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ソニー安藤社長、「ライバルは日本企業じゃない」2004 International CES(1/2 ページ)

» 2004年01月10日 02時44分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 「デジタル時代にソニーが乗り遅れて不調、なんて話がある。しかし、実態とは乖離(かいり)した認識だ。今のデジタル家電業界は、3カ月ごとに状況が一変する。最新の情報を元に、我々の売り上げを見て話して欲しい」。

 ソニー社長兼COOの安藤国威氏はInternational CES初日に設定された記者との昼食会でそう力強く話した。そのコメントの裏には、国内市場におけるプラズマテレビ、ハイブリッドレコーダの好調さ、それに急速に改善されてきている米国でのテレビ市場がある。「国内でのライバル?たとえばハイブリッドレコーダ。PSXをカウントせずとも、スゴ録だけでも彼らのシェアを超えている」(安藤氏)。

 昼食会の直前、松下電器産業AVC社の大坪文雄社長が見事な基調講演で好評を博したが、安藤氏の頭の中に国内のライバルは存在しない。「強力な競争相手としては、韓国のSamsungやLG Electronicsを強く意識している」、さらには「AVとITが融合したデジタル家電の世界では、他のフィールドからも強力なライバルが出現する。米国の家電市場で30%のシェアに達しようとしているDellも、その一つに挙げられる」と語った。

デジタル家電時代はITドッグイヤー並のスピード経営が必要

 デジタル家電は別名IT家電とも言われ、PC世界で培われたソフトウェア技術、ハードウェア技術、ネットワーク技術を活かした製品となっている。各社はハードウェア開発と共にソフトウェア開発にも追われ、ソフトウェア次第で優位性は移ろう。

 「IT業界は3カ月に1回の新製品発表というあわただしい世界。しかしIT家電もまた、3カ月で情勢が一変する。この流れは止めることができないものだ。Dellは(IT業界での経験とノウハウを活かして)この業界に参入し、米国のIT家電業界において30%ものシェアを占めるようになった。Gatewayも参入し、AppleもiPodで市場を作った。IT業界はみんなAVの世界へと参入している。

 かつて30万人の来場者を誇ったCOMDEXは、今や5万人の来場者しか集められない。ではみんなどこに行ったのか? International CESが足を向けるべき場所だと、みんなが知っている。こうした環境において“勝つ”には、ITと同じようなスピード感ある経営を行わなければならない」(安藤氏)。

 踵を返すように素早く舵取りをした結果、ソニーはデジタル家電時代をリードするポジションに戻った、というわけだ。

 実際、昨年末のソニーは非常に好調なシーズンを送った。冒頭で述べたプラズマテレビ、ハイブリッドレコーダはもちろん、一時はキヤノンの独走を許していたデジタルカメラも「昨年末にやっと追いついた。もうすぐ逆転するんじゃないか」と安藤氏。液晶テレビではシャープに若干の遅れを取っていることを認めつつも「海外にも目を向けて欲しい。国内のライバルに対し、圧倒的に優位な位置にある」とアピールする。

 バイオ事業での巨額の赤字もあったが「家電メーカーでバイオほど成功している製品はない。バイオが昨年失速したあと、私は儲からないならやめろ、安売りならやめろと話した。その結果、BestBuy(米国の巨大家電量販店)との付き合いをやめたら、“バイオ、USでのシェア大幅減”と言われてしまった。確かにシェアは落ちた。しかし、これは失速じゃなくて、自分たちの判断で損をしてまで売ることをやめたのだ。営業の方針を自分たちでコントロールする能力を我々は持っている。IT業界は三カ月に一度変わるんだから、一回や二回、休んだっていいじゃない」(安藤氏)。

 米国におけるBestBuyでのソニーの売り上げは、中南米各国の合計金額を上回るという。ここまで流通が大きな存在になると、ベンダーと流通の力関係が問題になってくるのは、日本でも米国でも同じだ。量販店の“ソニーはいらない”の一言で、振り回される可能性もある。安藤氏は「自分たちの製品ブランド、コンセプトを、消費者にきちんと知ってもらわなければならない」と話す。“ソニーじゃなくてもいい”製品では流通の力に負けてしまう。言い換えれば、他メーカーに置き換えることができない、ブランドやコンセプトを構築できるか否かが鍵になる。

ライバルは日本企業ではない

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