連載
» 2012年09月17日 21時20分 公開

ビジネスサクセスのための“情報システム品質”(1):ユーザー企業にとっての“品質”とは何か?──ビジネスと情報システムの関係 (2/2)

[北島義弘,日本科学技術連盟SPC]
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開発するシステムを決める──システム機能仕様定義

 ここまではコンピュータを使わずに企業内の仕組みや制度を考える場合と同じですが、情報システムを導入する場合はコンピュータに“きちんと”仕事をさせなければなりません。そのためには「やるべきこと」を、コンピュータが処理できるように適切な翻訳をする作業があります。

 この点は業務実務者にとって、敷居が高い場合があるかもしれません。なぜなら現実のビジネスを理解し把握するというスキルと、それを「データ」と「データの処理」で表現してコンピュータが正しく理解できるように翻訳するというスキルは別モノだからです。また、コンピュータの仕組みや制限を知らないと過剰あるいは実現不可能な“要求”をしてしまう可能性もあります。

ALT 図2 現実の世界と情報システムの世界

 また、「やりたいこと」すなわち“要求”の中にも、コンピュータに関する知識やシステム化の経験がないとなかなか気付かないことがあります。それは「非機能要件」です。

 「非機能要件」とは「〜というデータを入力できること」や「〜という帳票を出力できること」などの具体的な機能上の要件(これらは機能要件といわれます)ではなく、レスポンスやセキュリティなど広くシステム全般にかかわる要件です。システム開発プロジェクトでは、一般に「あれもしてほしい」「これもしてほしい」と機能要件に関する要求はいろいろと出てくるのですが、非機能要件に関しては「やってみるまで分からなかった」という例が多いようです。

ALT 図3 機能要件と非機能要件のイメージ

ビジネスサクセスのための“品質”とは

 このように「やりたいこと(要求)」を「きちんとやる」といっても、決して、単純でも簡単でもありません。しかし、この点こそがユーザー企業にとっての情報システムの“品質”を左右するポイントであるわけです。

 ユーザー企業にとっての情報システムの“品質”は、少し専門的になりますが、一般的にはクロスビー(Philip B. Crosby)による「要求に対する充足度」と、ジュラン(Joseph M. Juran)&グライナ(Frank M. Gryna)による「利用に対する適合度」でとらえることができます。つまり成果物である情報システムと「要求との一致性」という概念が重要です。

 そこで、利用者と開発者は一致協力して、利用者の「機能要求と非機能要求」と、情報システムで実現する「機能要件と非機能要件」が合致するようにしなければなりません。これができていないと、いかに多額の情報化投資をして情報システムを構築しても、最も重要な目的であるビジネスの成功につながらないということになります。

 この連載では、次回より次の3つのシーンに分けて、ユーザー企業において情報システムの“品質”を確保するためのポイントを解説していきます。

  1. 開発(実装・購入)前における“品質”
  2. 開発時における“品質”
  3. 納入時における“品質”

 なお、ビジネス的要求をシステム要求に変換するためのシステマティックなアプローチとしては、要求開発方法論「Openthology(Open Enterprise Methodology)」があります。要求開発アライアンスのサイトで具体的かつ詳細な内容を公開しています。


リンク
「Openthology」ページ(要求開発アライアンス)


 また、9月8〜9日に新宿NSビルで『ソフトウェア品質シンポジウム』(日科技連主催、経済産業省・文部科学省後援)が開催されます。ユーザー企業、開発者、QA担当、研究者といった枠を超えて、「ビジネスを成功に導くソフトウェア品質」をテーマに現場で役立つ実践的な技術や経験、ノウハウ、研究成果を発表し意見交換を行う場です。

 ユーザー企業の「要求者」向けのセッションとして、豆蔵 取締役 萩本順三氏の『要求開発〜Openthologyのコンセプトと特徴』、清水建設 システム開発課長 安井昌男氏の『要求開発によるPDCAフレームワーク』があります。詳しくは日科技連サイトをご覧ください。

profile

北島 義弘 (きたじま よしひろ)

NTT、NTTコムウェアを経て、現在CRCソリューションズ。交換機ソフト開発、企業通信システム構築、プロジェクト管理システム構築の開発経験の後、品質保証・品質管理指導/プロセス改善/開発管理標準化業務を経て、現在、PMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)推進業務を担当。

米国PMI Certified PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)、上級システムアドミニストレータ、プロジェクトマネジメント学会所属。第21回ソフトウェア生産における品質管理シンポジウム最優秀賞受賞

日本科学技術連盟SPC研究委員会副委員長兼シンポジウム委員長兼国際委員長、SPC研究会副委員長兼第2分科会講師(プロジェクトマネジメント分科会主査)、ソフトウェア技術者ネットワーク(S-Open)副会長

主な著書・執筆活動

ソフトウエア開発オフショアリング完全ガイド(共著)日経BP社

ご意見、ご質問などは、yo-kitajima@crc.co.jpにて


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