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VAIOに何が起こったか――VAIO Pocket篇(2/3 ページ)

» 2004年06月07日 10時44分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 もちろんVAIO部隊だってバカじゃない。ATRAC3はVAIOでしか採用されておらず、PCの世界ではマイナーなフォーマットであることぐらい十分承知しているはずである。むろん採用した背景には、ソニー全体として「音楽やるならATRAC3」という逆らい難い暗黙のルールの存在もあったろう。

ソニー初のHDDミュージックプレーヤー、VAIO Pocket

 だが逆にコンシューマーへの普及ということを考えると、ATRAC3というフォーマットは、ノンPCユーザーにはMP3よりも普及していると言える。よく考えてみて欲しい。MP3プレーヤーに曲を流し込むのに、CDプレーヤーから直で録音しているヤツがいるだろうか? MP3は基本的に、PCありきの世界なのである。

 だがATRAC3の録音は、CD/MDラジカセやミニコンポで行うのが主流だ。ノンPCの音楽ダウンロードサービスとしてはAnyMusicがあるわけだが、このフォーマットもATRAC3だ。VAIO PocketがATRAC3を選択した理由は、従来のようにひたすら追従したのとは若干違うような気がする。

MP3ユーザーには辛い

 とはいうものの、現時点でのVAIO PocketにはPCが必須である。著作権保護技術が搭載されるのはまあしょうがないとしても、MP3のダイレクト再生に対応しなかった点は、やはりデメリットとして映る(VAIO Pocketのレビュー参照)。

 初めて音楽リッピングしたのがVAIOのSonicStageだと言う人はそのまま右から左だと思うが、ほとんどのPCユーザーはそうじゃない。いくらVAIO PocketにSonicStageが付いてくるとはいっても、また最初からリッピングは、どう考えてもめんどくさいものだ。

 また悪いことに、新SonicStage2.0を使ったATRAC3 Plusへのリッピングは、以前のバージョンよりもかなり時間がかかるようになった。おそらく音質改善のために、エンコーダやエラー訂正などに手を入れているのではないかと思われる。

 実際にMP3で大量に音楽を持っているユーザーがVAIO Pocketを使うとするならば、付属のSonicStageやMusic Moveといったソフトウェアを使ってATRAC3 Plusに再エンコードしながら転送するということになる。この方法の懸念は、転送時間が大幅に増えるという点と、音質的に大丈夫かという2点だろう。

 転送時間がどれぐらい違うものか、計測してみた。アルバム1枚分(51分38秒)のMP3を、VAIO type A「VGN-A60B」(Pentium M 1.50GHz)でATRAC3 Plus 256kbpsに変換しながら転送したところ、9分45秒かかった。同じアルバムを最初からATRAC3 Plus 256kbpsでリッピングしておき、それを転送した時間は、1分07秒であった。転送だけならざっくり10倍弱の差があるということである。

 もちろん後者にはリッピングに要した時間が含まれていない。そこまで足すと、おそらく後者のほうが時間がかかるだろう。時間のことだけを考えれば、既存PCユーザーには手間がかかる。

 次にMP3からの再エンコードによる音質の変化をチェックしてみた。

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