CIOは、ITをものにすべく努めよ進化するCIO像(7)(3/3 ページ)

» 2009年03月16日 12時00分 公開
[碓井誠(フューチャーアーキテクト),@IT]
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ネットワーク効果で「ITをものにする」

 「ITをものにする」、すなわちIT活用の成果を上げるための、もう1つの大きなポイントは、ネットワーク技術をものにすることである。ここでもセブン-イレブンはキャリアやメーカーとのパートナーシップで大きな効果を上げてきた。

 例えば1991年には、ISDNで店舗の商品マスタやPOSデータのオンライン集配信を実現した。それまで、2400bpsの公衆回線の性能とコストではオンライン化できないデータはフロッピーディスクで集配していたが、この物流のオンライン化を実現した。このことは、小さな店舗でも利用可能なネットワークサービスの道を開き、幅広くローコストなネットワーク活用を浸透させる発端となった。これも当時、ISDNサービスが伸び悩んていた中で、セブン-イレブンの強い要請を受け、サービス拡大へと方針を転換してくれたNTTとのパートナーシップの成果でもある。

 また、1997年にはNECとのパートナーシップにより、マルチメディア通信のための衛星通信システムの開発を実現した。さらに2005年には、NTTコミュニケーションズより光ブロードバンドのサービス提供を受けている。

 こうしたネットワーク機能の拡充により、店舗のマルチメディアデータ、POSデータ、発注データなどに加え、ATMやeコマース、チケットサービスなどのデータも統合し、最終的には拡充以前に比べて約30%のコストダウンを実現した。

 なお、このネットワークサービスは、最低速度保証1Mbps、実効10Mbps以上の光専用線にバックアップ用のISDNをバンドルして、動画のストリーミングに対応するマルチキャスト機能を組み込んだ独自仕様のネットワークサービスとなっている。いまやネットワークも独自にデザインできる時代となっているのだ。

 表2に2004年までの衛星+ISDN+専用線(ATM用)で構成したネットワークと、現在の光ブロードバンドネットワークとの比較をまとめた。このサービスの実現には、NTTコミュニケーションズとの3年以上に及ぶニーズとシーズのすり合せと交渉があった。そのほかのキャリアの検討もあったが、最終的にはNTTコミュニケーションズが、NTTよりダークファイバーを借り上げ、自ら設備投資を行ってインフラ整備のリスクを負ってくれた。このサービスも、いまではサービス帯域を広げ、幅広く活用されるに至っている。

ネットワークも拡充し、コスト削減とともに店舗運営の利便性を高めた 表2 ネットワークにおいてもISDN、光ブロードバンドの採用と、常に革新的な取り組みを行ってきた。こうしたチャレンジにより、セブン-イレブンがメリットを享受するだけにとどまらず、パートナー企業、さらには社会一般のユーザーにも間接的に好影響が及んでいる点がポイントだ(クリックで拡大)

 さて、今回はシステムとネットワークという2つの事例を取り上げたが、ITの発展はこうしたニーズとシーズのぶつかり合いの中で、よりサービスレベルの高い技術へと成長していく。

 CIOはこうした流れを自らのものとし、「ITをものにする」取り組みに注力する必要がある。そのためにも“シェフ”たるCIOは、事業分野や業務領域ごとに、和食やフレンチ、イタリアンのシェフを育て、IT専門分野でもパティシエやソムリエの育成に取り組むことが重要である。

著者紹介

碓井 誠(うすい まこと)

1978年セブン-イレブン・ジャパン入社。業務プロセスの組立てと一体となったシステム構築に携わり、SCM、DCMの全体領域の一体改革を推進した。同時に、米セブン-イレブンの再建やATM事業、eコマース事業などを手掛けた経験も持つ。2000年、常務取締役システム本部長に就任。その後、2004年にフューチャーシステムコンサルティング(現フューチャーアーキテクト)取締役副社長に就任(現職)。2005年には上海用友幅馳信息諮詢有限公司、副董事長に就任(兼務)。実務家として、幅広い業界にソリューションを提案し、その推進を支援しているほか、各種CIO団体での支援活動に努めている。また、産官学が連携した、サービス産業における生産性向上の活動でも各種の委員会活動や、独立行政法人産業技術総合研究所、研究顧問(サービス工学研究センター)を務めるなどIT活用による業務革新とCIOの在り方をメインテーマに、多方面で活動を行っている。


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