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あらゆる輸入音楽CDに規制を?――危険な著作権法改正が進行中輸入音楽CDは買えなくなるのか?(3/4 ページ)

» 2004年05月12日 17時57分 公開
[渡邊宏, 中川純一,ITmedia]

 第二は、例え国内盤が存在しなくても、欧米のレーベルが「輸入権」を盾にとって「日本への輸出禁止」をうたうことが可能になることだ。基本的には国内盤が存在しないCDの輸入は可能とされるが、いつ禁止されるか分からないもの――特に売上が期待されるメジャーアーティストなど作品は、輸入CDディストリビューターも怖くて手が出せなくなるだろう。もしレコード会社から警告状のようなものが届けば、ディストリビューターはそのCDを破棄せざるえないからだ。

 シンポジウムに参加した音楽評論家の藤川毅氏は、もしこの改正法案が施行された場合、価格面・内容面の双方から「輸入CDを購入する」という選択肢がなくなるほか、輸入盤ディストリビューターがリスク回避の面から慎重になり、「輸入可の輸入盤までが市場から減る可能性がある」と指摘する。

photo 藤川氏が示した4つの危険性

 著作権法違反は両罰規定があり、民事・刑事双方で訴追される可能がある(刑事罰は3年以下の懲役もしくは最大で300万円以下の罰金)。CDの輸入販売はいきなり“危ない商売”になり、事業から撤退する事業者も出てくるだろう。

 日本のユーザーが輸入盤CDを購入する最後の手段として考えられるのは、個人輸入だが、実はそれさえ覚束ない。今回の改正で対象になっているのは、販売に関する規制で、個人輸入はその対象外だが、欧米レーベルが日本への輸出禁止を強力に打ち出した場合、洋楽CDの販売サイトなどが日本への輸出を“自粛”してしまう可能性もある。例えそうでなくても、税関の段階で“押さえられて”しまうかもしれない。業者の並行輸入と個人の輸入を厳密に見分けることは困難だからだ。

洋楽文化の危機を招きかねない

 ビルボード誌アジア支局長のスティーブ・マックルーア氏は、今回の法改正について、日本の音楽文化に与える悪影響を懸念する。

 「80〜90年代の輸入盤ブーム以前、国内には輸入CD自体があまり多くなかったことを覚えていますか? 80〜90年代に『HMV』や『Virgin』といった輸入CDを多く扱うショップが増え、それが洋楽シーンと日本の音楽シーンに大きな影響を与えました」(マックルーア氏)

 邦楽CDが約1億7000万枚に対して、洋楽CDは1億3000万枚までになり、洋楽市場・洋楽文化ともいえるものに成長した。だが、メジャー系以外の輸入CD事業が成立しがたくなることで、多種多様な音楽が日本に入ってくる可能性が減ずるし、ユーザーの選択肢もなくなる。

 “6000万枚の輸入CD”が洋楽の国内盤に移り、レコード会社に利益をもたらすのか、あるいは洋楽文化あるいは音楽文化そのものの衰退につながるのか。ただでさえ、最近は不振といわれる洋楽をさらに低迷させる可能性のほうが強いのではないだろうか。

 また、マックルーア氏が、日本以外の音楽シーンも広く見てきたジャーナリストの感想として指摘したのが、輸入権と再販制度(再販売価格維持制度)の共存という特異性だ。

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