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コピーワンス放送はユーザーに受け入れられつつある――ビーエス・アイ

» 2004年06月17日 19時58分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 デジタル放送のコピーワンスはユーザーに受け入れられつつある――。サイバーリンク主催で行われたデジタル放送のコピー制御方式に関する説明会の中で、ビーエス・アイ(BS-i)の仲尾雅至氏はそう述べ、4月から開始されたコピーワンス放送が一定の理解を得られているとの見解を示した。

photo ビーエス・アイ 編成本部 広報宣伝部長の仲尾雅至氏

 BSデジタル放送と地上デジタル放送でのコピーワンス放送が4月5日から開始され、デジタルレコーダーでは録音機とメディアの双方が対応していなければ録画できないようになった。各社機器の対応状況は、こちらの記事(コピーワンス放送本格化、各社レコーダーの対応度)のようなものだが、現状を放送事業者はどう捉えているのだろうか。

 その点に関し、ビーエス・アイ 編成本部 広報宣伝部長の仲尾雅至氏は「導入初日には5000件以上の問い合わせがあった。だが、現在は落ち着いている」と説明、また、5000件といっても、その問い合わせのほとんどは“番組が見られなくなった”(コピーワンス放送は受信機にB-CASカードを挿入していないと視聴できない)というもので、コピーワンス自体に関する疑問や質問はあまりなかったという。

 ただ同氏によれば、コピーワンス放送を録画できるメディアが現在、DVD-RW(VRモードのみ)とDVD-RAMに限られているため、“なぜ安価なDVD-Rが使えないのか”という問い合わせはあったそうだ。

著作権保護は技術的な処理がベター

 実はデジタル放送のコピーワンス処理については、絶対やらなければならないというものではなく、その処理を行うかどうかは放送各局の判断に任されている。旧来通りの放送を行うことも可能だ。ただ、その場合、不正コピーを始めとした著作権侵害に対処することはできない。そうした判断のもと、ビーエス・アイでは全放送をコピーワンスで送信している。

 「デジタル放送のコンテンツは劣化しないコピーが可能なので、個人で録画した番組をオークションで販売するなど、不正な流通が容易に行えてしまう。著作権侵害として告訴するという(法的な)対処法もあるが、技術的な方法で防止する方が良いのではないかと思う」。仲尾氏はそう説明、侵害行為が行われてから対処するのではなく、あらかじめ技術的に抑止する仕組みを採用するほうが、よりベターな対処法だとの認識を示した。

 ただ、別記事で示したように、メーカーによってコピーワンスへの対応状況にバラツキがあるのが実情。最新の民生用レコーダーならばほぼ対応済みというが、既存製品にはHDDへ録画できないものや、HDDに録画した番組をDVDへ移動できないものもある。それに、PCのテレビ機能は一部のデジタルチューナー内蔵機種を除いて、ほぼコピーワンス放送の録画が不可能だ。

 コンテンツに何らかの著作権保護の仕組みが必要であり、コピーワンスがその一つの回答であることは理解できるが、現時点では周辺機器のコピーワンスへの対応が完了している状態とは言い難い。ユーザーがコピーワンス放送の制約を知らずに機器を導入してしまうケースも想定される。

 その点に関し、仲尾氏は「テレビはテレビ、気軽に楽しめることを忘れないように進めていきたい」「録画する楽しみは確保していきたい」と述べ、ユーザーの利便性と著作権保護を両立できるよう努力していくと、同社の方針を説明した。

 とはいえ、2011年にはアナログ地上波の停止が決定しており、放送のデジタル化は今後加速する一方だろう。放送事業者はコピーワンスについて、一層の告知努力が求められることは間違いないだろう。

photo 仲尾氏が示したBS加入世帯数推移。5月末現在で508万世帯。2005年末には1000万世帯になると予想

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