「iPod」の大ヒットにより、ポータブルオーディオプレーヤーの主役は、ハードディスク内蔵型に移った。標準的なのは1.8インチHDDを内蔵したタイプだが、発売中の「MuVo2」や7月発売予定の「iPod mini」などの1インチHDD採用製品も今後伸びてくるに違いない。
一般的なユーザーにおいては、なるべくコンパクトなほうがよく、容量は4Gバイトもあれば十分という意識もあるだろう。それでも、数十Gバイトの容量を持つ1.8インチHDDタイプは、手持ちの音楽(MP3ファイル)をすべて入れておきたい、なるべく高ビットレート(低圧縮)でデータを扱いたいというユーザーにとって、これからも最適な選択肢となるだろう。
バーテックスリンクから4月23日に発売された「iAUDIO M3」(韓国COWON SYSTEMS製)も1.8インチHDDを採用した製品である。14.2ミリという薄型ボディながら20Gバイトの容量を利用できる。
PCとの接続はUSB2.0で、ストレージクラスで扱う。音楽ファイルはMP3/WMA/OGG Vorbis/ASF/WAV形式に対応し、PC上で保管しているディレクトリをそのままコピーすればよい。特殊なファイル変換工程やデータベース情報構築などは行われず、プレーヤー側でもファイルのディレクトリ構造をそのまま利用してファイル管理する。
このタイプの製品では、膨大な曲を入れておけるだけに、目的のファイルにどれだけ容易にたどりつけるか、というインタフェースの出来が最重要課題となる。プレーヤーの操作とは、ボタン類の配置といったハードウェア面、そして、ソフトウェア面の双方で成り立つものだ。そのため、多くの製品では本体に大型液晶ディスプレイを搭載し、メニュー表示を見ながらジョグダイアルやスティック、パッドなどでファイル操作が可能になっている。また、操作性をさらに柔軟にするため、リモコンを用意したり、さらにはリモコン側にも液晶ディスプレイを搭載した製品もある。
これに対して、iAUDIO M3では個性的なアプローチを行っている。本体には表示部がなく、リモコン上の液晶ディスプレイを見ながら、操作を行う。その分、本体はかなりコンパクト、といいたいところだが、iPodと比較してもサイズはほぼ同じ、1.5ミリ薄い程度にとどまっている。
しかし、アルミで覆われた本体の質感はよく、また表示部がない分、デザインもシンプルで全体に高級感が溢れている。少し厚めの名刺ケースのような趣だ。リモコン側だけでなく、本体にもいちおう操作ボタン類は配置されているのだが、これらの形状、配置もなかなか美しくまとめられている。
本体に表示部がないというのは変則的にも思えるが、実際の使用においては逆に正しい選択ともいえる。一般的なCDプレーヤーやMDプレーヤーとは異なり、膨大な数の曲を収録できる大容量デジタルプレーヤーの場合は、再生や早送り/早戻しボタンだけのリモコンではあまり役に立たない。メディアを交換する必要がない代わりに、メニュー操作で目的のアルバムを探し出せばよいのだが、その際、リモコンに表示部がないと、本体をいちいちバッグなどから取り出さなければならないからだ。
液晶画面は128×96ピクセルで、再生中に表示してくれる情報はかなり豊富。バッテリー残量や再生状態といったステータス、アーティスト名、アルバム名、曲名(ID3V2/V1タグ認識可)、曲の全体時間/再生時間のほか、ビットレート、サンプリングレート、5バンドイコライザの状態まで表示する。それほど大きな画面ではないのに(もちろん、リモコン上の液晶画面としては大きな部類に入る)、巧妙なレイアウトで多くの情報をうまく収めている。曲情報は日本語表示が可能だが、残念ながらメニューは英語のまま。とはいえ、全体にイラストやアニメーションが多用されていて、眺めているとなかなか楽しい。
ただし、かんじんの操作性はやや難がある。画面表示はともかく、メニューの呼び出し方やカーソルの移動といった基本的な操作が直感的でないのだ。
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