ビジネスモデルは優れた組織あってのもの実践! UMLビジネスモデリング(8)(2/2 ページ)

» 2008年01月25日 12時00分 公開
[内田功志,システムビューロ]
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組織モデルを洗練する

 現状の組織を見える化したら、今度はそれを分析し、組織のどの部分に問題があるのかを検討します。ケーススタディの洋菓子店の場合は、図6の組織モデルにあるとおり、販売促進部が各店舗を管理する役割を担っています。しかし、現実には販売促進部は各店舗の実情を十分に把握しておらず、売上高の管理程度にとどまっています。

 また、本社の製造管理部は、資材部が調達した材料を工場に供給しています。工場で製造された洋菓子は、直営店に直接納入されます。一方、フランチャイズ店は自前で洋菓子を製造しているため、いまだに個々の店で独自に材料管理を行っています。これは、業務の効率化という面でも、食材の管理という意味でも、見直す必要がありそうです。

 このようにAs isの組織を見える化し、それを基にTo beな組織を検討した結果、本社の製造管理部がフランチャイズ店の材料仕入業務の計画・実行・調整などを直接管理することにしました。以下はそれを表現した組織モデルです(図7)。

ALT 図7 製造管理部とフランチャイズ店

組織の洗練からビジネスモデルの洗練へ

 洋菓子店の本社の組織が変更されるに伴い、販売店側の組織も影響を受ける可能性があります。従って、販売店の組織も詳細に検討する必要が出てきます。

 まずは、販売店の現状の組織を見える化してみましょう。

販売店の組織の見える化と洗練

 直営店は販売のみを行うため、組織内には販売部門のみを有します。一方、フランチャイズ店は販売と製造の両方を行います。そのため、総務・販売・製造の各部門があります。

 これを図で表したのが、以下の組織モデルです(図8)。

ALT 図8 販売店の組織モデル

 フランチャイズ店の組織モデルは、洋菓子店本体の初期の組織モデルと同じ構成であることが分かります(図2)。以下に示した組織構成も同様です(図9)。製造部門にはパティシエが、販売部門には店長と店員が属しており、洋菓子店本体の初期の組織構成と同じです(図3)。

ALT 図9 フランチャイズ店の組織構成

組織の洗練をビジネスモデルやシステムに反映

 販売店の組織を見える化した結果、フランチャイズ店は洋菓子店の初期の組織と同じ組織モデルであることが分かりました。よってここでは、フランチャイズ店の製造計画・管理のビジネスモデルも初期の組織のものと同じであるとします。それを見える化したビジネス設計シーケンス図やビジネス設計クラス図は、連載第6回でビジネスユースケース「計画を立てる」のために作成したものと同じになります。以下にそれらを示します(図10、11)。

ALT 図10 現状の「計画を立てる」ビジネス設計シーケンス図
ALT 図11 現状の「計画を立てる」ビジネス設計クラス図

 今回、組織の見える化を行った結果、フランチャイズ店がこれまで自前で独自に行っていた仕入れ業務を、本社で一括して管理・実施するよう変更することにしました。従って、上記のビジネス設計シーケンス図には本社の「資材システム」がアクタとして加わり、各フランチャイズ店の材料管理システムから依頼を受けて材料の仕入れを一手に担うことになります(図12)。

ALT 図12 変更後の「計画を立てる」ビジネス設計シーケンス図クリック >> 拡大

 本社の資材システムですべての販売店の材料を一括発注することにより、仕入れ業務に関する煩雑さの軽減と、一括大量発注で生じる値引きによるコスト削減を実現することができます。

 ビジネス設計シーケンス図が変更されたので、当然ビジネス設計クラス図も以下のように変更する必要があります。

ALT 図13 変更後の「計画を立てる」ビジネス設計クラス図

 以上で見てきたように、As isの組織を見える化し、To beな組織へと洗練させた結果、システムに関するモデルも影響を受けることがあるのです。

 あるいは、その逆のケースもあります。システムやそれを含めたビジネスモデルを変更することで、組織を組み替える必要が生じることもあります。

有効な組織あってのビジネスモデル

 本来、ビジネスモデルをよりスムーズに実現するために作り上げたはずの組織が、いつの間にか逆にボトルネックになってしまっているようなケースは、決して珍しくありません。従って、ビジネスモデルを作成・洗練する場合は、ビジネスモデルそのものだけでなく、それを実現するための組織も含めて十分に検討する必要があります。

 どんなに素晴らしいビジネスモデルも、組織が有効に機能しなければ単なる机上の空論にすぎないのです。

筆者プロフィール

内田 功志(うちだ いさし)

システムビューロ 代表。日立系のシステムハウスで筑波博に出展した空気圧ロボットのメインプログラマを務め、富士ゼロックス情報システムにてオブジェクト指向の風に触れ、C++を駆使して印刷業界向けのシステムを中心に多数のシステムを開発。現在、ITコンサルタントとして、システムの最適化や開発の効率化などの技術面、特にオブジェクト指向開発に関するコンサルティングやセミナーを実施してきた。最近ではビジネスに即したシステム化のコンサルティングを中心に活動している。


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