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» 2004年03月31日 23時16分 公開

決め手はゼリー状シート? 2層BD-ROに込められたアイデア連載:次世代DVDへの助走(1/2 ページ)

歩留まりが悪く、製造ライン設備も高コスト、2層はさらに難しいといわれたBlu-ray Discの読み込み専用メディア(BD-RO)。果たして懸念は払拭できたのか? そもそもBD-ROの懸念材料として挙げられていた事柄は、どのような根拠から来ていたものなのか?

[本田雅一,ITmedia]

 歩留まりが悪く、製造ライン設備も高コスト、2層はさらに難しいといわれたBlu-ray Discの読み込み専用メディア(BD-RO)。果たして懸念は払拭できたのか? そもそもBD-ROの懸念材料として挙げられていた事柄は、どのような根拠から来ていたものなのか? 

 ソニーは先週、静岡にあるソニー・ディスクテクノロジーでBD-ROの量産テストラインを公開した(3月24日の記事を参照)。取材時のソニーの解説や、HD DVD側が示していたBD-ROに対する疑問の根拠を挙げながら、BD-RO生産ラインの話題を掘り下げてみたい。

DVD-ROM製造の仕組みとBD-RO製造面での課題

 読み込み専用光ディスクの製造は、ポリカーボネートのディスク基盤に凹凸を作り、そこに反射層を生成(スパッタリング)。反射層を保護すれば完成する。これはCDもDVDも同じだ。

 DVDの場合、射出成形装置にディスク面の凹凸を作る“スタンパ”を取り付け、ポリカーボネートを流し込んで0.6ミリ厚のディスク基盤を作る。接着剤を付け、別の射出成型機で作った0.6ミリ厚ディスク基盤を貼り付ければ出来上がりとなる。

 2層ディスクの製造も基本的には同じだ。0.6ミリ厚ディスク基盤を2台の射出成型装置で作り、その際それぞれに異なるスタンパで異なる凹凸を作る。それぞれに異なる反射・透過特性を持つ記録層となるため、2台の異なる特性を持つスパッタリング装置で記録層を作った後、接着剤で2つのディスクを貼り合わせる。DVDは1.2ミリディスクをちょうど半分にスライスした形のため、2層ディスクは比較的簡単に仕上げることができるわけだ。

 これは同じ0.6ミリ保護層のHD DVDでも基本的に同じ。HD DVDの製造コストが安くなるといわれる理由は、DVD製造のノウハウや機材の大部分を利用できるから、といえるだろう。

 これに対して0.1ミリの保護層となるBDには、以下のような問題が指摘されていた。

  • 0.1ミリ保護層の光学品質

 0.1ミリ保護層を生成する方法は2つある。ひとつは0.1ミリ(2層ディスクの場合は0.075ミリ)のフィルムを貼り付ける方法。もう1つは紫外線硬化樹脂をディスク中心に載せ、ディスクをスピナーで高速回転させて遠心力で均等に広げて紫外線で固める方法だ。

 後者の手法は、ディスクに接着剤を均等に付着させる時にも使われるが、保護層の厚みを完全に制御することが難しい。他方、フィルムを貼り付ける方法はシンプルだが、高分子フィルムに付きものの複屈折の問題が出てくる。

 複屈折とは物質の内部で光が異なる角度に屈折し、2つ以上に分かれてしまう現象。薄い高分子フィルムを製造する場合、引っ張り伸ばす処理が行われるが、このときに鎖のように繋がった高分子が一方向に伸び、各高分子の方向が揃ってしまうことで発生してしまう。これにより、複屈折性が強くなりフィルムは偏光特性を持つようになる。この問題をどのように抑え込むかが、BD-RO製造におけるひとつの鍵となるといわれている。

  • 2層化の難しさ

 BDでは、2つのディスク基盤を貼り合わせるわけにはいかない。またフィルムに直接スタンパで凹凸を付け、貼り合わせるのも非常に難しいという。そこで、1.1ミリのディスク基盤に2つの記録層を作ってから保護層を作る必要がある。ところが、ひとつのディスク基盤に2つの記録層を重ねるのは意外に難しい。

 HD DVDやBDなど青紫レーザーを用いず、現行DVDの大容量化する手法として、3層もしくは4層のDVD規格が研究されているが、3層以上のDVDでは以下のような手法で多層化を行う。

 まずディスク基盤に1層をスタンプ、スパッタリングしたあと、UV硬化樹脂をスピナーで均一に広げてからスタンパに当て、ディスクの反対側から紫外線を当てて樹脂を固め、もう1つの記録層をスパッタリングする。2枚のディスク基盤両方に同じ処理を行って貼り合わせると、4層ディスクが出来上がる。

 ただし、通常のスタンパ(ニッケル製)を当てて紫外線でUV硬化樹脂を固めると、スタンパからディスクがきれいに剥がれない。そこで、ニッケルでスタンパと逆の凹凸を持つマスタースタンパを作っておき、射出成型装置とマスタースタンパでアクリル製スタンパを製造。これを用いて2層目に凹凸を作る。ニッケルスタンパよりも剥がしやすくなるが、アクリルスタンパは使い捨てになるため、1枚ごとに射出成形装置でスタンパを作り続ける必要がある。ここでコストがかかるわけだ。

 BD-ROの2層目を作る際、フィルム側に凹凸を刻めないなら、これと同じ手法を用いなければならず、コスト高になってしまうというのがHD DVD陣営の主張だ。

鍵を握るのはゼリー状シート

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