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航空機――機内で携帯は「NG」、だが無線LANは「OK」へ?

» 2004年03月03日 16時36分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 航空機の中で、携帯電話の使用は禁止されている。しかし、無線LANを利用することは可能――となるかもしれない。

 今年1月に改正航空法が施行され、日本国籍の航空機内での携帯電話の使用が、はっきり「禁止命令の対象となる行為」として定められた。機長が止めるように命令してなお、その行為を行った場合(禁止命令に違反した場合)、50万円以下の罰金が科せられる(記事参照)。

 同法では現状、無線LANなどもこの禁止命令の対象。ところが、日本航空(JAL)のように、航空機内で無線LANサービスの提供を考える企業もある。これはいったいどうしたことになるのだろう?

携帯電話はやはり「NG」

 まず確認したいのが、なぜ、携帯電話の使用が禁止されるのか。改正航空法では、「離着陸時のみ作動させてはならない電子機器」と「常時作動させてはならない電子機器」とを分けており、携帯は後者にあたる。

 理由は言わずもがなのことだが、「航空機のフライトシステムに悪影響を及ぼす」からだ。携帯電話はこれまでも、心臓ペースメーカーなど医療機器を誤作動させると指摘されてきた。ロケット爆発事故の際、原因は携帯電話でないかと取りざたされたこともある(記事参照)。JALの広報によれば、やはり「携帯電話は、計器に異常を及ぼすと疑われている」のだという。

 「それほど頻繁ではないが、実例もある。各航空会社と情報交換していると、携帯電話が原因と見られる異常があったようだ」。

 改正航空法を施行した国土交通省も、「オートパイロットのシステムに、異常をきたしたと聞いている」と話す。

 「『決定的に影響があるのか』と問われれば、技術的に証明できているわけではない。だが、影響がある可能性は高い」。危険回避を優先する観点から、規制へと傾いたようだ。

無線LANは「OK」になる?

 ここで気になるのが、無線LANの問題だ。例えばJALは、航空機内でのブロードバンドサービスを予定している(記事参照)。サービス提供に当たっては有線LANと無線LANの両方がありえるが、「シートに有線を導入するのは難しい」(JAL広報)ことから、無線LANが有力視されている。

 実際、JALの場合、ボーイングのビジネスユニットの一つ、Connexion by Boeing(CBB)から技術提供を受ける予定だが、CBBでは、フェーズドアレーアンテナの技術を利用し、衛星――機内間で通信を確立する。そして機内では、ユーザーは、イーサネットポートを搭載したノートPCや、設定および動作確認済みのIEEE 802.11b準拠の無線端末を用意して、サービスに登録すればいい、とされている(同社サイト参照)。無線LANサービスの提供は当然、視野に入っているわけだ。

 だが、改正航空法では、携帯電話同様、無線LANも禁止されている、と考えられる。国土交通省の発表したリリースを見ると、“常時作動させてはならない電子機器”として、「作動時に電波を発射する状態にある」電子機器が挙げられているからだ。

 実際、同省に問い合わせたところ、「無線LANカードを挿したノートPC、PDAなどもこれに該当する」という判断だった(なお、“作動時に電波を発射しない状態にある”ノートPCおよびPDAであれば、「離着陸時にのみ作動させてはならない電子機器」に分類される)。

 ただし……と、担当者は言葉を続ける。

 「今後、安全性が確認できた無線通信については、法規制を外すことも検討する。実は、JALの件でも話は聞いている」。

 機内への無線LANの導入は、「旅客の利便性を向上させるシステム」(同省)といえる。このため、安全性の問題さえクリアできれば、サービス提供を認めることに同省は前向きのようだ。

 では安全性は立証できるのか。この点をボーイング社に尋ねたところ、Connexion by Boeingでは「3年にわたり、地上および空中で実験・研究を重ね、搭載機器に悪影響を与えないことを立証している」と、安全性の立証について自信を持っている様子だった。

 JALが無線LANサービスを導入するには、国土交通省への認可申請が必要となるが、現時点ではこうした申請は行われていないようだ。しかし、同社がCBBの試験資料をそろえてサービス導入を申し込めば、同省がこれを認める可能性は十分にありそうだ。機内での携帯電話の利用はNG。しかし離着陸時を除けば、PCなどから無線LANでブロードバンドネットワークが使えるようになる日は案外近いかもしれない。

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