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“ユーザーの生の声”を活用できる「メーカー直販」――エプソンPTV販売戦略(1/2 ページ)

» 2004年06月08日 19時29分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 セイコーエプソンが先日発表した大画面プロジェクションテレビ(PTV)「LIVINGSTATION(リビングステーション)」。1インチ1万円を切る低価格とともに、同社100%子会社でPC直販を行うエプソンダイレクトを通じて発売するという“メーカー直販スタイル”が話題となっている。

 同社のPTV事業展開やLIVINGSTATIONの販売戦略について、同社映像機器事業部PTV事業推進部部長の有賀修一氏に話を聞いた。

photo 同社映像機器事業部PTV事業推進部部長の有賀修一氏

時代のニーズにあった“低消費電力の大画面テレビ”

 プラズマテレビは消費電力が50インチで400ワット前後と小型ヒーター並みになるが、LIVINGSTATIONはTV視聴時の消費電力が約180ワットと、プラズマテレビの半分以下で液晶TV(37V型)と同等の低消費電力設計になっている。

 先日行われたパイオニアのプラズマテレビ発表会で、同社が大画面テレビに関して調査したユーザーアンケートが紹介された。興味深かったのは、そのアンケートでユーザーが大画面テレビに求めるものの第1位に「省電力・省エネ設計」が挙がっていた点だ。販売店の店頭でも、テレビの消費電力をリストにして表示するケースが増えてきた。

 「信州(セイコーエプソン本社/工場は長野県)は冬が寒いため、電気コタツや電気ストーブなどをいつも使っていて、電子レンジのスイッチを入れるととたんにブレーカーが落ちてしまうということも多く、家電製品の消費電力への関心は非常に高い。東京など都心でも夏はエアコンが欠かせない。今年は真夏のオリンピック放送を観るために、消費電力の大きなプラズマテレビとエアコン/電子レンジなどを同時利用して、ブレーカーが落ちる家が続出するのでは(笑)。夏場の消費電力削減にもPTVは貢献できる」(有賀氏)

 また、表示デバイスに光を当てて画面の裏から映像を投射するPTVは、デバイス直視型のプラズマ/液晶テレビに比べて大画面になればなるほど低コストで製造できるのが魅力。今年1月のCESでIntelがPTV向けデバイスを発表したが、そこでIntelがアピールしていた「50インチで20万円以下」という普及価格が、近い将来にも現実的に可能な点がPTVの最大の特徴といわれてきた。

 LIVINGSTATIONの価格は、57V型が56万円で47V型が46万円。薄型大画面テレビ本格普及のターニングポイントといわれてきた“1インチ1万円”をあっさりとクリアするなどPTVのコストメリットは十分発揮されているものの、国内販売価格は北米価格(57V型が3999ドル、47V型3499ドル)よりもやや高めに設定された。これは、メーカー直販スタイルを採用するにあたり、配送/設置/配線/梱包箱処理といったサービス分のコストが上乗せされたためだ。

“ユーザーの生の声”を生かせる「メーカー直販」

 プリンタやフロントプロジェクターなど従来製品のようにエプソン販売を通じてではなく、エプソンダイレクト経由の直販に限定した理由について有賀氏は「テレビでは後発メーカーということで、オリンピック効果などでプラズマ/液晶需要に沸く販売店が、PTVを積極的に扱ってくれるかという懸念ももちろんあったが、常に先進の技術を積極的に採用して“エプソンらしさ”を製品に盛り込んできた我々が、販売手法でもエプソンらしさを出したかったというのが大きい」と語る。

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