最後の難関、経営会議に挑む目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(25)(4/4 ページ)

» 2009年07月13日 12時00分 公開
[三木裕美子(シスアド達人倶楽部),@IT]
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谷田の悩めるキャリアプラン

 そのころ、松下の結婚退職を聞いた谷田は、彼女がいった言葉が頭から離れずにいた。

「君はきっといろいろな可能性を持った人だよ、自分がどうしたいのか考えてごらん、っていってもらったの。ここらで一息入れて、本当は何がしたいのか、何が自分にできるのか、ちょっと考えてみようかな、と思って。資格を取るのもいいかもね〜」

谷田 「可能性か……。自分がどうしたいのかって、いままでじっくり考えたことなかったなぁ」

 社会人になってサンドラフトサポートに入社した。坂口と出会うことでシステムアドミニストレータという役割を知り、いまはプロジェクトを通じて実感もしている。

 そんな谷田も27歳。仕事だけではなく結婚や出産も意識する年齢だ。

 ライフイベントと仕事それぞれのバランスを取りつつ、自分の能力を活用していく「ワークライフバランス」という言葉を谷田もメディアで聞いたことがある。身近には、松嶋のように仕事と家庭を両立させて活躍している者もいる。一方で、松下のように結婚を機に会社を離れて新たな道を探す者もいる。

谷田 「私の軸はどこにあるのかな。仕事? 坂口さん、それとも……」

 そう自問自答を続けながら懸命に需要予測支援システムの稼働に向けて、部署間を走り回る日々。

 福山と松下のアドバイスからヒントを得て作成したポスターの効果は徐々に浸透し、いまでは、見知らぬ社員からも「あのポスターのおかげで、自分がいままでやっていた事務作業が、どう役に立っているのか分かったよ」と言葉をかけてもらえるようになっていた。

 “システムと現場の橋渡し”はシスアドの大切な役割だ。ADとして谷田はまた少し成長を実感しつつ、やりがいを感じる日々でもあった。それは坂口とプライベートで過ごす時間とはまた違った充実感を感じていた。

谷田 「このままシスアドとして、頑張ってみたいな……」

 上級シスアドである坂口に追い付くには、まだまだ知識も経験も足りないが、いずれは坂口のようにプロジェクトもやってみたい。そして、お互いに成長していきたい。

 漠然としながらも谷田はそう思い始めていた。最近は坂口と会う機会がほとんどなかったが、メールの内容からはプロジェクトの大変さが伝わってきており、谷田も彼を気遣って会うのを控えていたのだ。

谷田 「いまは坂口さん、大変なときだけれど。でも思っていることを伝えよう!」

 そして携帯を取り出した谷田は、坂口にあててメールを送信した。

『本番まで後もう少しですね。こちらも本番に向けて準備を進めています。この仕事、大変だけれど職場の人から感謝されたり、お互いを理解したりやりがいがあると感じてます。坂口さんみたいになるには、まだまだ時間がかかるけど、いつか坂口さんのようなSDになって、一緒に頑張っていきたいです。後もう少し、体に気をつけてがんばって♪』

 メールの送信完了を見た谷田はふっと息をついた。

 サンドラフトでの本番稼働はもう目前だ。


◆次回予告◆

 本番稼働に向けた社内調整を切り抜け、遂に新システムが動き始める。リリース当日の現場を懸命にサポートするIT企画推進室のメンバーたち。そんな目まぐるしい一日が暮れるころ、豊若が坂口に声をかけてきた……。次回をお楽しみに。

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筆者プロフィール

シスアド達人倶楽部

「シスアド達人倶楽部」は、経済産業省が実施する情報処理技術者試験の1つ、上級システムアドミニストレータ試験の合格者9名で構成される執筆チーム。本連載「目指せ! シスアドの達人」は、シスアドの日常を知り尽くしたメンバーが、シスアドの働く現場をリアルに描くWeb小説だ。

執筆メンバー9名は、上級システムアドミニストレータ試験合格者と試験合格を目指す人々で構成される任意団体:上級システムアドミニストレータ連絡会(JSDG)の正会員。

システムアドミニストレータ宣言


三木 裕美子(みき ゆみこ)

日本システムアドミニストレータ連絡会正会員。 銀行勤務


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