ベスト16に残ったサッカー日本代表の問題解決力(3/3 ページ)

» 2010年08月25日 12時00分 公開
[松浦剛志(プロセス・ラボ), 田代真広(田代真広事務所),@IT]
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チームワークは「認め合った結果」として存在する

 今回の日本代表は、試合後にも見るべき部分が多かったように思う。例えば、代表選手らの帰国会見を聞いていると、「チームワークがとても良かった」というコメントが多かった。

 チームワークが機能している組織には2つの要素が備わっている。1つはチームの共通目標に向かって、すべての選手、サポートスタッフが「自分に何ができるか」を考え、それを実行に移していること。2つ目は、お互いを認め合っていることである。代表チームに選ばれる選手ともなれば、1人1人の個性が強く、その個性(自分らしさ)をプレーで見せるのは当たり前のことである。そこで大切になるのが、そうしたプレーを含めてお互いを認め合うことなのではないだろうか。

 記者会見では、ほとんどの選手がチームメイトに対して、またサポートスタッフに対して感謝の言葉を口にしていた。つまり、言葉で明確に感謝の気持ちを伝え合い、お互いを認め合っていたのである。チームワークとは作ろうと思って作れるものではなく、日ごろからのチームメイトに対する感謝の気持ちや、それを言葉として伝える習慣があって初めて醸成できるものなのであろう。

問題意識は、主体性や当事者意識の発露

 さて、以上のように、日本代表の在り方からはさまざまな要素を学ぶことができた。しかしその半面、今回のワールドカップには、いくつかの面で不満が残った。最も気になったのは誤審が多かったという点である。実際、これまでの大会と比較し、選手やチーム監督からの不平不満も多かったと感じた。FIFA(国際サッカー連盟)としては、その声を受け止めるべきであろう。4年に1度のワールドカップに並々ならぬ努力を重ねてきた選手、楽しみに待ち構えてきたファンを思うと当然の姿勢だろう。FIFAにはぜひPDCAを回してほしい。

 われわれが考える具体的な改善点は2点ある。1点目は、「ビデオ判定を取り入れる」ことである。サッカー以外のスポーツにおいては、主要な国際大会ではビデオ判定を導入している。ウィンブルドンにおける「ホークアイ」、柔道においても審判団が集まり、ビデオで協議している様子を見たことがあるはずだ。サッカーでの導入を考えると、ラグビーワールドカップでのビデオ判定の使い方が参考となる。使い方としては、得点に直結する場面において活用する方法である。例えば、得点に直結するオフサイドの判断、またゴールラインを割ったどうかの判定である。

 2点目は、「認定ゴールを導入する」ことである。ウルグアイ対ガーナにおける準々決勝を見た視聴者はどう思っただろうか。延長戦後半終了間際でのウルグアイ選手によるファールに対してである。状況としては、ガーナによるゴールが決まればウルグアイの敗退は決定的になるというシーンだった。ウルグアイ選手の取った行動は、チームの勝利の可能性を残すために取ったベストの選択だっただろう。

 しかしながら、ファールで得られたPKを外してしまったガーナが、延長戦終了後のPK戦においても負けてしまうのはあまりに後味が悪い。「当該選手の悪質なファールがなければ、確実にゴールである」と判断できるならば、「認定ゴール」として良いと思うのはわれわれだけだろうか。

 それはともかく、こうした問題意識を持てるのも、ある意味“わがごと”として強い興味・関心を抱いているゆえであることは言うまでもない。冒頭で述べた“主体性”や、その根底にある“当事者意識”を持ってさえいれば、問題や問題解決の術はおのずと発見できるものなのである。


 「問題解決を行える組織」を考えるうえで、今回の日本代表から得られる示唆は非常に大きかった。ぜひ皆さんもワールドカップのさまざまなシーンを思い返しながら、まずは「1人1人が主体的に動いているか」「チームとして明確な共通の目標があるか」「PDCAサイクルを回しているか」という3点で、自身の組織の現状を見直してみてはいかがだろうか。

著者紹介

松浦剛志(まつうら たけし))

京都大学経済学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)審査部にて企業再建を担当。その後、グロービス(ビジネス教育、ベンチャー・キャピタル、人材事業)にてグループ全体の管理業務、アントレピア(ベンチャー・キャピタル)にて投資先子会社の業務プロセス設計・モニタリング業務に従事する。2002年、人事、会計、総務を中心とする管理業務のコンサルティングとアウトソースを提供する会社、ウィルミッツを創業。2006年、業務プロセス・コンサルティング機能をウィルミッツから分社化し、プロセス・ラボを創業。プロセス・ラボでは、業務現場・コンサルティング・アウトソースのそれぞれの経験を通して培った、業務プロセスを理解・改善する実践的な手法を開発し、研修・コンサルティングを提供している。

田代真広(たしろ まさひろ)

田代真広事務所 代表

武蔵大学経済学部経営学科卒。卒業後、青年海外協力隊日本語講師として、ハンガリー共和国の国立ドゥナウイヴァーロシュ工科大学にて日本語コースを担当。帰国後、大手通信関連コンサルティング企業にて、事業会社の購買および調達活動にフォーカスした経営支援に従事する。その後、教育ベンチャーのアルー株式会社にて、研修プログラムの開発および講師、ならびに外部パートナー講師育成業務に従事し、2010年2月より田代真広事務所を創業。現在は企業向け教育研修講師を中心に、人材育成および業務改善のコンサルティングを行っている。


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