米MicrosoftがCESで発表した「Media Center Extender」(MCX)は、Media Center PCと連携するための家電向けクライアントソフトウェアだ。これを搭載した端末は、いわばマイクロソフト版の「RoomLink」となり、Media Center PCに蓄積された動画や画像、音楽などをネットワーク経由でテレビに映し出すことができる。
CESの会場では、Hewlett-Packard(HP)、Gateway、Alienwareなどの機器ベンダーがセットトップボックス型のプロトタイプを公開しているほか、HPはMCXを内蔵したテレビも開発中だという。Microsoft Windows eHome Divisionのトム・レーメル(Tom Laemmel)プロダクト・マネジャーに詳しい話を聞いた。
MCXの基本的な機能は、Media Center PCで録画したMPEG-2ファイルや、MP3などの楽曲、JPEGなどの写真をネットワーク経由で取得し、テレビやオーディオ機器で再生すること。ネットワーク伝送時のビットレートなどは明らかにされていないが、レーメル氏は「DVD品質はもちろん、HDにも対応できる」と胸を張った。また、ネットワークはEthernet(有線LAN)にくわえ、無線LANにも対応。「実装はメーカーの判断によるが、MCX(ソフトウェア)はIEEE 802.11a/gの両方をサポートしている」(同氏)という。
ただし、ここまでなら多くのメーカーが既に販売しているネットワークメディアプレーヤーと何ら変わらない。同社“ならでは”の部分は、どこにあるのか。
1つは、Media Center PCにインストールされたゲームなどのアプリケーションをテレビ画面でプレイできること。実は、MCXの技術は「Remote Desktop」に非常に近いもので、処理の多くはMedia Center PC側で行うという。つまり、PC上で動作しているゲームの画面だけを伝送し、テレビに表示する仕組みだ。MCXが他社製ネットワークプレーヤーより、むしろ「Smart Display」などに近い端末だということが分かる。
もう1つは、「Media Center独自のインタフェースを活かし、テレビ画面やオンラインサービスとのシームレスな連携が可能になる」(レーメル氏)ということ。たとえば、メニュー画面から「Online Spotlight」を選択すると、インターネット経由で各種のオンラインサービスが利用できるのだが、通常のWebサイトと異なり、サービスに入ってからも画面(GUI)のイメージはMedia Center PCのままなのだ。
MCX側で画面の変換処理を行っているわけではない。Microsoftは、2003年7月にOnline SpotLightのデベロッパー向け開発キットをリリースしており、これを使ってサービス提供会社が専用サイトを制作したためだ。
通常、テレビによるWeb閲覧は、解像度の違いなどから満足に表示できないケースが多い。しかし、テレビ出力を前提としたMedia Center PCのGUIであれば、それがオンラインサービスであっても見やすいのは当然だろう。また、このキットを使うと、「たとえばWeb画面の中に放送中のテレビをピクチャーインする」といったMedia Center PCの機能を活かしたインタフェースが容易に作成できるという。
「MCXとOnline Spotlightは、リモコンだけで操作できる、簡単なインタラクティブTVを提供するもの」(レーメル氏)。なお、Online Spotlight対応のオンラインサービスには、Napstarの音楽配信、Kodakのオンラインストレージ、MovieLinkの映画配信などが含まれる見込み。
気になるのはMCX製品の登場時期だが、レーメル氏によると「2004年のホリデーシーズンまでには、全世界的に製品出荷が開始されるだろう」。また、日本法人の担当者は「日本でもほぼ同時にリリースされる見込みだ」と話していた。
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