“クラウド”で変わる、これからの運用管理クラウド時代のIT資産管理(1)(2/2 ページ)

» 2009年07月27日 12時00分 公開
[武内 烈(株式会社コア),@IT]
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クラウドコンピューティングの登場

 現時点でのユーティリティモデルの課題を解決する方法として、提案されたのがクラウドコンピューティングだ。クラウドには、パブリッククラウドとプライベートクラウドがある。

ALT 図2A プライベートクラウドはラッピングしない方法も考えられる(コア提供の図を基に編集部が作成)
ALT 図2B パブリッククラウドでは、ユーザーなクラウド内部を意識することはない(コア提供の図を基に編集部が作成)

 パブリッククラウドはSaaS、PaaS、XaaSなど、ソフトウェア、プラットフォーム、ハードウェアなどを1つのサービスとしてベンダが提供する。対してプライベートクラウドは、企業内のユーティリティモデルといえる。企業内ユーティリティモデルでは仮想化された1つのプラットフォーム上で、複数業務に対して組織横断的にサービスを提供する。仮想化されたリソースプールを効率的に利用することで稼働率90%を実現し、リソースが量的に不足するような場合には企業外のサービスをパブリッククラウドという形で柔軟に利用する。

ALT 図3 プライベートクラウド・アーキテクチャ(コア提供の図を基に編集部が作成)

 企業内で優先度や稼働率が低いサービスなどは、パブリッククラウドを利用することで無駄な投資を避け、従量課金で最もコスト効率の良いサービスを利用することが可能だ。自社では作れないような優良なシステム(例:SalesForceなど)をサービスとして利用することで、無駄な開発コストや管理コストを抑制することも期待できる。

 クラウドにおいては物理的な異機種混合環境を、論理的なリソースプールとして統合し、仮想化することでハードウェアの稼働率の最大化を図る。さらに、管理層により再利用性の高いサービス指向アーキテクチャ(SOA)のアプリケーション層の変更管理を行い、迅速な変更を可能とし、変化対応力を向上する。

 業務アプリケーションでも、管理アプリケーションでも粒度の高い、疎結合のシステムにすることで連携や統合を容易にし、サービスとサービスの連携の仕方や、新たなサービスを加えて連携させることで、変化への対応力を高めている。

 その実装技術としてWebサービスによるHTTPなどを利用したファイアウォール越えの連携がある。従来はAPIなどを使い、ローカルポートを利用した密結合の連携でしか実現できなかったアプリケーションの連携が、Webサービス技術により、アプリケーションの違いや、開発言語の違いを乗り越えて疎結合の連携を可能とし、比較的簡単に短時間で連携を実現し変化に対して迅速に対応することを可能とした。

運用管理が戦略的な役割を担う

 そんな疎結合で柔軟性、変化対応力の高いクラウドで、より一層明確になったのは管理層の重要性だ。

 いままでシステムの監視と管理は、開発に比べて後ろ向きなコストとされ、すべてのIT投資の70%にもなる運用コストをいかに削減し、開発に回すかという議論が続けられてきた。

 ところが、異機種混合のハードウェア環境において開発されたアプリケーションを最大限に生かし変化に対応するためには、管理層の機能は開発同様に戦略的で迅速な対応が求められる。監視と管理によって「動いていることを確認する」ことを目的とする従来の運用は、「再利用性の高いサービスコンポーネントや、仮想化されたプラットフォームの変化対応力を最大限に引き出す」という、IT戦略の中枢で極めて重要な役割を担うものとなる。

 すなわち、クラウド実現の鍵は「変化対応力を備えた管理層の構築だ」といっても過言ではないだろう。

 ここで重要なのは、クラウド管理層の構築は、決して管理ツールで自動化すれば解決する問題ではないということだ。管理ツールは、標準化された運用管理のプロセスをサポートし、自動化、効率化を実現する重要な役割を持っていることは確かだが、ツールの導入で運用管理プロセスが構築されることはない。

 多種多様なビジネス変化に対応するための変更をすべてツールにより自動化することは不可能である。迅速な変化対応を実現するためにはツールを生かすための人による“ポリシーベース”の変更プロセスが機能しなければならない。

 次回はクラウドの変化対応力実現を変更管理の側面から解説する。

著者紹介

▼著者名 武内 烈

株式会社コア プロダクトソリューションカンパニー

ネットワークソリューション事業部 マーケティング ディレクター

アーティソフトジャパン株式会社、日本ヒューレット パッカード株式会社 ソフトウェア事業部を経て現職。


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