
経理や人事、総務などのバックオフィス業務担当者の皆さまへ。日々の作業が煩雑で「このままでいいのか」と感じることはありませんか? 最近は、書類の電子化やテレワークの広がりをきっかけに、バックオフィス業務のデジタル化――いわゆる「バックオフィスDX」に注目が集まっています。しかし、「何から手を付けていいか分からない」「本当に効果が出るのか不安」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、バックオフィスDXの基本的な意味や始める理由、実際に得られるメリット、進め方のコツまで解説します。
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目次
バックオフィスDXとは?
「月末の経理作業に毎回何日もかかってしまう」「紙書類やハンコのためだけにわざわざ出社している」「担当者が休むと業務が回らない」──。このような悩みは、多くの企業が抱える共通課題です。これらを根本から解決し、会社の土台をより強くしていくのが「バックオフィスDX」です。まずは、その基本と背景を順を追って分かりやすく解説します。
バックオフィスDXの意味と対象範囲
バックオフィスDXとは、経理や人事、総務、法務などの間接部門の業務をデジタル技術の力で根本的に変えていく取り組みです。単純なデータ入力や書類作成といった作業の自動化にとどまらず、申請や承認などの流れ全体や、働き方そのものを見直すことまで含まれます。
従来は一部の定型作業だけが自動化の対象でしたが、今や働き方や組織運営、さらには企業文化そのものまで変革の範囲が広がっています。
例えば、経費精算や出張申請などの日常業務だけでなく、経営分析用のデータ収集や法規制対応、全社的なワークフローの見直しまで、多様な業務がDXの対象となります。
承認フローの具体的な改善事例は、「ワークフローシステム比較14選 」でご確認ください。
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IT化とDXの違いを整理
「IT化」と「DX」は近い文脈で用いられることも多く、一見すると混同されがちですが、その本質は異なります。
IT化は、今まで紙や手作業で管理していたものをPCやシステムで管理するように変える「効率化」の手段です。例えば、手作業で集計していた業務をエクセルや会計ソフトに置き換える、といった変革が該当します。
一方のDXは、デジタル技術とデジタルデータを軸に、組織の仕組みから見直し、仕事の進め方を進化させる取り組みです。 IT化も手段の一部として含みつつ、目指すのは「仕組み・考え方自体の変革、デジタル化」となります。
例えば紙の帳票や手作業でのプロセスを廃止し、クラウドサービスや自動化ツールを駆使して新しい業務フローを構築することを指します。
| IT化(IT Implementation) | DX(Digital Transformation) | |
| 目的 | 業務の効率化・生産性向上 | 組織全体・ビジネスモデルの変革 |
| 位置付け | 目的を達成するための手段 | 経営戦略・変革のための目的 |
| 範囲 | 一部業務プロセスのデジタル化 | 組織・文化・ビジネス全体の変革 |
| 視点 | 社内向け | 顧客や社会を含む社外まで拡大 |
つまりDXの実践とは、単にツールを入れるだけでなく、それによって組織全体で意識や方法を変えていくことなのです。
バックオフィスDXが求められる理由は「時代の変化」への対応
今、なぜバックオフィスのDXがこれほど重視されているのでしょうか。その背景には、業務の効率化だけでは済まされない時代の大きな変化があります。内部の非効率性だけでなく、法改正や社会的な要請もDXの推進を強く後押ししています。
紙と手作業中心では現場も経営も限界を迎える
従来の業務プロセスは、紙の書類や印鑑による承認、システムへの手入力など、手間がかかるものが中心でした。このやり方では、次のような課題が生まれやすくなります。
- 必要のない出社や印鑑のための待ち時間が発生しやすい
- 手作業が多く、入力ミスや計算ミスなどのヒューマンエラーが避けられない
- 特定の担当者しか分からない業務が増え、引き継ぎが難しい
- 月末や期末に作業が集中し、残業が常態化しやすい
- 大量の書類保管スペースや郵送コストなど見えにくいコストも積み重なる
こうした問題を放置すると、現場も経営も負担が増える一方で、会社の成長を妨げるリスクが高まります。
法改正や社会的要請への柔軟な対応にもDXが不可欠
バックオフィスのデジタル化が求められるのは、社内効率だけが理由ではありません。
近年では「電子帳簿保存法」や「インボイス制度」など、デジタル化を前提とした法改正が相次いでいます。これらに紙と手作業で対応しようとすれば、確認や管理の手間が膨大に増え、担当者の負担が急増してしまいます。
また、取引先や顧客、将来の従業員からも「デジタル対応できているか」が厳しくチェックされる時代になりました。テレワークや多様な働き方への柔軟な対応も企業選びの大きな基準になっています。
この流れに乗り遅れると、「時代遅れ」と見なされ、せっかくのビジネスチャンスを逃す可能性も高まるでしょう。
電子帳簿保存法対応の具体手順を確認するには、「「電子帳簿保存法」の対応方法 まだ間に合う? 帳票電子化の気になる疑問、対策手段を分かりやすく解説」をご覧ください。
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バックオフィスのDX化で得られるメリット
バックオフィスDXの本質は「会社の土台を強くし、将来に向けて成長し続けられる仕組みをつくること」です。ここでは、実際にDX化を進めたときに得られる5つの代表的なメリットを具体的に紹介します。
- 業務効率化でムダな作業を減らせる
- コスト削減につながる
- テレワーク・柔軟な働き方を実現しやすくなる
- ミスの防止や業務品質の底上げにつなげられる
- 属人化を解消できる
業務効率化でムダな作業を減らせる
DXの最大のメリットは、手作業や紙で行っていた仕事を自動化・ペーパーレス化することで、作業時間を大幅に短縮できることです。
例えば、経費精算や請求処理、申請・承認フローをデジタル化すれば、確認や承認にかかる待ち時間がほぼゼロに近づきます。現場の担当者は面倒な転記やチェック作業から解放され、本来注力すべき重要な仕事に時間を使えるようになります。
コスト削減につながる
業務効率が上がれば、その分コスト削減にも直結します。
例えば、次のような費用を抑えられます。
- 紙やインクなどの消耗品コスト
- 書類の印刷・郵送費
- 書類の保管スペースやキャビネットの維持費
- 業務効率化による残業代や外注費
さらに、限られた人手でも多くの業務をカバーできるため、人手不足への対策にも効果的です。
テレワーク・柔軟な働き方を実現しやすくなる
バックオフィス業務がデジタル化されると、会社に出社しなくてもどこからでも必要な情報や書類にアクセスできるようになります。その結果、テレワークや在宅勤務、フレックスタイムなど、より自由な働き方が実現できます。
育児や介護をしながら働く人も無理なく仕事を続けやすくなり、採用できる人材の幅も広がります。
ミスの防止や業務品質の底上げにつなげられる
手作業によるミスや確認漏れは、どれだけ注意しても完全には防げません。DX化により、データ入力や集計などの作業を自動化できれば、人為的なエラーが大きく減ります。また、業務フローの標準化によって「担当者によるやり方の違い」も解消しやすくなり、一定の品質を保ちやすくなります。
属人化を解消できる
「この仕事はあの人しか分からない」という状況が長く続くと、突然の休職や退職で業務がストップする危険が高まります。DX化を進めることで、業務手順やノウハウをシステムやマニュアルで共有できるようになり、誰でも同じ水準で仕事を進められる環境が整います。
これにより、業務の引き継ぎもスムーズになり、事業が止まるリスクを最小限に抑えられるでしょう。
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バックオフィスDXの進め方:「小さく始めて積み上げる」スタイルが定番
「DXは大がかりなプロジェクトで、失敗したら怖い」と感じている方も多いでしょう。しかし、実際には最初から全てを一気に変える必要はありません。ここでは「小さく始めて、確実に成果を積み上げる」進め方を分かりやすくご紹介します。
現状把握と業務の可視化からスタート
最初にやるべきは、自社の現状を正確に把握することです。
例えば、次のような流れで課題を洗い出します。
- 経理や人事など各部門で、まだ紙や手作業が残っている業務をリストアップする
- 業務の流れや担当者ごとの作業時間をまとめて、どこがボトルネックになっているか明確にする
- 実際に作業している担当者から「どの作業が一番手間なのか」など、現場の意見も必ず聞き取る
このようにして問題点を「見える化」することで、どこから改善すれば効果的かが分かります。
優先順位の高い業務からスモールスタート
全社一斉に新しい仕組みを導入しようとすると、混乱や反発が起きやすくなります。
そのため、まずは経費精算や勤怠管理、請求書処理など、比較的デジタル化の効果が分かりやすい業務からスタートするのがおすすめです。
初めは一部の部署だけで試し、うまくいったノウハウを社内全体に展開していくと、無理なくDXが進められます。
現場・経営層の連携と「定着」を意識
DX化は「現場」だけでも「経営層」だけでも進みません。
経営トップがDX推進の意義やビジョンを自分の言葉でしっかりと発信し、現場の意見も積極的に吸い上げて改善に反映することが大切です。
また、システム導入後は使い方の研修を行い、運用状況も定期的に見直していくことで、変化がしっかり根付くようにしましょう。
ツール選びと進め方
DXを進めるには、自社の業務課題に合ったツールを選ぶことが欠かせません。
特にERPは、複数の業務を一元管理できるため、バックオフィスDXの中心的な存在です。
製品を選ぶ際は「本当に自社の課題を解決できるか」「使いやすいか」「既存システムと連携できるか」「サポートが充実しているか」などを比較しましょう。
無料トライアルやデモを必ず活用し、実際の現場で本当に使いやすいか確認することをおすすめします。
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バックオフィスDXの推進に寄与するERP製品8選
バックオフィス業務のデジタル化を進めたいものの、どの領域から手を付けるべきか悩む企業も多いのではないでしょうか。ここでは製品選定計画の一例として、デジタル化で高い効果が望みやすい「会計管理のDX」を軸に、実際の使用感や自社業務との適合度を事前に確認できる「無料トライアル」を用意する製品を厳選して紹介します。(製品名 abcあいうえお順/2025年7月時点)
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