不良在庫の処分方法とは？　原因・メリット・防止策まで解説

不良在庫の増加はビジネス、経営の大きな足かせになります。

この記事では、不良在庫の基本や発生原因から、具体的な処分方法、防止策までご紹介します。売れ残りや型落ち、期限切れの在庫に困ったとき、何から手を付ければいいか迷っている方もヒントを見つけやすくなっています。さらに在庫管理システムの導入による効率化もあわせて紹介。ムダを減らし、経営をもっと健全にするための実践的なアイデアをお届けします。

この1ページでまず理解！「在庫管理システム」の主な機能、メリット／デメリット、選定ポイント｜人気・定番・おすすめの製品をチェック

不良在庫の定義と種類

不良在庫は、企業経営にじわじわとダメージを与える存在です。まずは不良在庫とは何か、その種類について整理します。どんな在庫が該当し、なぜ放置できないのかを理解することが、対策の出発点となるでしょう。

在庫管理の全体像は「在庫管理とは？ 目的と考え方、効率化する手法」をご覧ください。

不良在庫とはどんな在庫か

不良在庫とは、長期間にわたり倉庫や店舗に残ったままで、今後も通常の方法では売れそうにない在庫を指します。

こうした在庫は、資産というよりも企業にとって重荷となります。

売れる見込みがなくなった商品は、倉庫スペースを占有し続け、保管のための賃料や光熱費、人件費といった管理コストが発生し続けるからです。

動かない在庫は管理コストを発生させ続けるだけでなく、資産として計上される限り税金の対象にもなります。その結果、新たな商品仕入れや事業投資に充てるべき資金が拘束されてしまう問題が生じます。

不良在庫の主な種類

不良在庫には、いくつかのパターンがあります。自社が抱えている在庫がどれに当てはまるかを把握することで、原因の分析やその後の対策が立てやすくなります。

過剰生産や発注ミスによる売れ残り

必要以上に生産・仕入れた結果、売れずに残ってしまった商品です。季節商品やイベント用グッズなどが、販売期間終了後に大量に余ることがあります。

流行の変化で需要がなくなった商品

特にアパレルや家電、雑貨などで多くみられます。消費者の関心が急に薄れると、人気商品だったものでも急速に価値が下がってしまいます。

新モデル登場による型落ち品

スマートフォンやパソコンなどは、新しいモデルが出ると、旧型は一気に売れ行きが悪くなります。こうした「型落ち」は在庫化しやすい特徴があります。

賞味期限や品質低下で販売できない商品

食品や飲料、医薬品などは、期限が過ぎると法的にも販売できなくなります。また、保管中に品質が劣化したり、破損・汚損した場合も、不良在庫となります。

このように、不良在庫はさまざまな形で企業の負担となりえます。

また、放置しておくと周囲の正常な在庫にまで悪影響を及ぼすリスクがあり、速やかな対応が求められます。

在庫管理の段階的な改善は「在庫管理表をExcel管理からシステムへ段階的に移行する方法」をご確認ください。

不良在庫が発生する主な原因

不良在庫は突然発生するわけではなく、日々の業務や市場の動きの中で少しずつ増えていきます。ここでは、不良在庫が生まれる主な要因について整理します。

需要予測のズレ

最も根本的な原因は「需要予測の精度不足」です。多くの企業は、過去の販売データから将来の需要を予測しますが、天候や社会情勢の変化、新商品や競合製品の登場など、想定外の出来事で予測が外れることが少なくありません。

こうしたズレが生じると、余分な商品を抱え込むことになり、結果として不良在庫の増加につながります。

過剰な発注・仕入れ

欠品による販売機会の損失を恐れて、多めに商品を仕入れるケースもよく見られます。また、仕入れ単価を下げようとして大量に発注したものの、販売が追いつかずに在庫が残ることも原因となります。「念のため」の在庫が、思わぬ経営リスクに変わってしまうのです。

在庫回転率の基礎と改善は「在庫回転率を理解し、経営効率を向上させる方法」をご覧ください。

商品自体の問題や保管環境の影響

製造段階での不良品や、運送中の破損・汚損によっても、商品は不良在庫になってしまいます。さらに、倉庫の温度や湿度管理が不十分だと、食品や精密機器などは品質が落ちて販売できなくなります。

保管体制の不備も、不良在庫の発生を助長します。

市場トレンド・外部環境の変化

ファッションや家電のような流行に左右されやすい分野では、消費者の嗜好が変わると、急に売れなくなる商品が出てきます。また、競合他社の動きや社会的な出来事も、需要に大きな影響を与えることがあります。

不良在庫の背景整理には「在庫ロスとは？ 現場で起きる損失と対策」もご覧ください。

不良在庫の主な処分方法

発生してしまった不良在庫は、ただ放置するだけでは経営の足を引っ張るばかりです。ここからは、不良在庫の代表的な処分方法と、それぞれの特徴について紹介します。

値引きやセールで売り切る

最も一般的なのは、値下げやクリアランスセールで売り切る方法です。アウトレットや在庫処分市なども活用し、現金化を目指します。

こうすることで、動かない資産を運転資金に変え、在庫回転率も向上します。ただし、安易な値下げはブランドイメージを損なうことがあるため、バランスが大切です。

買取業者に依頼する

自社でさばききれない場合は、在庫買取の専門業者にまとめて売却する手段もあります。スピーディーに処分でき、倉庫スペースの確保にもつながります。

一方で、買取価格は市場価格より安くなることが多く、どこで再販されるかをコントロールできないデメリットもあります。業者の選定時は、信頼性や販路管理の体制も確認しましょう。

寄付やリサイクル活用

売却や値引きが難しい商品でも、福祉団体や認定NPO法人などに寄付する方法があります。これにより企業イメージの向上や、税制上の優遇措置が受けられるメリットもあります。また、商品そのものが使えなくても、素材や部品としてリサイクルすることで、廃棄コストや環境負荷を減らすことができます。

廃棄する

品質が著しく劣化していたり、安全上の理由で販売も寄付もできない場合は、廃棄処分を選ぶしかありません。

廃棄には多くのシーンで専門業者への依頼が必要になり、費用がかかります。併せて、廃棄した事実を示す「廃棄証明書（マニフェスト）」などの書類を必ず保管しておくことが大切です。これがないと経理処理で損金算入が認められなくなる場合があります。

不良在庫を減らすための防止策

不良在庫の処分だけでなく、「発生させない仕組み作り」が経営の安定には欠かせません。日頃から実践できる予防策について見ていきます。

適正在庫の維持と定期的な見直し

「適正在庫」を保つことは、不良在庫を防ぐための基本です。適正在庫とは、品切れによる機会損失を防ぎつつ、過剰な在庫によるコスト増やリスクも回避できる、バランスのとれた在庫量を指します。

季節変動や過去の販売実績をもとに在庫基準を決め、定期的な棚卸や在庫分析を行いながら、常に見直していく姿勢が重要です。

適正在庫の考え方は「適正在庫とは？ 最適化の手順まで紹介」をご確認ください。

在庫回転率を高める意識

在庫回転率とは、一定期間で在庫が何回入れ替わったかを示す指標です。この数値が高いほど、在庫は効率的に売れていることになります。売れ行きが鈍い商品を早めに値引き販売したり、販促キャンペーンを行うことで、不良在庫化する前に積極的に在庫を動かす工夫が必要です。

需要予測の精度アップ

不良在庫の多くは、需要予測の甘さが原因です。過去の販売データだけに頼らず、市場全体の動向や季節指数、SNSでの話題など外部情報も活用することで、予測の精度が向上します。また、予測作業が特定の担当者だけの「勘と経験」に偏らないよう、チーム全体で情報共有し、多角的な視点で見極める体制が求められます。

在庫管理システムの活用

これまでの予防策を人手だけで実現するのは限界があります。

ここで重要になるのが、在庫管理システムの導入です。

最新の在庫管理システムを使うことで、リアルタイムな在庫の見える化や、客観的なデータに基づく発注・仕入れ判断が可能になります。

発注点の自動計算や棚卸の自動化など、ミスや属人化の防止、業務プロセスの効率化にも役立ちます。

結果として、不良在庫の発生リスクを根本から減らせます。

導入効果と主要機能についての概要は「在庫管理システムの機能一覧｜導入の効果」をご覧ください。

おすすめSaaS導入前に考慮しておくべき3つの基本ポイント

【業種・担当者別】不良在庫の削減に寄与する在庫管理システム10選

業種や担当者ごとに課題が異なるため、不良在庫の削減・予防に有効なシステムも変わってきます。ここでは、小売・EC・物流・製造など、それぞれの現場で導入が進んでいる在庫管理システムを紹介します。（製品名 abcあいうえお順／2025年11月時点）

このほかにもおすすめの製品があります。搭載機能や特徴、評価／口コミ数などで絞り込み、並べかえができる「おすすめ在庫管理システム一覧＆検索＆比較コーナー」をぜひお試しください。またITセレクトでは、IT製品・サービス選定に詳しい専門スタッフに聞ける「ITセレクトのコンシェルジュ相談サービス（無料）」も用意しています。こちらもぜひご活用ください。

店舗・ECの在庫責任者向け（小売・通販）

AI需要予測・在庫分析ツール LTV-Zaiko

AIがSKU単位で需要予測し、発注・割引・店舗間移動まで具体的なアクションを提案します。商品の完売日予測や割引シミュレーションを活用し、売れ残りの兆候を早めにキャッチ。不良在庫となる前に手を打つことが可能です。

TS-BASE 受発注

受注から在庫、出荷、仕入れまでを一元管理。特に販促物や備品など多品種・小ロット商品の可視化と、余剰在庫の早期発見、引当ミスの防止に役立ちます。

特攻店長

複数のECモールや実店舗の受注・在庫情報を連携し、入荷や受注のタイミングで自動調整します。店舗ごとに在庫配分比率をコントロールできるため、偏りや在庫滞留を防ぎ、効率的な在庫消化が可能です。

倉庫管理・物流責任者向け（WMSで在庫滞留を減らす）

Connected Linc

入出庫や棚卸しの基本機能に加え、発注点管理や構成品管理もカバー。ロットや賞味期限別、複数倉庫の在庫を横断管理し、適正在庫維持を徹底します。

汎用型倉庫管理システム AWMS

賞味期限・製番管理、履歴追跡、個数や重量単位など多様な商品管理に対応。誤出荷や長期滞留在庫の原因をデータで見える化し、期限切れや陳腐化リスクの低減に役立ちます。

庫太郎

クラウド上で入出庫・棚卸・在庫移動・廃棄まで一気通貫管理。タブレットでの現場入力やロット管理機能により、在庫差異や「眠り在庫」を減らせます。

製造業の資材・生産管理担当者向け（MRP×在庫最適化）

Aladdin Office

販売・購買・在庫を横断管理し、ロットや賞味期限、トレーサビリティに標準対応。生産管理やBtoB受発注とも連携し、工程横断で滞留在庫の原因を把握できます。

FutureStage 製造業向け基幹業務ソリューション

販売、生産、購買、在庫、原価計算まで一括管理。MRP（資材所要量計画）と生産実績を連携させ、部材の過不足やデッドストックを監視・是正します。

Progress-One 販売管理

販売・購買・在庫管理の基本機能に加え、ロット管理や多角的な分析機能を備えます。テンプレートベースながら業務ごとにカスタマイズしやすく、過剰発注や滞留在庫の原因を構造的に断ち切れます。

スマートＦ

クラウド型の生産管理システムで、在庫・工程・原価情報を一体的に管理します。バーコード利用で入出庫や棚卸し作業を自動化し、計画的かつ効率的な在庫管理を実現します。

不良在庫は早めの対応とシステム導入で解消しよう

不良在庫は、気付かぬうちに経営を圧迫しがちです。まずは現状の不良在庫に向き合い、値引き販売、買取業者への売却、寄付や廃棄など自社の状況に合った方法で積極的に処分に取り組みましょう。

あわせて、なぜ不良在庫が生まれたのか原因を分析し、再発防止策も実践することが重要です。適正在庫基準の設定や在庫回転率のチェック、精度の高い需要予測を進めることで、リスクを抑えられます。

最新の在庫管理システムを導入すれば、リアルタイムで在庫状況を把握し、客観的なデータに基づく管理体制を築けます。

日々の見直しと新しいツールの活用が、企業の安定した成長につながります。

もし「自社に合うIT製品・サービスが分からない」「どう探せばよいのか分からない」とお困りでしたら、あるいは「おすすめ製品・ベンダーを紹介してほしい」「詳しい人に相談したい」のような希望がありましたら、適切なIT製品・サービス選定に詳しいIT専門スタッフに聞ける・相談できるITセレクトのコンシェルジュ相談サービスを用意しています。ぜひご利用ください。（無料です！）

▼早速コンシェルジュ相談を申し込む