、会社の規模が拡大してくると、あうんの呼吸だけではどうにも業務が回らなくなってきました。

 そこで、ビジネスモデリングの一環である「組織の洗練」を実施することにより、会社組織に関するこれらの問題を解決できないか、検討してみましょう。

初期の洋菓子店の組織モデル

 まずは、会社組織がいまほど大きくなる以前の「初期の」組織を見える化してみます。

 ビジネスモデリングで組織を見える化するには、UMLの実装図を使用します。例えば、会社組織の本社・支店・事業所などの配置は、実装図の「ノード」という要素を使って表現します(なお、UMLの表記法については本稿では解説を行いませんので、詳細について知りたい方は以下の記事などを参考にしてください)。

参考記事
連載:UML BASIC LECTURE(@IT情報マネジメント)
連載:Visioで始めるUMLモデリング(@IT Insider.NETフォーラム)
連載:【改訂版】初歩のUML(@IT情報マネジメント)

 下図は、洋菓子店の初期の組織の配置をノードで表現したものです(図1)。当初は、本店と駅前仮設店の2店舗のみを運営していました。

ALT 図1 洋菓子店の初期の配置モデル

 今度は、組織内部の部署や部門を見える化します。これには、UML実装図の「組織ユニット」を使用します。下図は、洋菓子店の初期の組織の部署・部門を組織ユニットを使って定義したものです(図2)。

ALT 図2 洋菓子店の初期の組織構造モデル

 初期の段階では組織といっても従業員数が限られていたために、部門というよりは役割に近い組織構造になっていました。総務部門は仕入れや経理処理、パートやアルバイトなどを管理する人事処理などの役割を担っていました。製造部門は洋菓子の製造を、販売部門は洋菓子の販売を行う役割となっていました。

 さらに、各部署にどのような役割を持った人が所属しているかを見える化することができます。洋菓子店の製造部門にはパティシエが、販売部門には店長と店員1人が所属していましたが、これを定義すると下図のようになります(図3)。

ALT 図3 洋菓子店の初期の組織構成

 最終的に、配置モデルと組織構成を組み合わせて以下のような組織モデルが完成しました。

ALT 図4 洋菓子店の初期の組織モデル

 この図を見る限り、洋菓子店の初期の組織モデルは非常にシンプルに効率良くできており、特に問題はなさそうです。

現状の洋菓子店の組織モデル

 さて、現在は支店の数が都内だけでも12店舗、神奈川に4店舗、埼玉に3店舗、千葉に2店舗にまで増えています。このうち8店舗が直営店で、販売する洋菓子は工場から直接納められています。それ以外の店舗はフランチャイズ(FC)店で、各店舗で洋菓子の製造・販売を行っています。

 では、先ほど初期の組織の見える化を行った際と同じ手順で、現在の組織の見える化を行ってみましょう。まず、現在の組織の配置モデルは以下のようになります(図5)。

ALT 図5 現在の洋菓子メーカーの配置モデル

 初期の組織の配置モデル(図1)と比べると、組織全体がかなり複雑になっていることが一目瞭然です。従って、この複雑な組織をどのように効率良く管理していくかが課題になりそうです。

 組織全体の管理は、本社が一括して行っています。そこで、まずは本社の組織を見える化して、本社の各部門がどのように会社全体の管理を行っているのかを分析します。

 現在、本社は以下のような組織モデルになっています。

ALT 図6 本社の組織モデル

 本社は、取締役会・企画部・総務部・販売促進部・資材部・製造管理部の各部門に分かれています。上図では各部門間の関係が表現されているとともに、本社外の各店舗や工場との関係も定義されています。

 部門間の関係は、各部門で行われる活動と他部門の活動との間の「依存関係」を、UMLの表記法に則り破線矢印で表しています。例えば、各部門は取締役会の決定に依存していますし、製造管理部は資材部の調達活動に依存しています。一方、工場や販売店と本社の各部門との関係も同じく、本社部門が工場や販売店を「使う」ことにより、工場や販売店に依存していると表現されます。

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