誤解その8:非上場の取引先も内部統制の整備が必要か | |
誤解 | 上場会社と取引すると、非上場会社でも内部統制を整備・評価しなければならない |
回答 | 上場会社と取引があることをもって、内部統制の整備等を求められることはない |
(具体例) | |
○取引先(委託業務の委託先を除く) |
上記をよく読むと、「非上場会社は、上場会社の重要なプロセスを受託している場合には、評価の対象にしなければならない」となってしまう。
誤解その9:プロジェクトチーム等がないと問題か | |
誤解 | 内部統制報告制度に対応するためのプロジェクトチームがない場合や専門の担当者がいない場合は、問題(重要な欠陥)である |
回答 | 内部統制報告制度への対応については、既設の部署等を活用で可。必ずしもプロジェクトチームや専門の担当者を置くことは不要 |
(具体例) | |
○既設の部署の活用 |
この点について、導入企業側も特に誤解はしていなかったと思う。
誤解その10:適用日までに準備を完了する必要があるのか | |
誤解 | 平成20年4月から内部統制報告制度が適用されるので、もう間に合わない |
回答 | 内部統制はプロセスであり、問題点があれば、その都度、是正していくことが重要 |
(具体例) | |
○報告書の提出期限 |
「平成20年4月以降に決算を迎える決算期から適用」と書かれており、この点についても誤解はないと思う。
誤解その11:期末のシステム変更等は延期が必要か | |
誤解 | 内部統制の評価のために、期末に予定していたシステム変更や合併等の再編を延期しなければならない |
回答 | 予定を変更せず、そのまま実施しても、内部統制は有効 |
(具体例) | |
○期間内に十分な評価手続を実施できないとしても、経営者は「やむを得ない事情」によるものとし、評価範囲から除外して、内部統制の評価が可能。 |
システムの対象プロセスが評価対象となっている場合は、期末でのシステム変更はオペレーション上の混乱が予想されるため、時期をずらす方がよい。
こうしてみると、全体を通してビックリするような内容はないし、誰に聞いても「いまさら何言ってんだ!」という反応はうなずける。「Too little, too late !」とよくいわれることを地でいっている感じだ。
4番のところで、「上場会社のみが対象、かつ、企業の規模・特性などの中小企業の実態を踏まえた簡素な仕組みを正面から容認」とあるが、中小企業のための簡素な取り組みをもっと具体的に出してほしかった。
「モニタリングの方法」や「専門家の利用」は大企業でも行われていることであるし、何らの新鮮味に欠ける。米国でさえ、中小企業のためのガイドラインができていて、しかも、適用猶予が与えられていたくらいなのに。日本でこのまま突っ走るとすると、中小企業から脱落組が出ることは火を見るよりも明らかだ。
それから、6番のところであるが、金融庁は「企業には甘く、監査法人には厳しく」いっているきらいがある。これでは、結局企業は“そうでなくとも保守的に解釈する”監査法人のいう通りにやらざるを得なくなる。
少なくとも、「ほとんど対応が取れていない中小企業向けのガイドライン」をいまから出しても遅すぎることはないのではなかろうか!
鈴木 英夫(すずき ひでお)
慶應義塾大学経済学部卒業、外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務める。
2004年から、同社のSOX法対応プロジェクトコーディネータ。現在は、フリーのSOX法・日本版SOX法コンサルタント。プランナー・オブ・リスクマネジメント、内部監査士。神戸商工会議所登録エキスパート。
著書:「図解日本版SOX法」(同友館、共著)
近著:「日本版SOX法実践コーチ」(同友館、共著)
連絡先: ai-risk330@jttk.zaq.ne.jp
Webサイト:http://spinel3.myftp.org/hideo/ai-risk.htm
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