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「ガリレオ」+「Bフレッツ」=“レンタルビデオ感覚”

» 2004年03月23日 21時56分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 NTTソルマーレ、シャープ、NTT西日本の3社は、3月10日に開始した映画配信サービス「Galileo版シネマフービオ」の説明会を実施した。「Bフレッツ」などNTT西日本のブロードバンド回線を使い、シャープのホームサーバ「ガリレオ」に映画などをダウンロード。「リビングルームの大画面テレビで、見たいときに楽しめる“レンタルビデオ感覚”の配信サービスだ」(NTTソルマーレ、マーケティング本部の田中健吾シニアプロデューサー)。

photo シャープのホームサーバ「ガリレオ」とリビングルームの大画面テレビを使って映画などを楽しめる

 コンテンツは、シネマクルーズの「シネマフービオ」で提供中のUniversal Studios作品で、当初は「8Mile」や「恋におちたシェイクスピア」など49作品をラインアップ。料金は1作品あたり300−500円程度で、ダウンロード後72時間以内であれば何度でも視聴可能だ。

 ダウンロード型のため、ストリーミングのように回線状況に再生品質を左右されないうえ、視聴後は自動的にファイルが削除されるため、レンタルビデオのように返却に行く手間もない。「ゆくゆくはコンテンツ提供者を200社程度に拡大し、教育、あるいはアニメなどコンテンツの幅を広げていきたい」(田中氏)。

photo サービス概要。NTTソルマーレの映画コンテンツ配信システム「シネマフービオ」を通じて配信する

画質は「S-VHS相当」

 サービスを利用できるのは、NTT西日本の「Bフレッツ」もしくは「フレッツ・ADSL」に加入し、2代目ガリレオ「HG-02S」を所有しているユーザー。ガリレオやフレッツシリーズの導入コスト以外、初期費用はかからない。

 ガリレオには、「ネット de ビデオ」がプリインストールされており、設定変更により起動できるようになる。起動するとダウンロードした映画などを保存するために20GバイトのHDD領域を自動的に確保。コンテンツはMPEG-2の4Mbps固定ビットレートのため、映画1本を2時間と仮定すれば、4-5本は保存できる計算だ。画質は、「S-VHS相当」(NTT西日本)。

photo 「ネット de ビデオ」の画面。おすすめタイトルも

 「ネット de ビデオ」の画面(サービスポータル)には、映画などのコンテンツがジャンル別に整理されている。リモコン操作で映画を選択、課金が終了したらダウンロード開始だ。ガリレオは、無線ルータを内蔵し、またPPPoEマルチセッション機能を備えているため、パソコンなど他の端末がインターネットを利用していても問題ない。

photo コンテンツはジャンル別に整理されている
photo 購入前に映画などの詳細情報をみることができる
photo 決済手段はクレジットカード。一度カード番号などを登録すれば、あとは設定する必要はない。利用の都度、違うカードに切り替えて利用することもできる

 なお、ダウンロード中でも再生を開始することはできるが、フレッツADSLなどの環境でダウンロード速度よりも再生速度のほうが早い場合は、途中で再生が止まってしまう。もちろん、そのときはダウンロードが終了してから再度視聴を開始すればいい。

 注意したいのは、ダウンロードしたコンテンツは、48時間以内に「開封」処理を行う必要があるということ。これは「コンテンツ・プロバイダーの要望によって設けられたもの」(NTT西日本)。というのも、72時間の視聴期限を過ぎるとコンテンツをHDDから自動消去するため、視聴期限ぎりぎりに再生を開始した場合、途中で再生が止まってしまう可能性があるからだ。開封するとユーザーがダウンロードの完了を確認したことになり、その時点から最低でも24時間あれば、視聴時間としては十分という判断だろう。

 しかし、開封しないまま48時間が経過した場合、また開封しても視聴しないままでいると、ダウンロードから72時間後にはコンテンツがHDDから消去されてしまう。もちろん返金などはないため、注意が必要だ。

photo 開封までの時間も72時間の視聴期限に含まれる。48時間を過ぎても開封しない場合、視聴できなくなる点に注意
photo 開封時の画面
photo ダウンロード済みコンテンツの一覧
photo 再生時には、ガリレオでTV番組を録画した場合と同様、4段階の早送りや巻き戻しが行える

著作権保護とユーザビリティのジレンマ

 今回のサービスでは、著作権保護技術にシュタルクの「DOBS」(ドゥービス)を採用した。ダウンロードしたコンテンツはHDD内で暗号化され、仮にHDDを取り出しても不正コピーは不可能。ガリレオの持つPCなどへの配信機能でも利用できない。さらに、再生時のアナログ出力にはマクロビジョン信号を付加し、アナログ録画機へのダビングも防いでいる。

 視聴期限や開封期限の設定もDOBSの機能だ。「DOBSはハリウッドも認めた著作権保護技術だ。コンテンツの利用期間や期限、利用回数など目的に応じたさまざまな利用制限が設定できる柔軟さが特徴」(NTTソルマーレ)。

 ただ、その柔軟さが、多分に“制限”の方向に利用されている点は気になるところ。不正コピー対策を施すのは当然だが、72時間という使用期限、48時間の開封期限などを考えると、1本300ー500円の料金が適当かどうか意見が分かれることだろう。より画質の良いDVDが、同等の値段で1週間レンタルできるため、リビングルームで完結できる“手軽さ”以外のメリットは見つけにくい。

 もちろん、こうした点はサービス事業者が一番理解し、またジレンマとして抱えている部分だ。NTTソルマーレの田中氏は「今のところ、期限や価格はすべてコンテンツホルダー側の意向そのままだ。今後、交渉力をつけて視聴期間の延長や値下げに取り組んでいきたい」としている。「まずは視聴期間の延長を優先するつもりだ」。

販売側は大歓迎?

 いくつかの課題を抱えながらも、ブロードバンドとネット家電を利用した本格的なVoDサービスの開始は注目を集めているようだ。サービス開始からまだ2週間ということもあり、NTTソルマーレ側は契約件数やダウンロード数などの詳細を明らかにはしていないが、NTT西日本によると、「とくにBフレッツを販売する側の注目度が高い」(NTT西日本、BBアプリケーションサービス部新ビジネス部の白波瀬章担当課長)という。

 NTT西日本の各支店をはじめ、家電量販店、Bフレッツの販売代理店などからの問い合わせが多く、手応えを感じているという白波瀬氏。販売店が、今回のサービスをBフレッツなどの訴求材料として高く評価していることがうかがえる。

 なお、同社では3月下旬から、家電量販店などに同サービスの体験コーナーを設置するほか、来年度早々にもBフレッツとガリレオのセット販売(価格は未定)を開始する予定だ。

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