情報を転写するにはメディアが必要です。
「モデル=情報+メディア」と考えるなら、例えばUMLはモデルを転写することができる一つのメディアであるという見方ができます。
UMLで表現されたダイアグラムには情報が乗せられています。UMLで表現された分析モデルの情報を元に設計モデルを作成し、UMLの設計モデルに表現されている情報をプログラミング言語のソースコードに転写します。ソースコードとは、実装モデルの一つの表現形式です。プログラミング言語も設計情報を乗せる一つのメディアです。
このように考えるなら、オブジェクト指向開発とは、コンテキストの情報をUMLとプログラミング言語というメディアを用いて転写を繰返し、最終的にプログラムに転写するというプロセスです。
今回は「転写」と「媒体(メディア)」をキーワードに、「工業製品の製造とは設計情報を媒体に転写することである」[2]を考えてみました。「製品=情報+メディア」であり、製品を作る人は情報をメディアに転写し、利用者はメディアから情報を引き出して利用するという見方です。
アリストテレスの考え方なら、「情報=形相」「メディア=質料」です。情報はメディアを選びますが、メディアも情報を選び、情報(形相)とメディア(質料)の相性があります。
オブジェクト指向開発では、UMLとオブジェクト指向プログラミング言語がメディアの役割を果たします。
河合 昭男(かわい あきお)
大阪大学理学部数学科卒業、日本ユニシス株式会社にてメインフレームのOS保守、性能評価の後、PCのGUI系基本ソフト開発、クライアント/サーバシステム開発を通してオブジェクト指向分析・設計に携わる。
オブジェクト指向の本質を追究すべく1998年に独立後、有限会社オブジェクトデザイン研究所設立。OO/UML関連の教育コース講師・教材開発、Rational University認定講師、東京国際大学非常勤講師。
著書に『ゼロからわかるUML超入門』(技術評論社)、『まるごと図解 最新オブジェクト指向が分かる』(技術評論社)、『まるごと図解 最新UMLが分かる』(技術評論社)、監修『JavaデベロッパーのためのUML入門』(ソフトバンククリエイティブ)、共著『明解UML――オブジェクト指向&モデリング入門』(秀和システム)など。『ITアーキテクト』(IDG)、『UML Press』(技術評論社)、『ソリューションIT』(リックテレコム)などの専門誌に執筆多数。
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