いまさら追加された「内部統制Q&A」のポイントSOX法コンサルタントの憂い(14)(3/4 ページ)

» 2009年05月13日 12時00分 公開
[鈴木 英夫,@IT]

重要な事業拠点の選定が一定割合に達しない場合の取扱いなど

【問74】業績悪化などにより重要な事業拠点の選定指標が一定の割合に達しないなどの場合の取扱い

(問74) 評価範囲については監査人と協議し、前年度の連結ベースの売上高を基本に当期の業績予想も踏まえて決定することとしている。重要な事業拠点として選定されている親会社の業績悪化や期中の大幅な為替変動などの結果、期末日時点において、当初の評価範囲とした事業拠点の売上高などの合計が一定割合(おおむね2/3)に達しなくなる場合には、売上高の2/3に達するまで、評価対象に新たな事業拠点(子会社)を加えなければならないのか。

 また、仮にこのような事情に基づいて、新たに評価対象に加えた事業拠点の内部統制の一部について、十分な評価手続きを実施できない場合には、「やむを得ない事情」に該当すると考えてよいか。

 反対に、連結グループ全体の売上高が減少したことにより、当初の評価範囲とした重要な事業拠点の売上高などの合計が80%になってしまったが、おおむね2/3程度になるまで重要な事業拠点の主要な勘定科目に係る業務プロセスを絞り込んでもよいか。

(答え抜粋) 1.経営者は評価範囲を決定する計画段階で、前年度の売上高なども参考にし、当期の業績予想も一定程度考慮して評価範囲を決定することが適当であると考えられる。計画段階でそうした事情も考慮して適切に評価範囲を決定しているのであれば、全社的な内部統制が有効であることを前提として、一定割合を著しく下回らない限りにおいて、選定している重要な事業拠点をもって適切な評価範囲であると判断することが可能であり、当期の内部統制の評価範囲を見直す必要はないと考えられる。

2.そのうえで、仮に一定割合を著しく下回るとして新たに評価対象に加えた事業拠点(子会社)があり、その一部について十分な評価手続きを実施できない場合、そのことをもって直ちに「やむを得ない事情」には該当しない場合があるが、その際にも、評価範囲の制約としてその内容を記載することとなる。

3.実施基準において、売上高などの一定割合(おおむね2/3)は重要な事業拠点の選定に係る指標であり、重要な事業拠点における事業目的に大きくかかわる勘定科目に至る業務プロセスについては原則としてすべてを評価の対象とするとされていることから、当該業務プロセスを絞り込むことは適切でない。

 なお、当初の評価範囲とした事業拠点の売上高などの合計額が一定割合(おおむね2/3)を超過することとなった場合、重要な事業拠点自体を一定割合まで除外することも考えられる。その際には、すでに当初の評価範囲に基づいて内部統制の整備などを実施しているものと考えられること、および当初の評価範囲の決定に際しては売上高などの指標以外の要素も勘案して決定している場合もあることから、当該超過の事実により、評価範囲の見直しをするときには、慎重に検討を行う必要がある。

◆筆者の分析

この一定割合(おおむね2/3)による重要拠点の合計は、会社により7割になるところもあれば、8割になるところもあります。上位の子会社の売り上げの減少によって、当初選定した重要拠点の割合が、例えば6割を切るような場合には、「著しく下回る」に該当するのではないでしょうか。


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