最後の難関、経営会議に挑む目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(25)(2/4 ページ)

» 2009年07月13日 12時00分 公開
[三木裕美子(シスアド達人倶楽部),@IT]

やっぱり重要だった根回し

坂口 「お忙しいところ申し訳ありません。急にお集りいただいて」

 会議室には中尾、水谷、そして天海の3人の部長に加え、坂口、名間瀬、伊東が集まっていた。あらかじめ用件は伝えていたが、部長たちは急な呼び出しに納得のいかない様子だ。

中尾 「おいー、システムは問題ないって聞いてるぞ。まさか、いまさら延期なんていい出すんじゃないだろうねぇ」

水谷 「そうですねぇ。とても気になりますねぇ」

天海 「坂口君、あなたのことは信頼しているけど、急にどうしたのよ」

 坂口は用意していた経営会議の資料を配布し、説明を始めた。

坂口 「おっしゃる通り、システム側も万全の体制を敷いて本番リリースに備えています。今日の経営会議で、正式に報告をして本番を迎える予定です。いま、お配りしたのはその経営会議で配布する資料ですが、20ページのコンティンジェンシープランについて、最終確認を取らせていただきたいと思い、急で申し訳ないのですがお集りいただいた次第です」

 坂口は続けて、コンチプランの概要および発動体制に関する確認を進める。

坂口 「コンチプランの内容は問題がないと認識しています。ただ、体制図が組織名のみで発動の権限者やルートの記載が漏れていたので気になりまして。本来でしたら担当に確認すべき事項なのですが、時間の関係もあり、部長の皆さまに直接確認をお願いします」

中尾 「内容は、もう担当から説明を受けて了解しているんだよ。うちの場合は南部本部長だね。本部定例でも説明済みだから問題ないさ」

天海 「営業本部は基本的にバックオフィスの動きに合わせるわよ。本部長の松本さんも、そのつもりだし」

 即答した2人に対し、水谷の口から出たのは連絡ルートがあいまいという不安だった。

水谷 「確かにコンチプランは説明しているし、発動についても了解はいただいているんですけどねぇ。具体的に連絡ルートとなると、当日の常務のスケジュールもあるし、常に連絡が取れる体制かは不安ですねぇ。いえね、私の思い違いかもしれないんですが、何分細かいことが気になってしまう性格で……」

 水谷の発言にそれまで黙っていた坂口が口を開いた。

坂口 「各部署とも、しっかり検討をしてくださって感謝しています。ただし、水谷部長がおっしゃったように、連絡体制が不明確なのであれば、それは問題です。システム側に何らかのトラブルがあった場合には、すぐに佐藤専務から松本専務、南部常務、下村常務に連絡を入れることにいたしますので、その旨、午後の経営会議までに両常務に説明をしていただけますか? 各本部からの連絡ルートについては皆さまの部署で再度確認をしていただき、会議資料に反映して14時までにIT企画推進室の伊東まで送付するよう、配下に指示してください」

 するとそれまで黙っていた名間瀬がこんなことをいい出した。

名間瀬 「こんな程度のことと思われるかもしれませんが、システムのリリースに対して、『準備はいくらしても、し過ぎることはない』と考えてください。今回はプレスリリースも予定されている、対外的にも重要なプロジェクトなんです。そこについてのご理解とご協力をお願いします!」

 名間瀬のプロジェクトに対する姿勢、そしてこのようなビジネスマンとしての対応が坂口が彼に信頼を置いている理由だ。

水谷 「分かったよ。すぐに部下に指示して資料送らせるから」

中尾 「念のためうちの南部さんには、再度念押しをしておくよ」

 3人の部長がそろって出ていくのを、IT企画推進室のメンバーはホッとしながら見送った。すると、最後に会議室を出た天海がふと振り返った。その視線は彼らに対する声援がこもっているような、熱くそして暖かいものだった。

※登場人物一覧へ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ