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大学はコンテンツ人材を育成できるか?(2/2 ページ)

» 2004年04月12日 13時11分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 濱野氏はプロデューサー育成の他にも「こうしたプログラムを指導できる人、映像技術などを独自に開発できる技術者も育成する」と話し、産学連携・学部横断で行われるプロジェクトを最大限に活用したいとその抱負を語った。

 また、単一能力の育成のみではなく、複合的な能力を持つ人材を育成する方針。実際のカリキュラムでは「一線の制作現場で活躍している人を積極的に呼びたい」とし、できる限り実務経験に近い形で教育を進めていくという。

 今回のプロジェクトは、基本的には学部卒の修士を対象としたものだが、学科を設立するという構想も進んでおり、「今後2〜4年で学科にしたい」という。その際の名称については、「大学からはカタカナの名前を付けないでくれと言われていて(笑)、検討中」とのことだ。

これからのデジタル産業にはプロデューサーが必要

 設立10年を迎えるデジタルハリウッドはこれまでにも多くのクリエーターを輩出している。その学校長を務め、今回、デジタルハリウッド大学院学長も務める杉山知之氏は、大学院設立の狙いを「これからのデジタル産業には“プロデューサー”が必要だから」と語る。

photo デジタルハリウッド大学院の学長を務める杉山知之氏

 Webコンテンツやスタートした地上デジタル放送など、メディアは多様化しており、クリエーターもずいぶん増えてきた。しかし、そうしたクリエーターやメディアへの展開をまとめる、プロデューサーが足りない。杉山氏は現状をそう分析する。

 そのプロデューサーを育成しようというのが、2004年4月に開講したばかりのデジタルハリウッド大学院だ。杉山氏は今後、一つのネタを映画やTV、ゲーム、Web、モバイルなど様々なプラットフォームで生かす「ワンソースマルチユース」の環境が一般的になると述べ、そうした環境下では、「これまで縦割り型で育ってきたコンテンツやメディアを横断的にまとめる人が必要になるのではないか」とプロデューサーの必要性を述べる。

 杉山氏が大学院のコンセプトの一つとして挙げた「IT業界とコンテンツ業界の文化の壁を乗り越えられる人材」も、横断的に物事をまとめる能力を持つ人(=プロデューサー)の育成を第一としていることを示している。

 カリキュラムも濱野氏の進めるプログラムと同じく「実践的なもの」にしていくとし、クライアントを仮に設定し、企画を提案させたり、その企画が通った場合の予算管理シミュレーションを行わせたりするなど、よりデジタルコンテンツをビジネスとして「仕掛ける」訓練を行っていくという。

 これまでデジタルコンテンツに関する人材育成というと、実際のコンテンツ制作者向けの教育ばかりが主流だった。しかし、デジタルコンテンツ自体の領域が大きく拡がっている現在、「コンテンツをいかに生かすか」ということも必要不可欠になっている。両者のアプローチはその部分を担おうとする点で共通している。

 だが、大学でそうした人材の育成は本当にできるものなのだろうか? この“疑問”への“答え”は、両氏のプロジェクトの進展とともに、そう遠くないうちに出るだろう。それが日本のデジタルコンテンツビジネスの行く末を左右することは、言うまでもない。

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