“仮想化”を成功させるには体感し、習熟せよ特集:実用フェイズに入った仮想化(1)(2/2 ページ)

» 2009年09月01日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]
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仮想化で高まる運用管理ニーズ

 私たちの会社は社名に「仮想化」と付いているので、仮想化に関する相談が多いのですが、その部分はすぐに終わってしまいます。すると次はITガバナンスやシステム統制??つまりシステムをどのようにまとめ上げるかという点に焦点が当たってきます。Windowsサーバがあり、Linuxサーバがあり、開発リソースや運用ノウハウが集中できないという問題です。

 仮想化のニーズは、サーバ乱立の問題と表裏一体なわけです。それらのサーバには当然ながらいろいろなシステムが載っていて、これを何とかまとめたいというわけです。その解決策はニアリーイコール標準化ですね。ここから先は、前述のビジネス貢献につながってきます。

 サーバがたくさん作られてしまうというのは、仮想化環境でも止められないと思います。むしろ、1つのサーバの中にいろいろな機能を詰め込むと逆に管理しにくくなるので、機能アプリケーションと仮想マシンが1対1に対応させて、ネットワーク経由で連携させるという方向で考えることになるでしょう。

――そうなると従来以上に運用管理が重要になりますね

宮原氏 仮想化の運用管理については、「これまできちんとやっていなかった」のが顕在化するということじゃないでしょうか。仮想化すると、ある意味で見える化されるわけです。いままで物理的にランプが点いているかという見方をしていたものが、仮想環境を監視してみるとOSやアプリケーション層もよく見えるようになるわけです。

 仮想化製品に付いている標準の管理ツールを使って仮想マシンの監視を行うようになると、サービス・レイヤを含めて見たいというニーズが出てきます。従来はシステムがばらばらだったので個々別々の管理で問題ありませんでしたが、仮想的にシステム統合がされると統合管理したくなるのが人情というものです。そうした意味で運用管理に対するニーズ、パラダイムの変化というのが出てきつつあるように感じます。

 ただし、管理ツールについていえば、いまは完全に黎明期の状況です。サービスレイヤ−仮想化レイヤ−物理レイヤを統合的に見ることを考えると、現状では手作りになるでしょうね。ユーザーさんも買うほどのニーズはないと思います。サーバリソースの動的配分のような高度な利用を考えているユーザー企業は、全体の5〜10%ぐらいだと思います。こうしたユーザーが30%を超えないと、本格普及とはならないのではないかと思います。

 ベンダの立場からは、ハイパーバイザーの成熟度が高くなって差別化要因にならなくなってきているので、仮想化の管理ツールをアピールしたい。データセンターなどのサービス事業者の場合はサービスメニューを充実という面から整備を進めている状況でしょう。

 運用管理の問題の本質はツールではないと思います。開発に比べて情報が少ないということもあって、運用管理はスキルのある人が少ない。ですから管理ツールは、できるだけ簡単にやれるようなもの、運用管理の経験のない人でもシステムのお守りができるといったニーズが強いですね。

使いこなしには習熟が必要

ALT 「仮想化は技術的にインフラを作ることよりも、全体把握に努めて可視化することが大切」と語る宮原氏

――仮想化技術を導入する場合、どこから始めたらいいのでしょうか?

宮原氏 私たちが仮想化を行う際、まずは資産表を作ります。システム部門にも自社で利用しているサーバの型番やCPU、メモリを管理した資産表がない場合があります。各サーバに余裕があってもキャパシティ配分を簡単に変えられない以上、要求が満たされていれば気にする必要はなかったわけです。資産表が整理できたら、各システムに「重要度をA・B・Cで付けてください」とお願いします。こうして、これは使っていないから止める、これはまだリース期間が残っているから残すというように取捨選択して、この10台を仮想化しましょうという感じでやっています。

 ですから、仮想化は技術的にインフラを作ることよりも、全体把握に努めて可視化することが大切です。誰が見ても状況が分かる。それぐらい抽象化するわけです。加えて、仮に取捨選択でアプリケーションを休止したところ、ユーザーに「ないと困る」といわれても、止めてある仮想マシンを起動するだけでいいといったメリットもありますね。

――導入担当者、管理者はどのように取り組んだらよいのでしょうか?

宮原氏 仮想化がどの部分に有効で、どういう使い方には向いていないかはやってみないと分かりません。冒頭にいったようにイニシャルコストが下がっているので、試験的にやってみるのがお勧めです。まずは1台でも構わないのでスモールに動かしてみて、いろいろ実験してみるのです。

 その意味ではオープンソースの初期に似ています。当時オープンソースはどう使うか、いろいろ議論がありましたが、現在は適材適所で当たり前のように使っているわけです。ですから、現状は運用管理者の方々が仮想化に習熟していくフェイズだろうと思います。

 仮想化すると、バラバラに運用したときには分からなかった問題が顕在化することが考えられます。例えば、1台のマシンに仮想マシンを3つ、4つ同時に動かしたときに処理が重くなる、なぜかというとディスクのI/O競合が原因だ??。こういったコンピュータの基礎の勉強が必要になってきます。逆に、仮想マシンとソフトウェア・サービスの結び付きが強まるので、仮想化基盤の上で動作するアプリケーションやデータベースまでも面倒をみなければならない。そうした中で仮想化だけ詳しくなっても仕方がないわけです。

――運用管理者はスーパーマンたれ、ということになりますね

宮原氏 そう思います。しかし現状、企業のシステム担当者は少なくなっており、皆さん忙しい。そこで思うのは、コンサルティングをもっと上手に使ってほしいということです。従来はファイルサーバとか、Webサーバ、メールサーバという単位の企画・発注が多かった。ですので知識が十分でないユーザー企業担当者の方でも何とかなってきました。

 しかし、統合基盤は基本設計をしっかりしたものにする必要があります。ですから上流の企画やRFP作成の段階からコンサルティングに相談するようなやり方がいいのではないかと思いますね。ベンダやSIerから独立したコンサルタントを入れることで、ベンダ提案を評価したり、要求仕様が二転三転するのを防いだりと、結果として安くなると思います。

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