
物流の現場では、季節やイベントによる物流量の変化に毎年頭を悩ませることが多いです。こうした波動が起こると、業務の負担が一気に増えたり、コストや顧客対応でトラブルが発生しやすくなります。この記事では、物流波動の仕組みや現場に起こる影響、そして安定した運営のために役立つ対策やシステム活用法をご紹介します。日々の現場改善や業務見直しのきっかけに、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
物流波動とは
物流波動とは、季節やイベント、社会情勢などの影響によって物流量が大きく変動する現象を指します。物流量が大きく増加すると、物流現場は業務量が一気に増え、負担も増大します。また、コストの増加や顧客対応の遅れといった運営全体にも影響しかねません。
まずは、物流波動の仕組みを理解し、どんな影響があるかを把握しましょう。適切に理解して対応することが安定運営の第一歩です。
物流波動の定義と波動対応
商いにおいて、繁忙期やキャンペーンのほか、天候の急変や災害、社会的な出来事などにより物流量が増えると物流波動が発生しやすくなります。
こうした変動に合わせて、人員配置や倉庫スペース、在庫量などを柔軟に調整することを「波動対応」と呼びます。適切な波動対応ができれば大幅な物流増加の場合でも売上や利益を最大化できます。一方、物流量の増加に対して対応が遅れると出荷遅延や顧客満足度の低下につながります。
適切な波動対応をするためには、在庫管理の的確な把握も欠かせません。在庫管理については、「在庫管理システムのおすすめツールを徹底比較」をご確認ください。
物流波動が起こる主な要因
物流波動を引き起こす要因は主に3つあります。
- 年末年始やクリスマス、バレンタイン、お中元など、季節ごとのイベント
- セールやプロモーション、新商品の発売による急な需要の増加
- SNSでバズる、テレビで紹介される、台風や地震など予測しにくい外部要因
このように、予測しやすい変動と予測が難しい突発的な変動の両方があるため、幅広い対策が求められます。
物流波動は入出庫管理にも影響します。入出庫管理の概要については「入出庫管理とは? 効率化のポイント」をご覧ください。
物流波動が現場に与える影響
繁忙期やイベントのタイミングでは物流の大幅増が発生しやすく、物流波動が起きやすくなるタイミングです。業務負担が一気に増え、人員やスペースが足りなくなることが多くなります。
また、リソースの不足により、普段と違う体制で作業するとミスや遅延も発生しやすくなり、最終的にはコストや顧客満足度にも大きな影響が及ぶリスクをはらんでいるのです。
繁忙期と閑散期で生じるコストの課題
物流波動によって生まれる最大の課題は「繁忙期と閑散期」で物量に大きな差が生じることです。例えば、以下のような課題を抱えていると思います。
- ピーク時に人員や倉庫スペースを多く確保せねばならず、逆に閑散期には余剰が発生し、いずれもコスト、工数がかかる
- 遊休リソース(利用されていない、または十分に活用されていない状態のリソース)が増え、固定費=人件費や賃料が膨らむ
- だからといって平均的な物量でリソースを調整すれば、繁忙期にキャパシティが足りず商機、受注機会を逃してしまう
端的には、過剰投資も過少投資も経営効率を悪化させる原因となります。
物流波動の影響に対応していくには、まず「適正在庫」とはどういう状態かを理解しておく必要もあります。適性在庫についての詳細は、こちらの記事「適正在庫とは?」と併せてご覧ください。
現場トラブルや顧客対応への影響
もっとも、昨今の人材難やコスト削減の最中で、常に十分なリソースを適切に用意できている企業の方が少ないでしょう。とはいえ、そんな中での物流量の急増は現場に大きな負担がかかるのも目に見えています。例えば、以下の悪い事態が考えられます。
- 注文が集中すると出荷作業が遅れやすく、配送遅延や誤出荷のリスクが高まる
- 応援スタッフや新人が増えると経験不足から人的ミスが発生しやすくなる
- 顧客への納期遅れや品質低下は、クレーム対応工数の増化、さらには信頼性・ブランドイメージの悪化を招く
このように販売機会の損失に直結するため、物流量の急増、急変は現場の疲弊と悪循環を生み出しやすくなるのです。
物流波動への具体的な対策
では具体的に、物流波動による影響をどのように抑えていけばよいのでしょう。
物流波動による混乱を防ぐには、事前準備や計画的な対策、そして現場と管理部門が一丸となって対応する必要があります。まずは、需要予測や作業マニュアル、拠点の見直し、システム導入、アウトソーシング活用など、複数の手法を組み合わせて対策を講じましょう。
- 需要予測でリソース計画を立てる
- マニュアル整備と教育体制を強化する
- 物流拠点やスペースの最適化を進める
- マテハン・自動化設備の活用で負担を減らす
- WMS・システム活用による可視化と効率化
- アウトソーシングによる柔軟な運営体制づくり
需要予測でリソース計画を立てる
精度の高い需要予測が、波動対応の第一歩です。
過去の出荷データや売上傾向、季節指数を統計的に分析し、物量のピーク時期と規模を予測します。
AIや在庫管理システムの予測機能を使えば、急な需要変動にも備えやすくなります。
マニュアル整備と教育体制を強化する
物流波動のタイミングでは、現場に応援スタッフや新人が入ることが多くなります。誰が作業しても一定の品質とスピードを保てるよう、写真や図解、動画などを使った分かりやすい作業マニュアルの整備が重要です。
マニュアルがしっかり整備されていれば、応援スタッフも短期間で戦力になり、現場の混乱を防げます。また、平常時から多能工(複数作業をこなせるスタッフ)の育成を進めておくことで、波動時に柔軟な人員配置が可能になり、組織全体の対応力も高まります。
物流拠点やスペースの最適化を進める
拠点の配置や倉庫レイアウトの見直しも、波動対策に大きく関わります。拠点を一箇所にまとめて在庫を集約する「集約型」は固定費が抑えやすいですが、災害時のリスクが集中したり配送リードタイムが長くなる可能性があります。一方、複数拠点を各地に分散配置する「分散型」は、配送距離を短縮でき、災害リスクの分散にも有効です。
また、倉庫内では出荷頻度の高い商品を取りやすい位置に置く(ABC分析)など、作業動線を見直すことで作業効率が上がり、波動時の負担も軽減できます。
マテハン・自動化設備の活用で負担を減らす
マテハン(マテリアルハンドリング)機器や自動化設備の導入は、波動対応の有力な手段です。フォークリフトやコンベヤ、自動仕分け装置(ソーター)、AGV(無人搬送車)などを使うことで、作業のスピードアップや省力化が進み、少人数でも多くの出荷をこなせます。
さらに、重量物の運搬を機械化することでスタッフの身体的負担やケガのリスクも減らせます。自動化によってピッキングや仕分けの精度も向上し、人的ミスを減らす効果も期待できます。
自動認識の導入検討には「RFIDで在庫管理を効率化する方法|バーコードや2次元コードとの違い、メリット・デメリット、おすすめ製品13選」をご覧ください。
WMS活用による可視化と効率化
在庫管理システム、あるいは倉庫管理に特化したWMS(倉庫管理システム)の有効活用により、在庫や作業状況をデジタル化し、かつリアルタイムで管理できるようになります。システム化による主なメリットは以下の通りです。
- 現場状況をリアルタイムで把握でき、最適な人員配置や作業指示が可能
- バーコード管理や工程ごとの自動化でミスを大幅に削減
- 経験が浅いスタッフでも高品質な作業ができる
アウトソーシングによる柔軟な運営体制づくり
物流機能をすべて自社で抱えず、外部パートナー(3PL=サードパーティー・ロジスティクス)に委託する方法も有効です。アウトソーシングの最大のメリットは、人件費や倉庫賃料などのコストを「変動費」に転換できることです。
繁忙期には必要な分だけリソースを確保し、閑散期はコストを抑えやすくなります。また、物流の専門知識や効率化されたオペレーションを活用できる点も大きな魅力です。
ただし、業務のコントロールやノウハウの蓄積には注意が必要なため、パートナーの選定や情報共有の体制づくりがポイントです。
「配送」に関する平準化と可視化する対策については「輸配送管理システムのおすすめツールを徹底比較」も併せてご覧ください。
物流波動対策を成功させる3つのキーポイント
物流波動への対応は、一度の施策で終わりではなく、継続的な取り組みが不可欠です。関係者全員で意識を共有し、役割や対応策を明確にしながら、業務改善サイクル(PDCA)を定着させることが安定した運営の鍵となります。
- 情報共有と連携強化を意識する
- 業務の見直しと平準化を進める
- システム導入・外部パートナー選びも検討する
情報共有と連携強化を意識する
物流波動の予測や対策は、現場だけでなく経営層までしっかり伝達し、組織全体で連携できる体制づくりが大切です。たとえば、マーケティング部門がセールを企画する際には、内容や受注予測を事前に物流部門へ共有します。これにより、現場は人員や資材の準備を前倒しで進められ、トラブルの発生を抑えられます。
また、部門の壁を越えた情報共有と協力体制は、現場の安定運営に直結します。
業務の見直しと平準化を進める
物流波動対応は、ピーク時の処理能力を高めるだけでは不十分です。出荷や納品のタイミングを調整したり、セール期間を複数回に分けたりするなど、変動そのものを「なだらかにする」工夫も重要です。
また、日常業務に潜むムリ・ムダ・ムラを見直し、PDCAサイクルを回して改善を続けることも業務の平準化につながります。これにより、現場負担の均等化やトラブルの予防にもつながります。
システム導入・外部パートナー選びも検討する
WMSなどのシステム導入や、物流アウトソーシングの活用も、波動対策の有力な手段です。システム選びでは、機能の豊富さだけでなく、使いやすさや既存システムとの連携、サポート体制などを総合的に確認しましょう。
外部パートナー選定も、コストだけでなく実績や波動対応力、情報共有のしやすさ、パートナーシップの築きやすさなど、複数の観点で見極めることが大切です。
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