MultiBand OFDM Alliance(MBOA)は1月27日、標準化に向けてSpecial Interest Group(SIG)を設立をすると日本で発表した。参加企業は、フィリップス、テキサス・インスツルメンツ(TI)、インテルなど50社以上。SIGの設立により、IEEE(電気電子技術者協会)のUWB作業部会における標準化競争を優位に進める狙いがある。
MultiBand OFDM は、その名の通りマルチバンドとOFDM方式を使うUWB(Ultra Wide Band)技術。PCと周辺機器、あるいはコンシューマーエレクトロニクス機器の短距離接続を目的とするWPAN(ワイヤレス・パーソナル・エリア・ネットワーク)にフォーカスしており、伝送距離が3m以内なら速度は480Mbpsに達する(6mまでなら200Mbps、11m以内では110Mbpsと段階的に下がる)。また、消費電力は平均250mWと「IEEE 802.11a/gの10倍、Bluetoothの50倍という高い効率を持つ」(フィリップスのクレショト・キムヤジャオゥル氏)のも特徴だ。
MBOAがSIGを設立した背景には、昨年行われたIEEEの802.15.3aタスク・グループ(UWB作業部会)会合で、標準仕様の承認に必要な75%の賛同を得られず、最終決定に至らなかったという経緯がある(記事参照)。しかし、得票率は60%とライバルのモトローラが推すDS-CDMA方式を上回り、また「直近の(UWB)会合では、MBPAに賛同する企業数の増加も見られた」という。
ただし、本来なら2003年夏には決定するはずだった標準化に失敗したことで、「各社の製品ロードマップやUWB市場そのものに影響を与える恐れもある」(インテル、R&D日本ブランチ室長の遠藤千里氏)。このため、MBOA主導による標準スペックを先に完成させ、IEEEの活動と並行して製品化の準備を進めるというのがMBOAの戦略だ。「IEEEへのコミットも表明する一方、IEEEのプロセスに関わらず、独自のスケジュールで作業を進める。これがスペックの標準化につながると考えている」(キムヤジャオゥル氏)。
そのためにまず、アライアンスを発展させる形でSIGを設立し、2004年5月をメドにMBOA参加企業の総意による「リリース1.0スペック」を公開する計画だ。「MBOAでPHYおよびMACのスペック開発を行い、IEEE標準化の問題が解決した後で、MBOAのスペックをIEEEに還元する」(遠藤氏)。また、スタッカート・コミュニケーションのマーク・ボウルズ氏によると、スペックの策定作業は、現在50社から100人ほどのエンジニアを集めて進めており、「5月には、かなり“成熟”したものを出せる」という。
さらにMBOAでは、その先のスケジュールも明らかにした。これによると、2004年第4四半期にはMB-OFDM対応チップのシリコン・サンプルを出荷開始。2005年の第1四半期には統合モジュール、同じく第2四半期には製品の出荷を始める計画だ。「最初の製品は、PC周辺機器もしくはCE機器になるだろう」(遠藤氏)。
なお、国内でもMBOAの利用に向けた作業は進行中だ。マルチバンドのうち、マイクロ波に当たる部分の利用に関して、既に情報通信審議会に提案中。「作業班を設け、3月末の答申に間に合わせるよう、各種データを収集しているところだ。MMACに対しても近日中に技術説明会を行う」(日本テキサスインスツルメンツDCESストラテジックマーケティング副本部長の福井健人氏)。スケジュール通りにいけば、夏頃には法制化が期待できるという。
「MBOAは、世界各国の法制度に柔軟に対応できる。すべてのUWB関連業界団体と協力しながら標準化を目指す」(福井氏)。
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