システムに愛情を注いでいますか?目指せ! ネット時代の幸せな管理者(6)(2/2 ページ)

» 2008年01月30日 12時00分 公開
[川村 聖一,@IT]
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 現場視察するときには、

  1. 作業環境として現場は整っているのか
  2. 緊急事態に迅速に対応できるか
  3. 今すでに設置されているものは「正しく」構築されているか?(勘違いされがちですが、間違っているのは現場でなくて管理表です。管理表はただの「紙」です。実際に動いているものが「神」です)(勘違いされがちですが、間違っているのは現場でなくて管理表です。管理表はただの「紙」です。実際に動いているものが「神」です)
  4. 今ここで動いている装置は、異常を起こす気配はないか?

 この4つを考慮しながら現場視察をするとよいと思います。

 普段事務所で過ごす時間が多い人や、現地作業者と設計者が異なる組織の方には特にお勧めします。特に用事がなくても現場には定期的に行くべきです。障害の未然の防止、障害復旧時間の短縮、システム拡張の必要性の確認などメリットは大きいです。参考までに幾つかのチェックポイントを、ラック実装に見立てて書いておきます(下図)。

ALT システムの現地視察の際にチェックすべきポイント

リソースを目視する

 サーバやネットワーク機器を構築する際、まず装置の監視を設定します。このとき監視システムに任せて、安心してしまうケースをよく見掛けますが、これは誤りです。監視システムは一定の閾(しきい)値になると知らせてくれますが、それ以外は多くを語ってくれません。定期的に見て様子を伺わないと分からないことはたくさんあります。例えば、最も混雑している時間帯と最も空いている時間帯とのギャップの推移はどう考えても監視システムに任せるのは難しいし、監視化したところで特に何か期待できるものはありません。では、なぜ目視するメリットがあるのでしょうか?

 最も大きな理由は、機械は数値しか理解しないけれども、人間は直感で何かを感じ取る力を持っているからです。

 数値の急増や急減に対して人間は「何でだろう?」という考えが働きますが、機械にそれはありません。ある一定の値を迎えると「びー」とアラームを出すだけです。定期的に自分のシステムのリソースと向き合うことで、表面化していない問題に気付き、対応に十分な時間を得られます。

 商用で販売されている装置やソフトウェアにはそれぞれ特有のリソース管理画面が付いています。ネットワークであればcactiなどのツールを使ってSNMPでインターフェイスのトラフィックを取得し、グラフ化できます。私自身がよく見ているのは、リモートアクセスシステムのログイン数です。装置が時間ごとのログイン数を記録してくれるので、これを定期的に見ています。

 1年くらいで、いつごろメンテナンスをすると最も影響が少ないのか、このシステムはどのユーザーにとってクリティカルでどのユーザーにとってクリティカルでないのか、利用者が怪しい行動を起こしていないか、といったことが何となく見えてきます。長い間にらめっこしていると、自分が見えていないものが何なのかも理解できます。そこまでくると、今のシステムでは不十分な部分を、バージョンアップや次のシステム追加開発におけるアクションアイテムに含めればいいわけです。

 今回は当たり前のようで、意外に定期的にやらなそうな項目を取り上げてみました。とても人間的でしたよね? 具体的な数値やコマンドを紹介しないのは、ポイントは数値やコマンドではなく、「愛情」だからです。このような人間的な行動を大切にすることは、風化しないシステム管理現場を作るためには大切です。

 何かが起きてから、対応するのではすべて後追いになってしまいます。そうならないための努力がシステム管理の真髄です。

 こうした新たな視点で「メンテナンス努力」を再考していただけると幸いです。

著者紹介

▼著者名 川村 聖一

2001年 日本電気株式会社入社。キャリア営業、法人顧客SEに従事。

2004年 同社ISP部門へ異動。ISPネットワーク設計・構築、新技術導入、ISMS取得に従事。

2006年 NECビッグローブ株式会社へ出向。法人向けアウトソースサービスのコンサルティング・設計・運用を担当。Internet Weekプログラム委員。

2007年 JANOG運営委員として活動。

▼著者名 仲西 亮子

2000年 三井情報開発株式会社(現:三井情報株式会社)入社。

2000年 外資系ISPの技術部へ出向、IPアドレス管理やドメイン名管理業務に従事の後、同社iDCのバックボーン運用業務従事。

2002年 三井情報開発株式会社でiDC事業開始と共に出向解除。同社でASの管理・運用業務に従事。

2005年 同社のiDC事業部がMKIネットワーク・ソリューション株式会社として子会社化。これに伴い、MKIネットワーク・ソリューションズ株式会社へ出向、現在に至る。

2007年 JANOG運営委員として活動。

▼著者名 山崎 佑司

1999年 ソニーシステムデザイン株式会社(現:ソニーグローバルソリューションズ株式会社)入社。ソニー本社をはじめとした、大規模エンタープライズネットワークの設計、構築、運用を担当。

2001年 ソニーグループのショールームや、ソニーグループが主催する各種イベントにおけるネットワークシステムの企画、設計、構築、運営を手掛ける。

2003年 ソニーグループiDCのネットワーク運用業務に従事。データセンターインフラの設計、構築等の業務を行う。

2006年 テオーリアコミュニケーションズ株式会社入社。システムインテグレーション全般を担当する。

2007年 JANOG運営委員として活動。


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