この開発は、各種センサーを日本アレフが行い、センサーと組み合わせる無線モジュールを三菱電機が担当。千歳科技大はシステムの実証実験を行うことになっている。
製品化までの詳しい予定はまだ決定していないが、2005年から実証実験を開始して「2005年中には製品化したい」と三菱電機の稲坂朋義氏(三菱電機情報技術総合研究所ネットワークソリューションシステム部センサネットワークチームリーダー)は述べている。
実証実験は北海道経済産業局と連携して行われる「地域新生コンソーシアム研究開発事業」の一環である「低消費電力無線センサネットによる次世代生活支援システムの開発」プロジェクトの中で実施される予定。このプロジェクトは開発3社以外に、清水建設や複数の北海道企業も参加する。
「特定小電力無線を利用したセンサネットワークの開発や研究を行い、高齢化社会においても安心・安全な未来型快適居空間を提供する」(堀之内英氏 千歳科技大講師)
今回開発を進めているセンサーモジュールの特徴は、設置の容易な無線ネットワーク方式の採用と、ボタン電池一つで一年間動作させる低消費電力を実現した電力管理機能の実装だ。
従来、センサーユニットは有線でホストと接続されて取得したデータを送っていたが、ケーブルの敷設などで初期投資が大きくなる欠点があった。これを無線ネットワークで接続することで、設置コストを抑えられるようになると、開発関係者は期待する。
ユニークなのが無線ネットワークの方法。現在低コストでインフラの整備ができる無線LANの規格としてIEEE 802.11bが広く採用されている。しかし、開発中の無線センサー端末は429MHz帯の特定小電力無線を使い、アドホック方式で設置したセンサー端末とホストと接続するするようになる。「特定小電力無線」と「アドホックネットワーク」と無線LANでは一般的でない方式を採用した理由として、開発関係者は次のように説明している。
「このようなセンサーモジュールを設置するのは、セットワーク技術者でないことが多い。この場合(各種設定が必要なインストラクチャモードより)、設置するだけでほかの端末と自律的に接続を確立できるアドホック方式のほうが有利である」(稲坂氏)
「免許不要」ということで採用が決まった特定小電力無線は、到達距離50メートル以上と微弱無線の10倍の距離までカバーできる。最大転送レートは2.4Kbps。商用ネットが登場したころを思い出させる「速さ」だが、センサーが感知したデータを送る分にはこれで必要十分ということらしい。
ただし、最近のホームセキュリティシステムで注目されている「画像」は、この速度がネックとなって扱うことは困難。特定小電力無線でも「複数のチャネルを当時に使用することで転送レートを挙げることは可能」と三菱電機の志賀稔氏(三菱電機リアルタイムプラットフォーム技術部システムLSI構築技術チームリーダー)は説明するが「今のところその方式を採用する予定はない」(志賀氏)
画像の扱いについては日本アレフの長屋潔氏も「自社の製品で画像センサーも扱っているので、開発するシステムに組み込むのは技術的に不可能でない。しかし、監視システムに画像を利用することは、プライバシーの問題もあって、ユーザーもあまり積極的でない」と述べている。
開発システムのもう一つの特徴である「低消費電力」は、システムにかかる負荷に併せて消費電力を動的に変化させることで実現させた。「(制御用プロセッサとして搭載された)M16Cに実装されている動作クロック可変機能を、開発するソフトウェアによってコントロールする。システムにかかる負荷もソフトウェアで検知する」(志賀氏)
今回開発するシステムのメイン市場として現在考えられているのは、盗難増加や高齢者世帯増加で需要が急激に伸びている「ホームセキュリティ」分野。現在開発中に付き、販売価格や販売形態についてはっきりとしたイメージは出来上がっていないものの、「例えば、ドアのカギを交換するのに現在数万円かかっている。このセンサーを使った製品は当然それよりも安い価格で販売しなければならない。コンシューマーにおける価格は今の段階で数千円というあたりを目指している」(稲坂氏)
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