
クラウド型ワークフローシステムは、企業の申請・承認業務をオンラインで管理し、業務の効率化やペーパーレス化を進める仕組みです。従来の紙ベースの手続きや社内サーバーでの管理と比べ、より迅速で柔軟な運用が可能になります。本記事では、クラウド型ワークフローシステムの特徴や仕組み、導入のメリット・デメリット、選び方のポイントを詳しく解説します。
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目次
クラウド型ワークフローシステムとは?
企業で日常的に行われる稟議や経費精算、休暇申請などの申請・承認業務を、オンライン上で完結できる仕組みが「クラウド型ワークフローシステム」です。
従来は紙の申請書を作成し、担当者や上司へ回覧・承認を依頼していたため、内容不備や捺印の手間、書類の紛失リスクなどが発生しがちでした。クラウド型システムを導入すると、こうしたやり取りをすべてデジタル化でき、業務全体の効率化につながります。
クラウド型ワークフローは、紙での運用に比べて印刷や保管にかかるコストが減るうえ、ペーパーレス化が進むと書類整理の手間も大幅に減らせます。さらには、オフィス以外の場所からでも申請や承認を進められるため、テレワークや出張の多い環境でも承認業務が進めやすくなります。
クラウド型製品は、システムそのものの保守・更新作業をサービス提供会社(ベンダー)が担うケースが一般的です。社内のIT担当者の負担が軽減されることも、クラウド型を選ぶメリットの一つです。最近では、ITに詳しくない方でも扱いやすいサービスが増え、よりスムーズに導入しやすい環境が整ってきています。紙での運用や自社サーバー型(オンプレミス型)システムとは異なり、より柔軟に運用しやすい手段として注目を集めています。
この1ページで解決ワークフローシステムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントを徹底解説
クラウド型ワークフローシステムの仕組み
クラウド型ワークフローシステムは、インターネット経由で「ソフトウェアの機能」を利用できるサービスです。ユーザーはPCのWebブラウザや専用アプリからアクセスし、画面上で申請書を作成・提出します。提出された申請データは、あらかじめ設定されている承認ルートに沿って自動的に関係者へ通知される仕組みです。
たとえば経費精算の申請があった場合、設定ルールに基づいて金額の大きさや申請者の部署・役職をチェックし、必要な承認者を判定します。承認対象者は通知を受け取った時点で、オンライン上で内容を確認し、承認または却下の操作を行うだけです。紙の回覧や押印のように物理的な受け渡しがいらないため、差し戻しがあっても処理が迅速に進みます。
また、多くのツールでは電子署名やコメント機能を用意しています。契約書レビューなど重要書類のやり取りもツール上で完結できるほか、承認フローや操作ログが正しく記録されるため、内部統制の強化にもつながります。過去の申請データを検索したり、決裁済みの文書を自動保管したりする機能も一般的で、保管スペース不要や紛失リスクの低減といった利点が期待できるでしょう。
なお、機能のバージョンアップやセキュリティパッチ適用などのメンテナンスは、クラウドのサービス提供会社が担います。自社でサーバ環境を構築するオンプレミス型よりも、管理にかかる負荷が軽減されるのが大きな特徴です。
クラウド型とオンプレミス型の違い
ワークフローシステムは大きく分けると、クラウド型(SaaS)とオンプレミス型の2種類があります。クラウド型はサービス提供会社が用意するサーバー環境を利用する形態で、インターネットを通じて常に最新の機能にアクセスできます。一方、オンプレミス型は自社サーバーを構築し、自由度の高いカスタマイズが可能です。両者を比較すると、以下のような違いがあります。
| 比較項目 | クラウド型 (SaaS) | オンプレミス型 |
| 導入 | 比較的容易・迅速。サーバー構築不要 | サーバー構築・設定が必要で、導入に時間がかかる |
| サーバー管理 | ベンダー側が実施するため、社内負担が軽い | 自社で管理が必要。障害時の対応も含め、専門知識を要する |
| アクセス場所 | インターネット環境さえあればどこからでも可 | 社内ネットワークが前提。外部から使うには追加設定が必要 |
| 初期費用 | 低コスト、または無料トライアルあり | ハードウェアやソフトウェアのライセンス調達費が高額になりやすい |
| 運用コスト | 月額・年額のサブスクリプション費用が継続 | 定期的な保守費用や人件費が発生。自社管理故にコントロール性は高い |
| カスタマイズ性 | 提供機能の範囲内で設定可能。個別の大幅カスタマイズは難しい場合が多い | 自由度が高い。ソースコードレベルで独自カスタマイズしやすい |
| システム更新 | ベンダーが自動的に行うため、ユーザー側の手間が少ない | 自社でアップデートやセキュリティパッチ適用を計画・実施する必要がある |
| セキュリティ対策 | ベンダーに依存する部分が大きいが、高度な環境が提供される場合も多い | 自社ポリシーに合わせられるが、維持管理に手間とコストがかかる |
| 他システム連携 | 標準APIやファイル連携などベンダーが提供する手段を利用 | 既存の社内システムとの連携を自由度高く行えるケースが多い |
クラウド型はオンプレミス型と比較し、初期費用が抑えられ、導入時のスピード感を重視する企業には魅力的です。一方で、セキュリティポリシーが厳しく、外部へのデータアウトソースが難しい場合や、業務要件が非常に特殊で大幅なカスタマイズが必要な場合は、オンプレミス型を検討することもあります。最終的には自社の環境や方針、予算のバランスを踏まえて選択するのが望ましいでしょう。
ワークフローツールについてもっと深く知りたい方は「ワークフローツールとは?」もご覧ください。
クラウド型ワークフローシステムのメリット
企業がクラウド型ワークフローシステムを導入する際、業務効率やコスト削減だけでなく、働き方の多様化やセキュリティ強化など、さまざまな恩恵が期待できます。ここでは、代表的なメリットを順番に解説します。
- 社外でもアクセスできる
- 導入や運用にかかる負担を軽減できる
- 申請や承認にかかる時間を短縮できる
- 情報を安全に管理できる
- 既存のシステムと連携しやすい
社外・出先でもアクセスできる
クラウド型ワークフローシステムの大きな強みは、場所に制約されない点です。インターネット環境があれば、自宅や出張先、移動中など、オフィス外からでも簡単に申請や承認が可能です。たとえば承認権限を持つ上司が出張に出ていても、スマートフォンやタブレットから承認操作を行えば、稟議申請が止まることなくスムーズに進みます。不在時の業務停滞を減らせるため、全体的な処理スピードが向上しやすいのが特徴です。
また、社外からアクセスできる利点は、テレワークの普及にも大きく寄与します。場所を問わず業務が行えることで、多様な働き方を実現しやすくなり、ペーパーレス化も促進されるでしょう。常に承認状況が可視化されるため、申請者側もストレスなく手続きを追跡できます。
導入や運用にかかる負担を軽減できる
サーバー機器やソフトウェアの導入を自社で行わなくても済むのが、クラウド型のメリットです。サービス提供会社側がシステム環境を整備しているため、導入の初期コストを大幅に抑えやすくなります。加えて、システムの保守・運用やセキュリティ対策、法改正対応などのアップデート作業もベンダーに一任できるので、IT担当者の業務負担が軽くなるでしょう。
月額制や年額制のサブスクリプション料金で利用できるケースが多いので、必要なユーザー数や機能プランに合わせてコスト調整しやすい点も特徴です。従業員数が増減しても、ライセンス数を柔軟に変更するだけで対応可能です。こうした仕組みは、中小企業のようにITリソースが限られた組織にとっても、導入しやすさにつながります。
申請や承認にかかる時間を短縮できる
ワークフローシステムは、承認フローを自動化・可視化する機能を備えています。紙の書類では、承認ルートがどこで滞留しているかを把握するのが難しく、差し戻し時も紙を探し出して修正・再回覧するなど、手間がかかりがちでした。クラウド上で申請状況を一覧表示すれば、誰の承認待ちなのかがひと目で分かり、必要に応じてリマインド通知を送ることも容易です。
また、申請フォームに入力チェックを設定しておけば、不備や計算ミスを自動で検出でき、差し戻し回数が減ります。一定金額以下なら上司1名の承認だけで完了するなど、条件に応じてプロセスを自動化・簡略化する機能が用意されているサービスもあるため、余計な待ち時間を削減できます。結果として意思決定がスピーディになり、ビジネスの機会損失を抑える効果も期待できます。
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情報を安全に管理できる
インターネットを介するクラウドサービスに不安を抱く企業もありますが、多くのワークフローベンダーはセキュリティ技術に力を入れています。通信経路の暗号化(SSL/TLS)や厳格なアクセス権限管理、監査ログ(操作履歴)の自動記録といった基本機能を備えており、外部からの不正侵入や内部不正を防ぎやすい構造です。
さらに、会社の機密情報を取り扱うシステムの特性上、ISMS(ISO/IEC 27001)やSOC2などのセキュリティ認証を取得しているベンダーも多く、こうした第三者基準を満たしているかどうかは、サービス選定時に確認すると安心です。災害やオフィス設備のトラブルでデータが失われるリスクが低いのも利点で、BCP(事業継続計画)の観点からも優位性があります。
既存のシステムと連携しやすい
クラウド型ワークフローシステムは、経費精算や勤怠管理、人事情報、会計ソフトなどの既存システムとAPIやファイル連携をすることで、データ入力の手間を一気に減らせます。たとえば、ワークフローで承認された経費精算データを会計ソフトに自動反映させれば、経理担当者の手入力が省けるためヒューマンエラーを防止できます。
また、電子契約システムを連携させて、契約書作成から社内承認、取引先への電子署名完了まで一連のプロセスをオンラインで完結させるケースも増えています。社内に点在している情報をワークフローシステムで一元化して、業務全体を見える化することが可能になるのです。事前にどのようなシステムとの連携が可能かを確認することで、より大きな効率化効果を得られるでしょう。
クラウド型ワークフローシステムのデメリットと注意点
クラウド型の利点は多いものの、導入・運用する際にはいくつか注意すべき点もあります。事前に理解して対策を考えておくことで、不要なトラブルや導入後の後悔を防げるはずです。
- 設定や機能の変更に制限がある
- インターネット環境が必要
- 長期的な運用コストを考慮する必要がある
設定や機能の変更に制限がある
自社運用のオンプレミス型に比べると、クラウド型ではシステムの仕様を大幅に変えることが難しくなる場合があります。提供会社が用意する標準機能や設定範囲内での利用が基本になるため、業界特有の複雑な承認プロセスや大掛かりなカスタマイズには対応できないことがあるでしょう。
しかし、これを逆手に取り、「業務プロセスをシステムに合わせてできるだけシンプルに見直す」というアプローチで効率改善が進むケースも少なくありません。どうしても大きな改修が必要な場合は、オプション費用や追加開発の可否をベンダーに確認しておくことが重要です。
インターネット環境が必要
クラウド型はインターネットに依存するため、ネットワークが不安定な環境では処理が遅くなったり、障害によってアクセスできなくなったりするリスクがあります。特に、大容量ファイルのアップロードや多数のユーザーが同時にアクセスするような場面では、回線速度の影響が顕著に表れやすいです。
また、企業のセキュリティポリシーによっては外部アクセスが制限される場合もあります。導入前に社内規定との整合性をしっかり検討しましょう。大規模な障害や災害の発生時には、サービス提供会社側やインターネット回線自体がダウンする可能性も否定できず、BCP(事業継続計画)の観点でバックアップ手段を検討しておくと安心です。
※災害、システム障害、不祥事、感染症のまん延といった予期せぬ緊急事態が発生した際に、企業が損害を最小限に抑え、重要な業務を継続または早期に復旧させるための方針、体制、手順などを示した計画。
長期的な運用コストを考慮する必要がある
クラウド型は初期投資を抑えやすい反面、月額または年額の利用料が発生し続けるため、長期的に見ると費用負担が大きくなるケースもあります。ユーザー数の増加や高機能プランへの移行に伴い、当初想定よりもコストが膨らむケースがある点にも注意が必要です。
また、標準機能では足りない部分をカバーするために追加オプションやサポート契約を結ぶと、想定外の料金が発生することもあります。トライアル段階で必要な機能が含まれているか確認し、3~5年程度のスパンで総コストを試算したうえで導入を判断することが大切です。
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クラウド型ワークフローシステムの導入ステップ
効果的な導入を目指すには、単にシステムを契約するだけでなく、事前の準備や導入後のフォローが欠かせません。一般的な導入手順と、それぞれのポイントを見ていきましょう。
- 現在の申請・承認フローを確認する
- 導入に必要な条件を決める
- 無料で試せるサービスを活用する
現在の申請・承認フローを確認する
まずは、社内でどのような申請があり、どの担当者を経由して最終決裁に至るのか、現状のフローを正確に把握します。時間がかかっている部分や紙でのやり取りが多いプロセスなど、具体的な課題を洗い出すのが重要です。申請件数や処理時間を計測しておくと、導入後にどの程度改善されたかを定量的に比較できるようになります。
さらに、現場担当者や承認者からヒアリングを行い、どこがボトルネックになっているかを探りましょう。実際の運用実態を詳細に確認してからでないと、システム化による真の課題解決は難しくなりがちです。
導入に必要な条件を決める
続いて、どんな機能や連携が必要か、費用はどのくらいまで許容できるかなど、システムに求める条件を明確にします。セキュリティ要件や社内システムとの連携方法、カスタマイズの必要性といった項目をリストアップし、優先順位を付けると検討しやすくなるでしょう。
また、予算だけでなく、導入後の運用体制やサポートが受けられる時間帯、問い合わせ方法など、細かな運用面も事前に確認しておくのが望ましいです。特にユーザーインターフェースのわかりやすさは現場がスムーズに使い始めるうえで重要になるため、デモや説明資料をしっかりチェックすることを推奨します。
無料で試せるサービスを活用する
最後に、候補のクラウド型ワークフローシステムをいくつかピックアップしたら、可能な範囲で無料トライアルやデモ環境を利用して実際に操作感を確かめましょう。代表的な申請フローを仮設定し、現場担当者にも操作してもらうことで、使い勝手や機能の充実度を肌感覚で把握できます。
複数のサービスを同時期に試せれば、比較がしやすくなるはずです。必要な機能が標準搭載されているか、追加費用や上位プランに切り替えないと実現しないのか、といった点を把握するだけでも導入後の予想が立てやすくなります。 実際の検証を丁寧に行うことで、導入後の「やっぱり要件を満たしていなかった」「現場が使いづらくて定着しない」というリスクを最小限に抑えられるでしょう。
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