松下電器産業ブースでは、既に「International CES」や「CEATEC JAPAN」では常連となった“AVCサーバ”が出展されている。例によって参考出展の域は出ないが、これまでと異なるのが、「DIGAをベースにネットワーク機能を付加しており、かなり製品に近づいている」(同社)という点だ。また、米国市場を意識したホームセキュリティ機能を付加している。
AVCサーバは、2002年のCEATECで初めて登場した後、1年半に渡って開発が進められてきた。展示されるたびに外観がころころ変わるのもAVCサーバの特徴だが、今回はアルミ製の高級感漂うピュアオーディオライクな筐体を身にまとっている。
機能を一言で表せば、ネットワーク配信機能を持つハイブリッドレコーダー。ルータ機能は持たないが、DIGAと同じMPEG-2/MPEG-4録画が可能なほか、宅内にある専用クライアントに対してはMPEG-2を配信できる。楽曲ファイルや画像の配信も可能だ。同社によると、配信には、DHWG(Digital Home Networking Group)の技術を用いる方向で検討を進めているという。
さらに展示会場では、松下電工製のカメラ付きドアフォンなどと連携し、テレビ画面で来客を確認したり、不在時には動画をHDD録画するといったホームセキュリティ機能のデモンストレーションが行われていた。「ドアフォンやカメラはコンセプトだが、米国のライフスタイルに合わせて提案したもの」(松下電器産業マルチメディアシステム開発グループの中安哲行主任技師)。
一方の専用クライアントは、新たにテレビ一体型が追加されていた。単体クライアントと同様、SDメモリーカードスロットを持ち、クライアントだけでスライドショウなども行える。
東芝の「Advanced Digital Media Server」と違い、松下のAVCサーバーはHD録画のサポートは表明していない。しかし、同じ場所でIEEE 802.11aを使ったHD伝送のデモンストレーションも行われており、将来的にHDTVを録画/配信することが前提となっていることが伺える。
ただし、その時にボトルネックとなるのが宅内ネットワークだ。100BASE-TXのEthenretでは新規の敷設工事が必須となり、日本の住宅事情には適さないうえ、複数のクライアントに対してHD動画を配信するには帯域も不足する。
そこで松下は、東芝と同様に「Multimedia Over Coax Alliance」(MoCA:モカ)の“Coax LAN”を採用、2005年の製品化を目指して開発を進めているという。さらに先日の基調講演で話題となった電灯線通信を使い、170Mbpsの高速な宅内バックボーンを構築する構えだ。
松下の電灯線通信は2M−30MHzの周波数帯域を使うが、ここにはアマチュア無線に割り当てられている周波数が含まれ、このためノッチングを行う必要がある。しかし、昨年JARL(日本アマチュア無線連盟)立ち会いのもとで行われた実証実験においてはそれが「不十分」と判断され、規制緩和が先送りされた。
「2004年の春頃に再度、実証実験を行い、1−1年半後の規制緩和を目指したい。前回の失敗を踏まえ、今回は慎重にことを進める」。なお、それに先立ちHome Plug AVの標準化が進められる予定だ。「2004年夏頃にはドラフト仕様が公開される見込みだ。できれば、2005年頃には製品化したい」(同社)。
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