先月6月25日に日本ビクターの米国法人JVCカンパニー・オブ・アメリカ(JCA)が“うれしい発表”を行った。
その製品はリアプロジェクションTV(リアプロTV、PTV)2機種で、61V型の「HD-61Z575」と52V型の「HD-52Z575」。もっとも、日本では馴染みの薄いリアプロTVも北米ではリビングTVの主流として確固たる地位を築き上げており、リアプロTV新製品など特に珍しくもない。
北米市場向け製品を、日本ビクターがあえて国内で発表したのには理由がある。リアプロTV新製品で採用された表示デバイスが、同社独自の「D-ILA(Direct-Drive Image Light Amplifier)」だったからだ。
次世代表示デバイス“D-ILA”を搭載したリアプロTVの可能性について、日本ビクターでD-ILA製品の開発を担当するILAセンター企画グループ長の柴田恭志氏に話を聞いた。
同じ画面サイズならプラズマよりも半分以下の価格で手に入るコストパフォーマンスの高さがリアプロTVの魅力。マイクロデバイスを使った近年のリアプロTVは、CRT管を使った以前の製品に比べて画質も大幅に向上しており、本体サイズも非常にコンパクトになってきている。
プロジェクター向けのマイクロデバイスは、LCD(HTPS)/DLP/LCOSの3方式が現在主流となっている。リアプロTV向けとして採用が進んでいるのがLCDとDLPだが、色再現性や階調表現、素子の寿命などで不満な点も少なくなかった(プロジェクター向けデバイスの違いは2003年11月の記事参照)。
LCDとDLPの“いいとこ取り”を目指したデバイスが、シリコン上に液晶パネルを形成した反射型液晶素子の「LCOS」。透過型のLCDに比べて光の損失量が少なく、自然な色再現性と継ぎ目のない滑らかな映像を可能にする。LCOSの派生モデルであるD-ILAは、これらLCOSのメリットをさらに強化したものだ。
「D-ILAは開口率が94%と高く、LCDと比べて圧倒的に光の利用率が優れている。また、画素ピッチや画素間のギャップが小さいため、画面上に画素がほとんど目立たない。配向膜に無機素材を使っているため、有機材料の配向膜を使うLCDなどと比べて寿命が長くなる。LCDは一般的に1万時間といわれているが、D-ILAでは10万時間以上とほとんど寿命を気にしないで済む」(柴田氏)
半導体プロセスで製造するため、高密度化がやりやすいのもD-ILAの特徴。LCDは配線部分で開口率に限界があるが、反射型のD-ILAはそのような制約が少ない。今回の新製品で使ったD-ILAは0.7インチサイズで720p(1280×720ピクセル)だが、技術的には0.7インチで1080pフルハイビジョン(1920×1080ピクセル)も十分可能だという。ちなみにLCD方式のセイコーエプソンのフルハイビジョン対応デバイスのサイズは1.3インチだ(2003年10月の記事参照)
「デバイスの高解像度化が容易ということは、720pでよければより小さいサイズのデバイスで済むことになりコストダウンにつながる。D-ILA(LCOS)はマイクロデバイスの中でも特にリアプロTV向けといえる。当社はデバイスだけでなく光学ユニットも自社で開発してコストダウンを図っている」(柴田氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR