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あなたに必要なのは「専用機化するPC」か、「PC化する専用機」か(2/2 ページ)

» 2004年03月15日 11時17分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 そんな中、最近CMで見たエプソンの複合プリンタ「PM-A850」は、印刷シロウトの筆者からみればすごいものだと思う。なにせPCを使わなくても、単体でフィルムのスキャンから印刷までやってくれるのだ。

 もちろん本体だけでは、補正なども含めた最終的な品質に限界もあることだろう。だが筆者はそれを知っても、高価なフィルムスキャナと高品位プリンタを買ってきたほうがいいとは思わない。それらを前にして2時間も格闘するぐらいなら、簡単で間違いなくできるほうが、筆者にとってメリットがあると思うからである。

PC要らずの複合機エプソン「PM-A850」

 だが多くの人は、誘蛾灯に引き寄せられる蛾のように、不思議と面倒くさいほうを選択しがちだ。もともとPC本体を持っている人には、ソフトを買ってくれば安いとか、周辺機器を買ってくれば安いとかいった、イージーさだけが強調されて伝わってくる。それらの導入に関する人為的なリスクまで、事前に理解されているわけではない。

PCと専用機の境界線

 PC以外のデジタル機器も、最近はネットワークとつながる・つながらないを別として、ソフトウェアのアップデートが可能になっている。例えばデジタルレコーダは、CPUやGPU、チップセットを持ち、Linuxが走り、ネットワークにつながる。デジカメはメモリーカードを経由して、ファームウェアをアップデートすることができる。

 ソフトウェアで制御され、その更新によって機能が変化するのは、PC的要素ではある。だがこれらデジタル機器をPCと呼ぶことはない。PCと専用機の線引きは、ユーザーに対してどれぐらいの汎用性を保証するかという点に集約される。

 元々ビジネス分野に強いDELLやIBMのようなメーカーは別として、いわゆるAVパソコンと呼ばれるようなものを作っているメーカーのPCは、次第に機能も形も元々の意味の「PC」とは離れ始めている。既に一部のメーカーでは、Windows Updateやサービスパックに対してすら否定的になっているという現状もある。これを延長していけば、その先にあるのは「スーパー複合機」的世界だ。

 AVパソコンが便利だと感じる多くのユーザーにとって、AVパソコンがいつのまにかPCではなくなっても、大した問題ではないだろう。もしこれに抵抗があるとするならば、「それ以上進化しないのではないか」という点だ。

 だがよく考えてみて欲しい。PCだって、どうせ1年も経てば立派な旧機種だ。ソフトウェアを更新して、問題を引きずりながらズルズル使うよりも、満足した段階で進化を止めてしまったほうが、道具としては使いやすいという考え方もある。

 もちろんこれでは、常に新しいものに触れるという、PC独自の喜びが失われるだろう。だがそう言う人は、従来通りのPCを買えばいい。

 必要なのはPCか、“スーパー複合機”か。ユーザーの選択は、同時に日本のPCメーカーの選択でもある。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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